地震・防災関連用語集
カテゴリ:災害
マグマ水蒸気爆発
マグマが地下水や海水などの水と接触すると急激に大量の水蒸気が発生して、爆発的な噴火現象が起こります。この爆発的な噴火現象をマグマ水蒸気爆発と呼び、噴出物の中にマグマ由来物質を含むのが特徴です。マグマ水蒸気爆発の発生にはマグマの熱が水に短時間で移動できるようなマグマと水の接触状態が必要になると考えられています。なお、地下水や海水などの水がマグマに熱せられることによって水蒸気の圧力が徐々に高まり、その圧力が山体の強度を越えると山体の一部を吹き飛ばすような爆発が発生しますが、このような爆発を水蒸気爆発と呼び、マグマ水蒸気爆発と区別しています。
1952年(昭和27年)の明神礁*の噴火では、海上保安庁の観測船第5海洋丸が遭難して乗組員および調査団全員の31名が犠牲になりました。突然にして、絵に示すようなマグマ水蒸気爆発に遭遇し、これに伴って発生したベースサージ(海面をはうように高速で流れる火山ガスと火山灰などの混合物)に巻き込まれたものと考えられています。
水蒸気爆発の代表的な例としては、1888年(明治21年)の磐梯山爆発があり、山体崩壊によって爆裂火口(巨大地すべりの滑落崖)が形成されました。水蒸気爆発・山体崩壊・岩屑流の発生により、死者行方不明者約500人という大災害となりました。
産業分野での事故に蒸気爆発あるいは水蒸気爆発と呼ばれる爆発があり、溶融金属と水との接触によって発生しています。(水)蒸気爆発が発生すると爆風とともに溶融金属が周囲に飛び散るため、人的・物的損害が大きくなり、飛散した高温金属が付近の可燃物に触れて出火することもあります。また、原子力発電所おける蒸気爆発の可能性についても検討・研究が進められています。
*明神礁 昭和27年9月17日に海底噴火があり、これを発見・報告した漁船「第十一明神丸」の名前を取って、この山体を「明神礁」と命名された。明神礁は東京から約370km南下したベヨネーズ列岩の東北約10km付近、明神礁カルデラの北東縁に位置する円錐形の山体であり、1870~1970年までの100年間に11回の噴火を起こしている。測量船「昭洋」搭載の無人測量船「まんぼうⅡ」による1999年(平成11年)の調査によると、最浅部の水深は50mで火口頂部付近から気泡を噴出している。
参考資料
蒸気爆発の科学-原子力安全から火山噴火まで- 高島武雄・飯田嘉宏 裳華房 1998
磐梯山爆発 米地文夫 古今書院 2006
日本周辺海域火山通覧(第3版) 海洋情報部研究報告 第40号 2004