ここで紹介する受動態の内容は、下記の通りです。(すべてこのファイルにあります)
[1]能動態と受動態 | [6]助動詞がある文の受動態 | ||
[2]否定文 | [7]疑問詞がSの文の受動態 | ||
[3]疑問文 | [8]動詞を含む熟語を使った文の受動態 | ||
[4]第4文型の受動態 | [9]byを使わない受動態 | ||
[5]第5文型の受動態 | [10]by以後を省略した受動態 |
さらに進んだ内容を学習したい方は、メルマガ『英語の文法と語法』のバックナンバーを81号から順次ごらんください。
受動態(受身)とは、動作をされる人や物が、S(主語)になる文のことをいいます。例えば、
I | love | you | . |
S | V | O | |
私はあなたを愛している。 |
という文は、動作主がSです。これを能動態(のうどうたい)といいます。動作をする人がSで、動作をされる人がOです。この動作をされる人(物)、つまりOがSになる文が、受動態(じゅどうたい)です。
You | are | loved | by | me | . |
S | Vbe | 過去分詞 | 前 | 能動体のS | |
あなたは私に(よって)愛されている。 |
上の文が、受動態です。受動態は原則として、
S | Vbe | p.p. | by | 動作主 |
能動態のO | be動詞 | 過去分詞 | 前置詞 | 能動態のS |
という型になります。
She bought the book. という能動態の文を、受動態の文に書き換えてみましょう。
能動態のO(目的語)the bookが、受動態ではS(主語)になります。the bookが文の最初に来ます。次にVbeです。Sによって is, am, are のどれを選ぶか決めなければいけません。the book の場合 is を選ぶのですが、能動態のVの bought が buy の過去形なので、is が 過去形の was になります。これは次の過去分詞(p.p.)で、いつのことなのかという時制を表すことができないからです。時を表すのは、Vbeの役目なんです。buy の過去形も過去分詞形も boughtなので、次は、bought です。その次は、動作主の前の前置詞 by です。前置詞の後ろは、目的格と決まっているので、she-her-her の3番目の her です。これで受動態は、
The book was bought by her. となります。
否定文について、見てみましょう。
He | didn't | write | the book | . |
S | 助動詞副詞 | V | O | |
彼はその本を書きませんでした。 |
この能動態を受動態に書き換えてみます。[能動態の否定文]→[能動態の肯定文]→[受動態の肯定文]→[受動態の否定文]という3段階を経て、書き換えてみます。
まず[能動態の肯定文]は、He wrote the book. となります。
[受動態の肯定文]は、Oの the book がSになります。次にSにあわせてVbeは、is 。いや、Vの wrote は write の過去形なので、Vbeは was を選びます。過去分詞は、written 。次に by 。最後に he の目的格 him を書いてピリオド。したがって、The book was written by him. となります。
最後に、[受動態の否定文]にします。受動態はあくまで、Vbeの文なんです。一般動詞の文ではありません。Vbeを使った文の否定文を作ります。そうです。Vbeの後ろに not をつけてやればいいんですね。
The book | wasn't | written | by | him | . |
S | Vbe+not | 過去分詞 | 前 | 能動体のS | |
その本は、彼によって書かれませんでした。 |
The book was not written by him. でも正解です。
疑問文は、こうです。
Does everyone | in his class | like | him | ? |
助動詞 S<----- | ---形容詞句 | V | O | |
クラスのみんなが、彼のことを好きなのですか。 |
この能動態を受動態に書き換えてみます。ここでも、[能動態の疑問文]→[能動態の平叙文]→[受動態の平叙文]→[受動態の疑問文]という3段階を経て、書き換えてみます。
まず[能動態の平叙文]は、Everyone in his class likes him. となります。
[受動態の平叙文]は、Oの him が、Sの he になります。次にSにあわせてVbeは、is 。過去分詞は、liked 。次に by 。最後に everyone in his class を書いてピリオド。
したがって、He is liked by everyone in his class. となります。
最後に、[受動態の疑問文]にします。受動態はあくまで、Vbeの文なんです。一般動詞の文ではありません。Vbeを使った文の疑問文を作ります。考え方は否定文と同じですね。VbeをSの前に持ってきて完成です。
Is | he | liked | by | everyone in his class | ? |
Vbe | S | 過去分詞 | 前 | 能動体のS | |
彼は、クラスのみんなに好かれていますか。 |
答え方もつけて、まとめておきます。
[能動態]Does everyone in his class like him? Yes, he or she does. / No, he or she doesn't.
