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白い古書、ぞっき本も、時を経て読むと面白いものです。

今月の一冊は、これ!


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  凡談愚言  

藤山 寛美著
読売新聞社刊(1978年9月10日発行)

 私が今一番嘱目する女優さんの藤山直美さんが、先月二十七日まで、父・寛美さんの十三回忌の追善公演「浮世噺 桂春団治」を東京・新橋演舞場でなさったので、この一冊を取り上げてみました。

 まず、発行日の78年。忘れもしない「キャンディーズ」解散コンサートの年です。入学式の時期でしたから、四月と記憶しています。ミキ、ラン、スーの三人が後楽園球場で「春一番」などを熱唱した年でした。私も幾分か若かった。

 いわゆる芸能人の書いた本など見向きもしなかった私が、何故この本を購入したのか。今となっては判然としませんが、「天才喜劇役者」と世に喧伝されていた藤山寛美に引かれたことと、莫大な借金を背負って松竹新喜劇を除籍になり、その後復帰して新喜劇を率いた経歴に興味をそそられたからかも知れません。もう一つの要因は、おおば比呂司さんのイラストが気に入ったからではなかったか、と思われます。

 帯には「『日本のチャップリン』とよばれる天才的喜劇役者が自ら書き下ろした芸道半世紀の記録。数奇な生い立ち、四歳での初舞台、初恋、戦争、大陸放浪、松竹新喜劇への参加、女性遍歴、借金物語、政談、教育論まで、寛美のすべてをさらけ出す」とあります。内容は「寛美芸談」「寛美自伝」「寛美女談」「寛美金談」「寛美政談」の五部構成。どれも面白く読ませながら、チクリと人を刺します。

 本書に出てくる「寛美語録」を少々。
 ・「『働く』とはハタをラクにすることだ」・「『俳優」は人に非ず、人を憂うる。わたしは俳優にはなりたくない」・「公害なくすより心害が先」・「だれもやらなかったら、きみだけでもやれ」「金はほしい。しかし、CMには出ない」・「楽屋の花は葬式の花」・「役者馬鹿は役者子供とは違う」・「女の数は男の勲章じゃない」・「役者は自分のために金を使うな」・「借金がぼくの芸をつくった」

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