地震・防災関連用語集

カテゴリ:地震

スロー地震

断層がきわめてゆっくり滑ると人は地震と感じないし地震計にも記録されません。このような地震をスロー地震とかサイレント地震あるいはゆっくり地震という名で呼ばれています。これらは地震が人に感じられず地震計にも記録されないという意味ではサイレンと地震です。

長周期成分の地震波(ゆっくりとした地震波)が卓越する地震を低周波地震と呼びますが、断層がゆっくり滑ったことによって発生したスロー地震であろうと思われています。また、大地震の後のゆっくりとした余効変動もスロー地震あるいはゆっくり地震と呼ばれることもありますが、これらの用語は統一されていないようです。

海洋プレートは海溝やトラフと呼ばれる海底の凹地から年間数cmの速度で日本列島の下に沈みこんでおり、プレートの境界ではひずみが蓄積されていきます。ひずみの蓄積が限界に達するとそれが地震として開放されることになります。ところがひずみの蓄積に見合うだけの地震が発生しておらず、地震によって開放されるひずみエネルギーは日本海溝沿いで40%程度、南海トラフ沿いでは70%程度であるといわれています。残りのひずみエネルギーの多くはプレート境界がゆっくりとすべるために人体や地震計には感じることなく開放されていると考えられています。

スロー地震が発見されたのは1992年の三陸はるか沖地震であり、伸縮計の記録から見出されました。これによると、先ず普通の地震として小さくすべり、引き続いて隣の領域が津波を発生させるほどの速度でゆっくり滑り(津波地震)、さらに減速してゆっくりと数日間かけて滑った後に停止したと考えられています。

三陸はるか地震後、スロー地震はひずみ計やGPSによる観測からいくつも発見されており、通常の地震の発生領域(アスペリティ)とスロー地震の発生領域は重ならない、あるいは余震はアスペリティを避けるように周囲に分布する例が指摘されています。これらの観測結果はこれまでの地震に対する理解を超えるものであり、最近の地震学の大きな進展とされています。

「川崎一朗著 スロー地震とは何か 巨大地震予知の可能性を探る 日本放送出版会 2006」は、スロー地震の発見と最近の目覚しい地震学の進展について記述されています。