[受動態]Is he liked by everyone in his class? Yes, he is. / No, he isn't.
態によって答え方が変わることに注意してください。能動態の“he or she”は、“everyone”を受けています。受動態の“he”は“he”を受けているんですよ。Vbeの疑問文は、Vbeを使って答えますよね。
everyone は「みんな」という意味のくせに、三人称単数扱いなんです。だから does を使って疑問文をつくったり、he や she で受けるんですね。
He | teaches | us | English | . |
S | V | IO(間接目的語) | DO(直接目的語) | |
彼は、私たちに英語を教えています。 |
第4文型の文には、O(目的語)が2つあります。能動態のOが、Sになるのが受動態なので、それぞれのOをSにして、2種類の受動態ができる可能性が出てきます。
DOの English を受動態のSにすると、Vbeは is です。teach-taught-taughtなので、過去分詞は taught。IOの us はそのまま taught の後ろに残して、by him。
English | is | taught | us | by him | . |
S | Vbe | 過去分詞 | 保留目的語 | 前+動作主 | |
英語は、彼によって私たちに教えられています。 |
ただし、このように間接目的語(IO)が、動詞の後ろに残されるばあいは、
English is taught to us by him.
という形になるのが普通です。to を前に置くのは、使われている動詞が、give, show, send など〔第4文型〕の例文11型の説明のところで挙げたものの場合です。
動詞が buy, make, sing, cook などの場合は、for を使うんでしたね。
My mother bought me this bike.
という能動態は、
(○)This bike was bought for me by my mother.
とします。for型の動詞の場合は、for をなしにすることはできないようです。
(×)This bike was bought me by my mother.
IOの us を受動態のSにすると、us は we に変わります。we のときのVbeは are です。過去分詞は taught。DOの English はそのまま taught の後ろに残して、by him。
We | are | taught | English | by him | . |
S | Vbe | 過去分詞 | 保留目的語 | 前+動作主 | |
私たちは、彼によって英語を教えられています。 |
「教えてもらっている」くらいの訳の方が、自然かもしれません。
Sとして選ばれなかった方のOは、保留目的語として、p.p.(過去分詞)となった他動詞(Oを必要とするV)の後ろに取り残されます。すべての第4文型が、受動態を2種類作ることができるわけではありませんが、2種類作れる文もあるのだと認識しておいてください。
補足します。能動態を第3文型に直したとき、人(IO)の前に for を置く型の動詞 make, sing, cook は、人(IO)を主語にした受動態は作れません。
(×)I was sung the song by her.
buy の場合は、IOを主語にする文もまれにあるそうです。
(○)This bike was bought for me by my mother.
(△)I was bought this bike by my mother.
