

2016年10月から、従業員501人以上の企業で働くパート労働者は、次の要件を満
たせば、健康保険・厚生年金保険への加入が義務づけられました。
加入4要件
①週20時間以上の労働時間
②月額賃金8.8万円以上(年収106万以上)
③勤務期間1年以上
④学生でないこと
厚生労働省は、2019年9月までにさらなる適用拡大について検討し、必要な対策を実
施するとしています。
従業員500人以下の企業への取扱いが焦点となっています。

パート労働者を多く雇用する複数の業界団体は、厚生労働省に適用拡大に反対する意見書
を提出しました。
パート労働者自身も適用拡大を望まない傾向が強く、更なる要件緩和に強く反対していま
す。
2018年、日本フードサービス協会が会員企業を対象に行った実態調査では、社会保険
適用拡大により就業時間等の調整が進み、結果として約8割の企業で労働力不足が進行して
います。
パート労働者自身も適用拡大に反対している理由として次があげられています。
①手取り収入が減る ・・・ 約9割
②健康保険の扶養者から外れる ・・・ 約8割
③配偶者控除が受けられなくなる ・・・ 約5割
全国スーパーマーケット協会では、これ以上の適用拡大は困難で、受け入れがたいとして
います。また、日本惣菜協会も適用拡大による企業経営へのダメージを強く懸念しています
特に地方の中小事業者のコスト負担が増大して経営悪化するとともに、人手不足が深刻化
し業界発展の阻害要因ともなりかねないとの見方です。
就業時間等の調整の考え方が優先すると同時に複雑になり、「働きやすい環境整備」にも
逆行すると警鐘を鳴らしています。
実際に2016年10月からの適用拡大で、17年度事業者純利益の5%が社会保険料と
して増大し、中小事業者にとって純利益5%減少は軽視できないとしています。
パート労働者に、新たに健康保険・厚生年金保険の適用で一定の負担がかかると説明する
と、5人に3人は辞めていくと推測しています。
深刻な人手不足の状況にあって、経営自体の継続性にも支障が生じかねません。
人口減少が急速に進むなか、できる限り多くの労働者に社保適用をして保険料を負担して
いくことが必要なのかもしれませんが、経済事情を十分に考慮し、中小事業者にダメージを
与えないよう注意が必要です。
ちなみに月収8.8万円で保険料は約2.6万円。パート労働者の負担は1.3万円、企
業の負担は1.3万円となります。

(労働新聞4月8日3204号より)


一般労働者(短時間労働者を除く)の月額賃金は
男性337,600円(43.6歳・勤続13.7年)
女性247,500円(41.4歳・勤続 9.7年)です。
企業規模別にみた賃金(月額)

短時間労働者(時給)

(社会保険労務士・後藤田慶子)
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