獅子寮の異常な日常茶飯事


第1幕 (byメロンソーダ)




「ロンなんて大っ嫌い!!」



出た。
相当怒った時に出る切り札的な台詞を
談話室中に響き渡る声でハーマイオニーが叩きつけた。



これでもうロンはノックアウト。
どうにも反撃出来ず、そのまま。


いつも、毎日、年中。言わば日常茶飯事的に繰り広げられるこの光景は、
今や獅子寮の誇る名物イベントと化していて。

ある者は実況をし、ある者はどちらが勝つかを賭けの対象にし、
ある者は見物人にバタービールを振舞ったりしていた。

もちろんヒートアップしている本人達には
そんな様子は見えもしないし聞こえもしないのであるが。



ただの男女の口論(・・・この場合口喧嘩と言った方がいいような気もする)が
ここまで盛り上がるイベントになるにはそれなりの理由があってのことで。



こちらの真っ紅な顔をして口篭ってる少年ロナルド・ウィーズリーは
目の覚めるような見事な鮮やかさの赤毛の持ち主である。
しかもそれは到底手が届きそうに無いくらいの高い所についているし、

先ほど目の前の赤毛の少年に爆弾を落とした栗色の髪の少女である
ハーマイオニー・グレンジャーは、勤勉で努力家の秀才で何年も学年主席を守り通している。

もはやハリー・ポッターの親友という肩書きを省いてもかなり目立つ存在であるのだが
この二人、揃って監督生というお堅い肩書きまで持っていた。
本来ならば談話室での私的な迷惑行為を止めなきゃいけないはずの二人が
毎日毎日談話室中を巻き込む程の大音量で
全くかみ合わない口論を繰り返しているのだから、
新入生だって三日もあればすっかりこの二人を覚えてしまう程だった。
しかもその口論というものは、どうしようもなく他愛の無い事が原因で。

聞いている側にとっては迷惑極まりない話なのだが
ハーマイオニーの口撃に全く歯がたたないロンの表情での応戦は
どんなコメディを観るよりも数倍面白いのだった。



「君達もよく毎日毎日よく飽きずに喧嘩していられるよね〜。」

バタービールを配り終えたハリーは、
自分の為に残しておいた1杯に口をつけながら
肩で息をしている、1ラウンド終わったばかりの二人に苦笑しながら言った。

やっと少し周りの声が聞こえるようになったロンとハーマイオニーの二人は
ハリーのいつもの挨拶となっているその言葉に反応し、同じタイミングで顔を向ける。


「だってロンが・・・」
「だってハーマイオニーが・・・」


同時に言いかけ、一瞬顔を見合わせ口を噤む。


「「でもやっぱり・・・」」


まるでいちにのさんと合図をしたかのように今度は見事にハモっている。

二人はまたちらりと顔を見合わせた後
すぐにバツが悪そうに各自あさっての方向を見て、口を閉じたままもごもごと何やら文句を言っている。
そんな様子の二人を観ていた獅子寮の見物人達からクスクスと笑い声が漏れると、

「こんなに息が合ってるのは、僕としては羨ましいけど?」

観客を代表したようにハリーは思わずツッコミを入れ、笑いかける。

英雄の会心のツッコミに、見物していた獅子寮の生徒一同が一斉に吹き出し、
パアッと顔を派手に紅くしたハーマイオニーは
そのまま何も言わず女子寮の階段を駆け上がって行った。

いつもと全く同じ立ち去り方で退場するイベントの主役を見送った観客達は
今日も無事一日が終わったと満足そうな笑みを浮かべながら
元いたそれぞれの場所へと戻って行った。

このイベントのもう一人の主役であるロンは、
耳までも紅く染めたまま「はあ・・・」と大きな溜息をつきつつソファに座り込み、
ポケットにあったカラフルなビーンズの中から、茶色の一粒を見もしないで口に放り込んだ(すぐにそれを吐き出す事になったが)。





「HAPPY DAYS」のメロンソーダ様とのリレー小説です。
初めてのリレー小説でどきどきでしたがとても楽しい経験でした。
1幕、3幕5幕がメロンソーダ様、2幕4幕6幕を私が書きました。
(上記の数字からその各幕へ飛ぶことができます)
相手がアップしてから初めて見て、それにつなげるというやり方でしたが、そのわりにうまいこといったのではないかと思います。
それぞれの持ち味をお楽しみください。




目次に戻る  続きへ