地震・防災関連用語集

カテゴリ:地震

ひずみ(歪)

「地震は、地下の岩盤のなかにストレスがたまることによっておこる。ストレスによって生ずるひずみが岩盤の耐力の限界に達したとき、岩盤はひずみを解消する方向へ急激にずれ動く。この岩盤の動きが地震波を発生させる断層運動である。」(自然災害を知る・防ぐ 第二版 大矢雅彦他 1996 古今書院)より

上の文章は地震とは何かを簡潔に表現した文章です。この中にひずみという用語が用いられています。文中のストレスは日本語で応力のことですが、ストレスを応力と読み替えると返って難しい表現となります。また、物理用語としてのストレスはたまるというより増加減少するものですが精神的なストレスの例に習ってストレスがたまると表現されています。一方、ひずみがたまる、ひずみエネルギーがたまるという表現はよく用いられます。同様に、文中のひずみをひずみエネルギーと読み替えても意味するところは同じです。専門書でない場合は厳密さに欠けても理解しやすい文章で表現されることがあります。

岩盤に力が加わることによって岩盤が変形して岩盤の中にストレス(=応力)が発生します。この変形の大きさ*1ひずみといい、弾性領域(力を除くと元の状態に戻る領域)では応力とひずみは比例*2します。

継目計

コンクリートの継ぎ目をまたいで固定されている継目計の設置状況

ひずみはひずみ計によって計ることができます。計測値は(例えばひずみ計を設置したときの)基準値からのひづみであり、既にひずみがどの程度たまっているかを直接計ることはできません。

東海地震ではプレスリップの検出が直前予知の柱に設定されており、プレスリップを検出する目的で東海地方や南関東に体積ひずみ計が設置されています。

土木や建築の分野では、主にコンクリート構造物の施工管理、施工後の管理、あるいは防災のための監視用に右の図のような継目計と呼ばれるひずみ計が用いられることがあります。継目計には前もってひずみと変位との関係が求められているひずみゲージが貼りつけられているので、観測されたひずみから変位(mm)に換算し、目地や亀裂の拡大縮小の様子を知ることができます。継目計の観測によると、コンクリート構造物の目地は温度の下がる夜半に拡大し、温度の上昇する昼間に縮小する変動を毎日繰り返しています。コンクリート構造物の膨張伸縮は人には感知できない程のわずかな量(1/10~1/100mm程度の桁)ですが、毎日毎日規則的に繰り返される膨張収縮を示す記録を見ていると温度変化が物理風化の原動力になっていることを実感することができます。

*1 変形の大きさ 変化した長さ/元の長さ、あるいは変化した体積/元の体積で単位は無次元

*2 比例:フックの法則 金属線を引っ張る場合のように金属に加える力と金属が延びる方向が1方向である場合は[σ=E・ξ]という簡単な式で表される。ただし、σは力を断面積で割った値で張力、ξは延びた長さともとの長さの比であり、ひずみを表す。このときの比例定数Eはヤング率と呼ばれる。