イエスのセリフに常に付いてた弦の伴奏が、ここだけは消えていて、あたかも命の灯火さえも消えかけてるかのようです。
周りの人は「エリ、エリ」を、預言者エリヤを呼ぶものと聞き違えて、好奇心のかたまりになってます。
No.61 MIDI (7.9KB、2分31秒)
第六の時(正午)から地上を全て暗闇が覆い、第九の時(午後三時)まで続いた。
そして第九の時にイエスは大声で叫んで言われた。
エリ、エリ、ラマ、アザプタニ!
これは、「我が神、我が神、なぜ私をお見捨てになったのですか?」という意味である。
そこに立っていた人のうち、何人かは、これを聞いて言った。
あれはエリヤを呼んでいるぞ。
するとすぐにその中の一人が走って行き、海綿を取って酸っぱいぶどう酒を含ませ、葦の棒につけてイエスに飲ませた。
他の人々は言った。
待て、エリヤが来て彼を助けるかどうか見てやろう。
しかしイエスはもう一度大声で叫んで、息を引きとられた。
とうとうイエスは息を引きとりました。最後となるコラールは、聴く人が自らの死を意識して、イエスに呼びかけます。
5度目の登場となる主旋律は、フリギア旋法という古い教会旋法で編曲されて、同じ旋律が使われた過去4度のどのコラールよりも沈んで聞こえます。
No.62 MIDI (14.5KB、1分37秒)
いつの日か私が世を去る時、私から離れ去らないで下さい。
私が死に面した時、私の前に姿を現して下さい。
大きな不安が私の心を取り囲む時、
私をその不安から引き出して下さい、
あなたが受けた不安と苦痛の力によって。
その時、奇蹟が次々と起こりました。ここが第2部2回目、そして全曲最大のヤマになります。天変地異のくだりでは、通奏低音が歌を補足するようにトレモロで地震を描写します。
合唱は短いながらもとても美しいハーモニーで、ここまでずっと音楽とお話を追っていたら、感動ものです。
No.63 MIDI (17.3KB、3分21秒)
すると見よ、神殿の幕が上から下まで真っ二つに裂けた。そして大地が震え、岩が裂け、墓が開いて、そこで眠っていた多くの聖者の体が蘇った。
そしてイエスの復活の後に墓から出て、聖なる都を訪れ、多くの人の前に現れた。
百卒長と、彼と共にイエスの見張りをしていた人々は、地震とこれらの出来事を見て、非常に恐れて言った。
本当に、この人は神の子だったのだ。
レチタティーヴォの後半は、さらに2つのシーンに分けられます。裁判を放棄したピラトが再登場します。
またそこには多くの女性がいて、遠くから様子を見守っていた。ガリラヤからイエスに従って来て、彼に尽くしていた人々である。その中にはマグダラのマリアとヤコブとヨセフの母マリア、ゼベダイの子らの母もいた。
夕方にアリマタヤ出身の金持ちで、ヨセフという者がやって来た。この人もイエスの弟子であった。彼はピラトのところに行って、イエスの遺体の下げ渡しを願った。そこでピラトは、遺体をヨセフに渡すように命じた。