新語・チャッツウッディング 投稿者:まなちゃん
投稿日:2004/08/01(Sun) 22:38 No.1867 |
|
|
 |
自宅療養中のT-Kayさんの気晴らしに、シドニーの話題をひとつ。つい数ヶ月前、シドニーで新しい言葉が生まれました。チャッツウッディング(Chatswooding)という言葉で、文字通り、「街をチャッツウッドのように開発する」という意味です。
この言葉が生まれたきっかけは、今年5月、ボブ・カーNSW州現首相が、「チャッツウッドはシドニーの都市開発の見本だ」と絶賛し、「西部シドニー各市はチャッツウッドを手本に都市開発を進めるべきだ」と発言したことが発端です。T-kayさんもご存知のように、チャッツウッドという街は鉄道駅周辺に商業施設や高層マンション、オフィスビルが建ち並び、「職」「住」「食」「遊び」の機能が一応全て揃っています。
彼のこの発言の背景には、シドニー総人口の半分近くを占める西部地域の大半が、自らの地域内に十分な雇用機会を持たないために、多くの住民がシティまでの遠距離通勤を強いられ、その結果交通渋滞や大気汚染を引き起こしているという状況があります。ブラックタウン市はその典型で、NSW州最大の28万人の人口を持つのに、勤労人口の約半分が市外に勤めに出ています。もし彼らが地元で働き口を見つけるようになれば、交通渋滞も緩和されるというのが、ボブ・カー氏の意図のようです。
それだけならいい。でも彼はつい口を滑らせて、「西部地域の一部は、腑抜け(Sole-less)だ」と言ってしまい、それが西部各市の関係者、特にLeo
Kellyブラックタウン市長を怒らせてしまいました。彼はニュース談話で、「豪州人の70人に1人が我が市に住んでるんだ」「ここは全豪で一番住みやすい市なんだよ」「だから、チャッツウッドの手本なんて要らん!」と一蹴しました。その会話の中で、「チャッツウッディング」という言葉が生まれたようです。
とはいえ、シドニー郊外全体のチャッツウッディングは進行中のようです。現に州政府は、西部7市(Penrith,Blacktown,Parramatta,Liverpool,Campbelltown,Fairfield,Bankstown)に対し、「チャッツウッディング推進予算」140万ドルを計上しました。いま西部7市のうち、パラマタだけは実質チャッツウッドと似たような状態になってますので、それ以外の6市の中心市街地をチャッツウッド(やパラマタ)のように開発するのが、政府の狙いのようです。
これが進展すれば、将来はどの街にも30階建てくらいのマンションとオフィスビルが建ち並び、巨大なウェストフィールド・ショッピングセンターができるってことになるんでしょうねえ。まるで首都圏みたい。 |
|
新語の正体は「脱・個性」化? tkay - 2004/08/02(Mon)
02:13 No.1871 |
|
|
|
 |
まなちゃん、お気遣いありがとうございます。
まなちゃんが仰る通り、このChatswoodingは最近の首都圏再開発と似ていますね。
実は、まなちゃんの投稿を呼んで、ちょっと憂慮してしまった事があるんです。
日本の首都圏での再開発では、お台場を皮切りに横浜のみなとみらい、六本木ヒルズ、品川シーサイド、恵比寿ガーデンプレイス、渋谷地区と、図らずもみんな同じような内容の複合施設が中心となり、「これ」と言った個性がない。しかも、どこの場所にもそれぞれの歴史があったはずなのに、わざわざそれらを壊して似たものを造っている。 極端な言い方をすると、首都圏が「脱・個性化」に向かっているように見えるんです。 上で述べたうちの1つに身内が住んでいて、小さい頃からずっと見てきて、再開発後にすっかり変わってその土地の今までの歴史が無くなってしまった様に僕は言葉を失い、残念な思いをしたものです。
