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  労働基準法で、賃金の支払は通貨で直接、全額、労働者に支払うことを定めています。
  例外として、労働者の同意があれば・・・
   ① 銀行、金融機. 関の口座への振込
   ② 証券総合口座への振込
  を認めています。
  例外といえども現状は殆どの賃金は金融機関への振込となっています。
  厚生労働省は、11月に労働基準法施行規則を改正し、この①②に加え、キャッシュレス決済
 の普及や送金、サービスの多様化が進む中で、資金移動業者の口座への資金移動を給与受取に活
 用するニーズもみられることから、一定の要件を満たした場合には、労働者の資金移動業者の口
 座への給与支払いを可能とする予定です。

  2019年6月に閣議決定された「成長戦略フォローアップにおいて、2025年6月末まで
 にキャッシュレス決済比率を倍増し4割程度とすることを目指し、キャッシュレス化推進を図る
 ことになりました。
  2021年9月新設のデジタル庁が推進する取り組みの一つです。
 
 ☆ 給与デジタル払いとは・・・
   銀行口座を介さずに賃金移動業者のアカウントに給与を支払う形態をいいます。

 ☆ 賃金移動業者とは・・・
   銀行、金融機関以外の送金サービス登録業者のことで、現在約80の業者が登録されていま
  す。
   スマホ決済アプリの「〇〇Pay」や「〇〇払い」など、スマートフォン決済のサービスを
  提供する業者のことです。

 ★ 大臣の指定を受けるための資金移動業者の要件
  ① ロ座残高の上限額を100万円以下に設定していること、または100万円を越えた場合
   に速やかに100万円以下にするための措置を講じていること
  ② 破綻などにより口座残高の受取が困難となったときに、全額を弁済する保証の仕組みを持
   っていること
  ③ 不正な為替取引その他労働者の責めに帰すことができない理由により損失が生じたときに
   その損失を補償する仕組みを持っていること
  ④ 最後に口座残高が変動した日から10年間は口座を利用できる措置を講じていること
  ⑤ 資金移動が1円単位でできる措置を請じていること
  ⑥ ATMを利用等により、通貨で、1円単位で賃金の受取ができ、かつ、少なくとも毎月1
   回はATMの利用手数料等の負担なく賃金の受取ができる措置を講じていること等です

 ★ 給与デジタル払いのメリット
  ・ 労働者の利便性アップ
    キャッシュレス決済を利用している人は、資金移動が不要になります。
  ・ 振込手数料の負担がなくなる
    労働条件の多様化による、週払いや日払いなど振込がこまめに必要な場合でも対応できま
   す。
  ・ 労働者の確保に便利
    キャッシュレスになれている人、銀行口座を開くのが困難な外国人労働者の受入も容易に
   なります。
  ・ ATMの利用がなくなる
    混雑時のATMの利用を無くすことができ、通帳やカードの紛失や盗難の心配もありませ
   ん。

 ★ 給与デジタル払いのデメリット
  ・ セキュリティへの不安
    銀行振込と比較して、賃金移動業者に対するガイドラインがはっきり決まっていません。
  ・ 破綻した場合の不安
    銀行は、1,000万円まで補償されていますが、賃金移動業者は、そこまでの補償があ
   りません。
  ・ 支払がキャッシュレスに対応していない
    公共料金の支払い、家賃、お店によっては、キャッシュレス支払ができず、現金が必要な
   場合があります通信トラブルで支払ができない場合もあります。


 ※働く人の資金移動業者口座への賃金支払いを可能に。
 
  根拠条文 労働基準法第24条第1項
  施行期日 公布日 令和4年11月(予定)
       施行日 令和5年 4月 1日




 
社会保険労務士・後藤田慶子
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