自分がデザインした本とのかかわりや、思い出を語るこのコーナー。

Everything/Mr.Children/山下邦彦・著

 いつだったか忘れたけれど、朝日新聞にミスチルに対する4つの批評という記事がでていたことがあった。それを読んだときに、すごくイヤな気分になったのを覚えている。同じように気分を害した人がいたようで、数日後、あれはひどいという投書が掲載されていた。
 ほんとにそうなんだ。批評という名のもとに、けなしたり、よく調べもしないで、印象だけでもっともらしいことをいったりするってことが、どれだけ多いことか。

 JAZZ LIFEの編集者時代、「なぜ、レコード評では、けなしたりしないんだ。レコード会社の広告がででいるからだろう」といった著者の人がいた。そういうときに僕はいつもこう答えていた。「同じ言葉を、その音楽をつくったミュージシャンの前でいえるのならいい。そして、その言葉がミュージシャンに響くものなら、いい。」と。

 この山下邦彦氏が書いた、この本は、ミスチルの音楽にきりこみながら、強く本人達にとどく言葉に満ちている。批判的な部分であっても、それは単にけなしたりするために書かれたものではない。貶めたり、自分をもっともらしくみせたりするためにかかれた文章は、1行たりとも見当たらない。
 えーい、この際だからいってしまうと、これを読んだミスチルの桜井は本当に驚き、山下本人に逢いたいといってきたのだ。そして、その希望は実現し、桜井は山下にこういう風に言ったという「音楽を聴いただけなのに、こんなにも僕のことを分かるひとがいる」と。

 音楽の分析どうので語られることが多い本だと思うけど、僕は評論家といわれる人や、批評にたずさわっている人に是非よんでほしいと思っている。言葉が、ひとに(批評の対象に)届く、これが、批評のありかたの基本。あたり前だけど、愛情がなくちゃ始まらない。