これに対し、Chatswoodingと言う概念、日本がやった(やって『しまった』?)脱・個性化を、敢えて自分たちの意思でもってやろうとしているように見えてしまう。 う〜ん、これってどうなんだろう? 「交通渋滞や大気汚染」問題の解消、雇用機会の確保、それらを言われれば、「あ、そうなの?」となるかもしれません。 だけど、脱・個性化した街づくりがそれらに対する「必然」的な結論になり得るのだろうか?他に問題解決のアプローチの仕方がないのでしょうか? そして、そう言った開発がバブルに拍車がかけたりしないのでしょうか?(バブルってのは当事者たちは気付きにくい問題かもしれませんが)
Leo
Kelly市長の談話、僕は大いに賛成します。 チャッツは裕福な中国系の人々があのような立派で住みやすいな大きな町をつくったと聞きます。 チャッツにはチャッツのそう言った歴史があるのと同じように、それぞれの町にはチャッツと違うそれまでの歴史があり、チャッツとは違う様々な条件(それがその場所の個性を作り上げていると思います)もあるでしょう。「だから、チャッツウッドの手本なんて要らん!」と言う発言、大いに賛成です。 このChatswooding、もし実行されるのであれば、その前に大いに議論を重ねてほしいと思います。
それにしても、NSW州の首相、個性をなくすような街づくりの提案、そこからつながるであろうバブルの誘引、思わず出てくる余計な一言…まるで、どこかの国にいそうな政治家みたいですね(笑) |
|
Re:
新語・チャッツウッディング まなちゃん - 2004/08/02(Mon) 06:27
No.1872 |
|
|
|
 |
実際問題として、いまシドニーの郊外でChatswoodingをやろうとすると、間違いなく「ウェストフィールドとメリトンの街」になります。つまり、駅周辺に巨大なウェストフィールド・ショッピングセンターが聳え、その周りをメリトン社の手による高層マンションがぐるりと取り囲む...壮観です。ですが没個性そのものです。そして、ウェストフィールドとメリトン、マクウォーリー銀行と不動産業者ががっぽり儲かる。
NSW州首相は言います。「(Chatswoodingという手法は)パラマタ市街地開発で成功をおさめてきた。それを他6市にも応用したい」と。確かに、ここ20年でパラマタCBD(中心市街地)は大発展し、今ではシドニー第2位の雇用創出都市になりました(CBD内労働人口:シティ20万、パラマタ3万9千、ノースシドニー3万5千、ノースライド2万9千、チャッツウッド2万3千...)。パラマタCBDでは製造業だけでなく金融、IT、ビジネスマネジメントなど多様な職場が生まれ、ここに住む多くの人々がシティに出ることなく地元で働ける状況になっています。だから首相が、「パラマタの成功を西部全体に横展開したい」と思うのも、確かに理解できます。
ですがT-kayさんのおっしゃる通り、街にはそれ固有の歴史があり文化風土があるわけで、ある街で成功した開発手法が他の街でも通用する保障はありません。例えばパラマタのCBD建設が成功したのは、「建国以来、200年以上にわたってシドニー西部の中心都市だった」という歴史に負うところが大きいわけで、それを(30年前まで草ぼうぼうの田舎町だった)ブラックタウンに応用しても、うまくいくとは限りません。
但し、シドニー西部が今のままの状態でいればいいと言ってるのではありません。特にブラックタウンに関しては、中心市街地に人口を集中させる戦略もある程度必要だし、その意味でChatswoodingを必要としている部分もあると思います。ですが、それだけでは不十分でしょう。どうしても画一的になりがちな市街地開発だけではなく、西部の各地域が個性を活かすなかで、いかにして専門的職業を含む多様な雇用を創り出していけるかがポイントになるのでしょう。
例えば、Fairfieldみたいな、エスニック色満点ですごく刺激的な都市に、画一的なショッピングセンターやマンションが建ち並ぶのはつまらない。それよりも、移民の出身国・地域(この街の場合は中近東と東南アジア)と結びついたビジネスをもっと発展させられないものか?例えば、カブラマタはエスニックを売り物にした観光地として成功しつつあります。あの街は、Chatswoodingのまるで対極をいくようで、見ていて痛快です。 |
