
愛知県津島労働基準監督署は、令和3年7月8日、次の被疑者を労働基準法違反の疑いで名古
屋区検察庁に書類送検した。
【被害者】
栄屋食品株式会社と各事業場の責任者である店長3人

【被疑条文】
労働基準法第39条第7項(年次有給休暇)
同 120条第1項(罰則)
同 121条第1項(両罰規程)
【被疑内容】
平成31年4月から使用者に対して「年5日の年次有給休暇(以下、年休)の確実な取得
」が義務付けられた。
対象となるのは「年休が10日以上付与される労働者」で、労働者ごとに年休を付与した
日から1年以内に、5日は取得時季を指定して取得させなければならない。被疑者の病院や
社会福祉施設に入る3つの事業場において、義務化が始まって以降6名の労働者に1日も年
休を取得させていなかった疑いがあるもの。
今回は、労働者から取得できないとの相談が寄せられていた。少なくとも10人以上の規
模の事業場では、使用者からの時季指定による年休の取得調整が可能だったと判断し、送検
対象とした。
【参考事項】
厚労省は、年休は、働く人の心身のリフレッシュを図ることを目的として、原則労働者が
請求する時季に与えることとされている。
しかし、同僚への気兼ねや請求へのためらい等の理由から取得率が低調であり、取得促進
が課題となっている。
このため、労働基準法が改正され、年休所得が義務付けられたものである。今後も基本的
な労働条件の履行確保を積極的に推進するとともに、重大又は悪質な違反行為に対しては、
厳正な態度で臨むこととしている。
(労働基準監督官の権限)
① 行政機関として労働基準法違反を取り締まるために事業場を臨検し、帳簿や書類の提出
を求め、必要な尋問を行うこと
② 特別司法警察職員として労働基準法違反の罪について調査すること
調査を契機として、結果や行政指導に対する事業主の対応や状況から、重大・悪質であると判
断した場合には、捜査を行った上で検察庁に送検します。
送検後、検察庁においてさらに追加操作が行われ、悪質性等を考慮して起訴あるいは不起訴と
するかの最終的な判断をします。
不起訴処分の場合には実際に刑罰を科されることはありません。
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労働基準法第120条第1項(罰則)
30万以下の罰金に処する。
(労働者1人につき1罪として科せられることがあるとされています)
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※令和3年度最低賃金額改定の目安
中央最低賃金審議会で、今年度の地域別最低賃金改定の目安
について答申がまとめられ引上げの目安はA~Dランク全てに
おいて28円とされました。
ランク |
都道府県(抜粋) |
A |
東京、大阪 |
B |
滋賀、京都、兵庫 |
C |
奈良、和歌山 |
今後は、各地方最低賃金審議会でこの答申を参考にしつつ、
地域における賃金実態調査や参考人の意見等も踏まえた調査審
議の上答申を行い、各都道府県労働局長が地域別最低賃金を決
定することとなります。

社会保険労務士・後藤田慶子
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