産卵場所

Habitat 1
Habitat 2

長野県北安曇郡白馬村北城の林床部内にある湿地帯に生息するハクバサンショウウオの産卵場所(比較のために、昨年の調査を参照のこと)。この場所の上方に位置する渓流は、ヒダサンショウウオの冬眠と、その後の繁殖に利用されている。

(A) 2つある枝分かれした流れのひとつで、その源流部は地下水の滲み出しによるものである(2005年4月30日撮影)

(B) この流れの下流域(2005年4月30日撮影)。サンショウウオの個体や卵嚢を探している2人は、懸川さん(左側)と齊川さん(右側)である。

2005年4月30日の調査時に、繁殖活動が終了してから1ケ月以上も経つヒダサンショウウオのメス2匹が、陸上の倒木の下で見つかった(土壌pH=4.0〜5.3)。2つの流れ(水温=8.0〜10.0℃、水のpH=5.9〜6.3)には、ハクバサンショウウオの典型的水生型のオス2匹と産出直後の卵嚢1対、それにヤマアカガエルの幼体1匹が見られた。頭幅の増大、体や総排出口周辺部の膨らみ、総排出口前端に発達した明瞭な生殖結節、尾ひれの発達、喉元の白いパッチ(Hasumi, 2001)が、これらのオスの特徴であった。

2005年5月14日の調査時に、ハクバサンショウウオの産卵後のメス1匹が陸上の倒木の下から見つかった。2つの流れ(気温=16.5℃、水温=7.3〜15.1℃、水のpH=6.1)には、産出された卵嚢の下に明瞭な水生型のオス3匹、越冬幼生1匹、合計15対の卵嚢が見られた。卵嚢には胚発生のステージが胞胚期から尾芽胚初期の18〜36個の胚が見られ(未受精卵は、0〜8個)、卵嚢の粘着端は枯れ枝や水生植物の根っ子に付着していた。これらの胚の植物極側はミントグリーンを呈したが、これはクロサンショウウオの胚の色と同じであった(Hasumi, 1996)。流れには、指ダコのあるアズマヒキガエルの痩せたオス2匹(繁殖期の終了後、春眠中のもの)と、ヤマアカガエルの幼体1匹が見られた。

同行した調査者(アルファベット順、敬称略): 懸川雅市(東京都立小松川高等学校)、岸冨士夫、齊川祐子(しろうま自然の会)。


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