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コクーン歌舞伎
夏祭浪速鑑
2003年 6月24日 コクーン劇場
− 其の四 −
■二幕目 (第一場 九郎兵衛内の場)
場面は団七の家。
一人息子のいたずらをお梶(扇雀)がたしなめている。
その物腰や表情が柔らかで子供を思う情愛がにじみ出ていて本当にいい味出されてます。
この場面の照明がとてもよかったのですが、家の外は明るく照らして、家の中は逆に少し翳っていて、
横手の方から光を当てていました。
ちょうど外から西日が差し込んでいるかのようで通常の歌舞伎ではちょっと考えられない。
そこへ徳兵衛(橋之助)が訪ねてくる。ここの橋之助さんの演技には風格さえ漂っている感じです。
団七の凶行を感づいている徳兵衛(橋之助)は、「玉島へ行きゃらぬか?」
と、自分と一緒に高飛びをしようと何度も誘うが、団七は首を横にふるばかり。
団七が玉島へ逃げては、磯之丞が無事に家に帰るのを見届けることができないからというのがその理由でした。
団七は、実は喧嘩しか取り柄のない底辺に生きる男なのですが、恩人のために義理を通すことで何とか自分の男としての面子を保とうとしているのでしょうか。
武士ならいざ知らず、そこまでして義理を貫こうという姿勢には驚きを禁じ得ません。それは江戸時代の庶民がみな持っていた美学なのかも知れません。
さて、徳兵衛はお梶に懸想する芝居をし、怒った団七はお梶に三下り半を叩きつける。
すべては親殺しの類が妻子に及ばぬようにという徳兵衛と三婦の芝居なのでした。
泣く泣く親子は家を出て行くのでした。
■二幕目 (第二場 同 屋根の場)
ここからは大立ち回りの始まりです。ミニュチュアの町並みのセットに団七がやってくると、ダンボール箱大くらいの家影に隠れていた役人が一斉に立ち上がって、「御用だ!」
この役人たち、ダンボール箱大の家は放り投げるはと無茶苦茶なことをやってくれます(笑)。
ミニチュア人形を登場させたり、本物にミニチュア人形のようなぎごちない動きをさせてみたりと、本来の歌舞伎の演出とそれにこだわらない自由な演出が組み合わさって、奇想天外な面白さがあります。
梯子を使った立ち回りでは、客席の中に飛び出した役者たちが、客席の通路にみるみる梯子を立てかけていきます。そこを上っていく勘九郎さん。そして見得。
客席の盛り上がりも最高潮に達していきます。
いよいよ追い詰められ──
というときに現れたのが、徳兵衛でした。
団七の首に路銀をかけて、これを持って逃げろと助けます。
ありがたい!
と二人して駆け出そうとすると、またもや舞台の後ろが開いて、
にぎやかなだんじり囃子。
そのリズムに勢い付いて、二人は背後の駐車場の外へ駆け出していく!(爆)
もちろんこの時点で会場は総立ち、激しい手拍子で盛り上がっています。
しばらくして二人が舞台に戻ってきた、と思ったら次の瞬間信じられない光景が。
なんと、二人を追いかけてきたのは、(多分)本物のパトカーだった〜!
それも品川ナンバーだ。(笑)
笑いやら手拍子やら歓声やらで、客席の反応はすさまじい。
二人の駆け込んでくるスピードがスローモーションになり、「あわわわわ〜」というところで幕切れとなりました。
その後はまたもやだんじり囃子が鳴り響き、スダンディングオベーションの中、何度もカーテンコールが行われ、舞台と客席手を振り合いながらようやく終了しました。
またもや、「参りました」と降参するしかないような素晴らしい舞台で、はるばるチケットも持たずにやってきた甲斐がありました。
コクーン歌舞伎が歌舞伎の可能性を押し広げてきた功績は大きいと思います。
伝統的な歌舞伎ではもちろんない、でも、歌舞伎はリアリティを追求するのではなく、虚構であると開き直るところから、さまざまな演出が生まれたのではないか、だから、多分こういうのもアリなのでしょう。
これからの歌舞伎がどのように発展していくのかとても楽しみな気分にさせてくれる舞台でした。
最終更新日 2005年6月19日