|
Re:
新語・チャッツウッディング tkay - 2004/08/03(Tue) 22:02
No.1873 |
|
|
|
 |
すみません、ご返事が遅くなりました。
>シドニー西部が今のままの状態でいればいいと言ってるのではありません。 シドニーも郊外の都市の活性化を…と言うのは、先出の「交通渋滞や大気汚染」問題の解消、雇用機会の確保などのメリットを考えれば非常に有意義なことだと思います。 ですから、僕もまなちゃんが仰るとおり、シドニー西部の各地域が何らかの方法で変わる必要があると思います。 問題はやはり、変わり方です。 各地域が今までそれぞれ独自の歴史を辿って変わってきたように、これからも独自の歴史で以って変わってほしい。その検討を重ねるプロセスにおいてChatswoodingが適切という結論になってのであれば、「Chatswoodをモデルにしました」って感じで受け入れられると思います。 それを州政府が細かな検証もせずに(…ですよね?)Chatswoodingを振りかざすのは、感心できません。
>カブラマタはエスニックを売り物にした観光地として成功しつつあります。 カブラマタ、良いですよねぇ。 以前にまなちゃんが教えてくれたフェアフィールドの公式ホームページにも書いてありましたけど、あそこに行けば立派なアジア観光になりますよね。食べものが美味しいし、歩いていて本当に楽しい! 正直言うと、カブラマタに関しては、あんまり有名にならずに、今のように、一見さんにはちょっととっつきにくそうなディープな感じの町であってほしいとも願っています、個人的には。趣向は変わりますが、地下鉄開通や六本木ヒルズができる以前の麻布十番みたいな位置付けかな…
まなちゃんが紹介してくれた数字を見て初めて気付きましたが、総人口400万と言われるシドニー地域って、既に就労人口が分散しているんですね。 「シティ20万」って、シドニー地域の20人に一人しかシティで働いていない。 人的、物的、情報的な資源の殆どが東京に集中にする日本とは対照的な感じがします。 |
|
Re:
新語・チャッツウッディング まなちゃん - 2004/08/05(Thu) 12:55
No.1879 |
|
|
|
 |
>州政府が細かな検証もせずに(…ですよね?)Chatswoodingを振りかざすのは、感心できません
考えてみれば、結構むちゃくちゃな話ですよね。日本でいえば、千葉県と埼玉県の各市に対して、「お前ら今のままじゃだめだ。横浜みたいな街になりなさい!」と言って、それに予算をつけるわけですから。
そもそも、「Chatswoodがそんなに魅力的な街か?」って気もしますねえ。個人的には、ノースショアの中では一番好きな街だし、便利だし雰囲気もおしゃれでいいんだけど、でも逆にいえば公園もないし、水辺の風景もない。ラグビーのチームもないし、そして何よりも歴史伝統に乏しい。だから、あの街を気に入ることはできても、熱愛することは難しいのかもしれない。
逆に、パラマタとかバンクスタウンとかフェアフィールドみたいな西の街は、ややガラ悪いけどそれなりに歴史伝統と文化的アイデンティティがあります。そのガラ悪さを嫌う人は大勢いるんだけど、逆に熱愛する人も大勢いる。もちろん、Chatswoodくらいリッチでトレンディな街になりたい気持ちもあるんだけど、でもその過程で、「わが町を熱愛できる何か」を失わないで欲しいとも思うのです。
>「シティ20万」って、シドニー地域の20人に一人しかシティで働いていない。人的、物的、情報的な資源の殆どが東京に集中にする日本とは対照的な感じがします。
それが分権主義的なオーストラリアの良さですよね。日本の首都圏でも、皆が満員電車に乗って都心に出ることなく、地元に働く場所と選択肢が十分あるといいんですけどね。ま、それでも横浜とか幕張新都心とか大宮とか、いろいろあるんだけど、やっぱりまだまだですよね。
|
|