雪の鶴ケ城を歩く

福島県会津若松城

「今年の冬は雪が少ない・・・・」と、会津出身のUさんが呟いた。
雪化粧の鶴ケ城天守閣が見たくて、二の丸駐車場に車を止めると城郭の中へ
と歩き始めた。関東の人間からすると充分な積雪で、天気のいい昼間でも息が
白く、コートのポケットに両手を入れて歩いた。
赤い欄干の廊下橋から天守閣が顔を覗かせ、見事な石垣がそそり立ち深い濠
の水は凍が張っていた。平成13年に干飯櫓と南走長屋が復元され、鶴ケ城が
更に威容を誇っている。
全国の城の中でも大好きな鶴ケ城天守閣は、会津地方のシンボルと言っていい
程に美しい。

戦国時代の末期に蒲生氏郷、上杉景勝らの武将によって今の姿に整備された鶴ケ城
は、武家屋敷町を外堀で囲む大規模な城郭で、堅牢な石垣で囲まれた本丸の中心に
五層の天守閣が聳えている。
江戸時代は会津松平家28万石の居城で、全国に武勇を知られた会津武士の象徴と
なった。東北地方でも最も堅牢で美しい城は、1868年(明治元年)の会津戦争のおり
に1ケ月の籠城にも耐えることによって難攻不落を証明した。
物悲しい物語を秘めた天守閣は、雪化粧の中で毅然として立ち尽くしていた。

「会津に帰省すると、鶴ケ城を歩きたくなります・・・・」と、Uさんはカメラを片手に
天守閣を眺めていた。
会津人の心の故郷である鶴ケ城は、幕末に私利私欲を捨てて戦い抜いた象徴
として、現代でも姫路城、名古屋城、熊本城・・・・と天下の名城に並ぶ観光客が
訪れる。そして、この城や会津武士にまつわる多くの歴史ドラマに触れ幕末フアン
になった人も多い。


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