kabuki index live-repo (rice stone) report

コクーン歌舞伎 

夏祭浪速鑑  


2003年 6月24日 
コクーン劇場
<其の一>

配役 | 其の一 | 其の二 | 其の三 | 其の四

 

■開演前

さて、平成中村座の興奮が忘れられず、いってきましたコクーン歌舞伎。
一つには消えかけた平成中村座の記憶の修正をすること。なにせあの泥場のあとのシーンとラストシーンの記憶があまりに大きくてその他のことはただ夢の中という感じだったもので(苦笑)
そして、話題を集めているコクーン歌舞伎なるものが一体どんな演出を見せてくれるのかも大いに楽しみでした。
しかもチケットはなく、当日券ねらいの計画性のなさ。(爆)
なんとか新幹線の指定券を買い求めてシートに座るときのワクワク感……。
新幹線に乗ったときから観劇気分はすでに始まっていました。

さて、東京へ着き山の手線で渋谷まで。駅がすっかり新しくなっていたのにびっくりしました。
地図を片手に文化村通りを歩いていくと、すぐに東急が見えてきた。垂れ幕もかかっている。


渋谷のど真中に位置する会場
文化村への入り口はこの裏手にある

さて、当日券売り場を探す。
あまり人は多くない。ラッキー!と思ったのは大きな間違え。
実は先頭はすでに場所を移されて別のところにいたことが後になって分かりました。
並ぶこと1時間。会場の係員が20〜30人ごとに区切って説明を始めていく。
実にテキパキとした話し方。
疲れと人の多さに、「あーあ」という気分が漂っていたところで、このきっちりした対応はありがたい。
いつの間にやら立ち見に並んでいることを楽しんでいるんだから不思議でした。

「ここのブロックのみなさま方はお座席はご用意できません。立見とお考えください。
でも立ち見でもきっとご満足いただける内容になっております(断言)
立ち見ということについてはよろしいでしょうか? では、立見席についてご説明いたします。

立見席はAとBがありお値段はAが3500円、Bが2500円となっております。
Aについては中二階バルコニー席の周りにご用意しており、左右17名さまずつブロックで……(略)。
手すりがございますので捕まりながら見ていただくことができます。
ただし、舞台の4分の一が見えにくくなっております。
立見Bは、二階席の後ろに設置されており、約半分が見えません。
こちらのお席は雰囲気を楽しんでいただくためのお席とお考えください。
お席は窓口にて順番に見やすいところからご案内させていただきますので、
できましたらあまり考えずに案内されたお席をお求めいただくようにお願いします。」

ここまできっちりと説明されると非常に気持ちがいい。
たとえ希望の席が取れなくてもこれだけ適切な説明があると不満の声もそう上がりません。

そして、なんとか私は立見Aを取ることができました。いやよかった。。

さて今日の服は中村座の色(茶色と白と黒)にしてみたのですが、コクーン劇場の引き幕は通常の歌舞伎座と同じ配色で、残念ながら色のコーディネイトは外してしまいました。
座席を見渡すと一階、中二階、二階席という三層構造になっている。
会場全体に高さがあって垂直的な広がりを感じます。


開演前の会場内部の風景中二階席から見たところ)

席へついてみると、上手側の端を除いたらあとは問題なく見えそうでした。
一安心してふと下に目をやると、一階平場席の下手横に、
何と客席に橋之助さんがいる!
すでに衣装も着ていて、まるで通行人のようにして歩いている。

途中、チケットを見ながら自分の席を探しているお客さんに、
「どちらの席ですか? ちょっと見せてくださいな。ああ、○○○番でしたら、あちらですね。」
みたいな会話をしているのが身振りで見て取れる。
こりゃもう客はたまりませんわ。ほんまに何という贅沢なことでしょう!
昔はひょっとしたら役者もスタッフもなく、こんな風な開演前の風景が見られたのかも知れません。

ぎりぎりまで並んでいたのでお昼を食べる時間がない。
とりあえず何か買ってきて食べながら見ようと思い、ロビーへ出るとそこにもたくさんの役者さん。
ひときわ声の大きな兄ちゃんが、大阪弁でわめいている。
「姉ちゃん姉ちゃん、エエやないかー」
言うだけでなくて、お客さんの手を引っ張ったり、肩を抱こうとしたり!(爆)
すると横から他の役者が止めに入る。

「よう、姉ちゃん…」
威勢のいい兄ちゃんに人だかりができる。
役者と客が混在する開演前のロビー物販コーナー

開演前のこの演出だけでもう3500円分元取ったって感じでした(笑)。
すると、横手が急にざわざわとして、すごい剣幕で男がごろつきに挑みかかりながら飛び出してきた。
おおおおおお!!!!またしても勘九郎さん!!
少しの照れもなく気を抜いた風もない。すごい形相で真剣に芝居をしていた。芝居の鬼だ。
客からは「ひゃーーー」という何ともいえない囁くような歓声が起こる中、あっという間に走り去っていく。

そのあとは釣舟三婦役の坂東弥十郎さんが、ゆったりと歩いてくる。
この風格。至近距離で見るととても優しそうな人だった。
弥十郎さんは比較的ゆっくり歩いてくれたので、なんとかブレながらシャッターを切れました。(笑)
背中を撮ろうと近づいていくと、今度は振り返って「さあさあ皆の衆〜、祭りだ祭りだ〜」と声を上げる。
もうこれだけでもおなか一杯!ご馳走いただきました(笑)。

ブレてますが、坂東弥十郎さんの背中です(笑) 「さあさ、祭りだ祭りだ〜」
腕からは彫り物も覗いて、貫禄十分。

 

会場から開演を告げる拍子木が聞こえると、それに合わせてロビーにいた物売りが「ででん!」と太鼓を叩く。
客も急ぎ足で会場へと入っていくと、客席ではまだ役者が通路を往来してサービスしています。
左右の客からがんばってください。の声がかけられて和やかな雰囲気です。
さて、いよいよ始まり──。


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ふんどし