平成12年の冬、九州一周ドライブをした。多くの町を訪れたが、忘れられない
町がある。熊本県人吉市。
盆地にある人口4万人の町。何の変哲も無い地方都市だが、町のリズムが
優しくドライブ疲れを充分に癒してくれた。球磨川の急流くだりと小さな城跡の
ある町。何百年も相良一族が治め、今でも時がのんびり流れている。
この町には温泉が多い。公衆浴場も多く、城跡近くの温泉に入った。地元の
人々の社交場であり、洗い場の無い浴室で湯船から湯を汲み上げ身体を洗っ
た。古き良き公衆浴場の雰囲気。運転の緊張で堅くなった体が自然と解れる
のを感じた・・・・・。
湯上りに多門櫓と塀が復元されている城跡公園を散策した。小さな藩であっ
たわりには城跡の石垣はとても立派だった。たしか、幕末に人吉藩の武士も
遠く会津方面まで出兵し戦った。のんびりした町の雰囲気からは、そんな激動
の歴史も想像できない。
明治10年の西南戦争のおり、西郷隆盛軍が鹿児島への敗走の途上、人吉
城下に落延びた。自分もそんな史実から、小さな城下町を記憶していた。人吉
のゆったりした時の流れは、戦い疲れた西郷軍の兵士もつかの間の安らぎと
癒しを得たに違いない。人吉の町にはそんな空気が流れている。
豊臣秀吉の「文禄・慶長の役」の本を読んでいてびっくりした。山間の
静かな城下町人吉から1000人近い武士団が、加藤清正軍とともに
朝鮮半島に出陣している事を知った。しかも、現在のロシア近くまで
一時は攻め込んでいる。
朝鮮出兵、幕末の戊辰戦争、西南戦争と肥後の山奥まで激しく歴史
が駆け抜けている。
人吉の歴史を紐解いてみれば、様々な歴史的な伝承、エピソードが
埋もれていそうだ。今度、じっくり調べてみたい。
2002年5月29日の、TBS系「オフレコ!」で人吉の永国寺の幽霊画
を紹介していた。江戸時代の怨念話が込められた絵らしい。全国を
ドライブしていると様々なミステリーとの出会いもある。