ダルハディン湿地


ダルハディン湿地は、モンゴル北部にあるフブスグル湖の西側一帯に広がり、ロシア国境に近いところに位置する。「バイカル湖の近くだ」と言えば、通りは良いだろう(実際は、相当に離れているのだが......)

モンゴルの首都ウランバートルからダルハディン湿地までは、最も速い移動手段で2日間を要する。ウランバートルからムルンまでを国内線のプロペラ機で移動し、そこからは、チャーターしたロシアンジープで道なき道を突き進むことになる(その途中、水のあるところで一泊する)。今回の調査はモンゴル教育大学の学生実習も兼ねているため、参加している10数名の学生は、ウランバートルからチャーターしたトラックの荷台に揺られ、ムルンで私たちと合流ということになる。こちらは、もっと過酷である。

このように移動に時間を取られるので「今回の調査は7月14日から28日までの約2週間」といっても、実質的に調査できる期間は、たったの1週間である。しかも、雨が降り続けば、その間はテント暮しを余儀無くされることになる。実際問題として、ダルハディン湿地の、私たちが便宜的に第1調査地と称する場所に到着したその日の予備調査が、突然の雨に祟られて途中で撤退せざるを得ず、翌日にずれ込んでしまった(古参者に「雨で川が増水して対岸に戻れなくなる可能性がある」と脅かされれば、新参者の私としては、従わないわけには行かないだろう)。また、本調査初日の翌日も「諸々の事情(1)」で調査できず、まともにデータが採れたのは、たった4日間であった。

今回の課題は「短い調査期間で、いかに最大の成果をあげるか」ということであった。そのため事前の調査計画を入念に練り上げ、キタサンショウウオの個体数が確保できるかどうかも分からない状況で、どう転んでもデータになる調査手法を考案したのであった(皆さん「1週間程度の調査では、成果が何も期待できない」という思い込みがあるらしく、帰国してから、そのような質問をしてくる人が少なくないので、正直、困惑している)

本調査では毎日、40本ある倒木の物理的条件のデータを採ったのだが「初日の2ケ所目で、いきなり温湿度計の湿度計だけが壊れる(2)」などのアクシデントが発生している。しかし、それなりの手応えはあり、思わぬ成果というか、色々と面白いことが判明した。その中でも、特筆される成果は3つほどあるのだが「ここで公表してしまって良いものかどうか?」といった判断が、どうも私には付きかねる。従って、とりあえずの途中経過を知りたい人は、来年の1月にモンゴル教育大学でシンポジウムが予定されているので、それの報告書待ちということになるだろうね。

[脚注]
(1) これは、本調査に入って2日目(7月20日)の朝6時半に、プロジェクト代表の○○さん(金沢学院大学)から急に予定変更を告げられたものである。この「諸々の事情」というのは「(サンショウウオ班の)他のメンバーが疲れているので、今日は休みにして欲しい」とか「(メンバーの中に)『今日これから他の班が行く第3調査地を見てみたい』という人がいる」とか「今日(メンバーの)タイワンさんは炊事当番で、どっちみち調査に参加できない(タイワンさんの名前は、ローマ字書きで「Taivanjargal Batdorj」だが、キリル文字での表記法は分からない。また、モンゴル人は姓を持たない)」とかいったものを指す。その日は結局、私ひとりだけが第1調査地に入り、林床部にある40本の倒木全部の写真撮影をおこなったのだが、お昼過ぎからスコールのような激しい雨に降られて、びしょ濡れになり「今日は、調査を休んで正解だった」と思った次第である(おいおい、無理してないか? 本当は、調査したかったんだろう?)。その後、この土砂降りの雨は、翌日の明け方まで降り続いた。「2日間連続の休みだけは、勘弁してくれ」と、私が天に願ったことは、言うまでもない。ちなみに、本調査初日に6人いたサンショウウオ班のメンバーは、最終的に4人に落ち着いた。私以外は、全員モンゴル人である。
(2) 今回の調査では、温湿度計を倒木の下に突っ込んで、湿度のデータを採るつもりで準備していた。このことを業者には事前に言ってあるし「温湿度計を湿地帯で使う」ということも言ってある。だから私は当然「温湿度計が使えるものだ」と思って、現地に持っていっている。それが、いきなり壊れてしまうとは......。雨の影響かどうか知らないけど、S計量器製作所さん、しっかりしてよねえ。こんなんじゃ、野外で、安心して使えないよ!!


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