「ほら、落ちついて。イッキくんも、メタビーくんも。」 椅子から立ち上がったイッキたちをヒカルは優しく宥めていった。 「昂奮したっていい事なんてないよ?」 「でもメタビーがあんなこと言うから!!!」 「メタビーくんだって本気じゃないさ。なあ?」 ヒカルはメタビーを振りかえるが、メタビーは俯いたまま答えない。 ヒカルは困った様にため息をついた。 「大体お前、オレの家に帰らないでどうするつもりだよ!!」 「ヒカル兄ちゃんち行く……。」 「おいおい…。」 情けない声がヒカルの口から零れた。 「オレの事、嫌いになったのかよ!!??」 イッキは唇をかみ締めた。 なんでか悔しくて、悔しくて。 涙が零れそうだった。 「なんなんだよ、それは。」 「………。」 「どういう意味だよ!!!」 メタビーは俯いたまま言った。 「……お前のメダロットはもう止めだって言ってるんだ。」 「そんなもん認められるとでも思ってんのかよ……。」 応えたイッキの声は、酷く暗い色をしていた。 「お前がオレの傍から居なくなるってんなら……。」 イッキの足が床を蹴った。 「お前のメダル、オレが壊してやるっ!!!!!」 メタビーに走るイッキ。 メタビーは動けなかった。こんな答えが返ってくるなんて思ってもみなかった。 「ストップ。」 ヒカルが穏やかに二人の間に立った。 反動をつけて、イッキの身体が止まった。 それを確認して、ヒカルはメタビーに向かい合った。 片膝を立ててメタビーに視線を合わせる。 「頭、冷えた?」 ヒカルの問いに、メタビーは頷く事さえできなかった。 何が起きたのか、まだわからない。 「ね?きっとボクもこうする。」 哀しく嬉しそうにヒカルは微笑むとメタビーの肩に手を乗せた。 「君の考えが間違ってるとは、いまのボクには言えないよ。 でも、ボクならイッキくんと同じような行動に出るし、なにより君たちの事が好きだから。」 あんなこと言われたら狂っちゃう、と。 彼は笑った。 「イッキくんのことが、好きだろう?」 メタビーは、哀しく頷いた。 「なら、居たいだけイッキくんの傍らに居て良いんだよ。」 ぽたり、ぽたりとメタビーは泣き出した。 涙なんて流せないメダロット。 それでも、彼は泣いていた。 「どういうことですか。」 硬い声にヒカルは振り返った。 微笑み、イッキの質問には答えない。 「メタビーくんのことが好きかい?」 「当たり前じゃないですか。」 「当たり前、ねえ。」 クスクスと面白そうに、ヒカルは笑う。 「あの。」 「確実に置いて逝くってわかっているのに…?」 皮肉げな言葉と表情は、しかし一瞬で消えてしまってイッキにはもう確認できなかった。 「さあほら、行ってやりなよ。」 ポンっとイッキの肩を叩き、メタビーの元へ促してやる。 向かい合った二人は、 一瞬居心地を悪そうにして、 いつもの様にじゃれあい始めた。 それを見て、 ヒカルはまた笑った。 |
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