第5文型のOは1つなので、受動態は1つしかありません。
Her parents | named | her | Jane | . |
S | V | O(目的語) | C(目的格補語) | |
彼女の両親は、彼女をジェーンと名づけた。 |
Oの her がSになるので、she。named が過去形なので、Sと考え合わせて、Vbeは was。name-named-named なので、p.p.は named。Jane を続けて、最後に by her parents。
She | was | named | Jane | by her parents | . |
S | Vbe | 過去分詞 | oC | 前+動作主 | |
彼女は、両親によってジェーンと名づけられた。 |
Jane はoC(目的格補語)なので、受動態のSになることはできません。あくまで能動態のO(目的語)がSになるのが、受動態なんです。
We | must | do | the work | . |
S | 助動詞 | V | O(目的語) | |
私たちは、その仕事をしなければならない。 |
この能動態には、must という助動詞が使われています。must がなければ、受動態は、
The work is done by us.となります。これに must を入れるとなると、Vbeの is の前に置きます。助動詞を使った文では、Vは原形にしなければならないので、is が be になります。
The work | must | be | done | by us | . |
S | 助動詞 | Vbe | p.p. | 前+動作主 | |
その仕事は、私たちによってなされなければならない。 |
これが受動態となります。否定文と疑問文の例も書いておきます。よく考えて、納得してください。
[能動態] | Kate won't make a cake for me. |
[受動態] | A cake won't be made for me by Kate. |
[能動態] | Can Bob answer the question? No, he can't. |
[受動態] | Can the question be answered by Bob? No, it can't. |
Who | broke | the window | ? |
S | V | O(目的語) | |
誰がその窓を割ったのですか。 |
この能動態の文は、疑問詞 who がSとなっています。この文は、疑問文でありながら、平叙文と同じ順序で文が出来上がっています。助動詞の did は登場していません。
助動詞は、Sより先に行きたがるんです(疑問文の場合)。しかし、疑問詞がSになっている場合、疑問詞が文頭に来るという方が優先順位が高いんです。did は who より先にいけません。「Sより前じゃなきゃ意味がない」と言って、すねていなくなってしまったんです。
[受動態の平叙文]をつくってみます。Oの the window がS。broke が過去なので、Vbeは was。break-broke-broken と変化するので、p.p.はbroken。who-whose-whom-whose と格変化するので、by whom。したがって、
The window was broken by whom. これが平叙文。次に、疑問文なので、Vbeを前に出して
Was the window broken by whom? 疑問詞は文の先頭にくるので、
Whom was the window broken by? これが正解でしょう。ところが、通常、
By whom | was | the window | broken | ? |
前+動作主 | Vbe | S | p.p. | |
その窓は、誰によって割られたのですか。(文語文=書き言葉) |
と[前置詞+動作主]ごと前にやるか、
Who | was | the window | broken | by | ? |
動作主 | Vbe | S | p.p. | 前 | |
その窓は、誰に割られたのですか。(口語文=話し言葉) |
とするようです。
答え方は、By Tom. や By my brother.とすればいいんです。
He | takes care of | the child | . |
S | V | O(目的語) | |
彼はその子供の面倒をみている。 |
上の文では、take care of 「〜の世話をする」「〜の面倒をみる」を、全体で1つのVのように考えて、
The child | is | taken care of | by him | . |
S | Vbe | p.p.+付属語 | 前+動作主 | |
その子供は、彼に面倒をみてもらっている。 |
が受動態となる。当たり前だと思う人は、それでいいけれど、「of by と前置詞が続くなんておかしい」と考える人もいるでしょう。それはある意味では、正しい感覚なんですが、「こんなこともあるんだ」と納得しておいてください。
この他に、
look at「〜を見る」, listen to「〜を聴く」, laugh at「〜を笑う」, run over「〜をひく(轢く)」, give up「〜をやめる」「〜をあきらめる」, wake up「〜を起こす」, put up with「〜を我慢する」「〜に耐える」
などもあります。副詞のものも含まれていますが、皆様には紛らわしいので、紹介しました。
動作主の前に、前置詞 by をおかずに、別の前置詞をおく場合があります。
A lot of snow | covers | Mt. Fuji | . |
S | V | O(目的語) | |
たくさんの雪が富士山をおおっている。 |
この文の受動態は、説明してきた書き換え原則に従うと、
Mt. Fuji is covered by a lot of snow.
となります。
でも、中学校の定期試験で、
=========================================================
[問題]4つの中から( )内に最もふさわしいものを選べ。
Mt. Fuji is covered ( ) a lot of snow.
1.of 2.for 3.with 4.at
=========================================================
と出ることがあります。
残念ながら by がありません。
実際の英文で、by や in が使われることがありますが、多くの場合3の with が使われます。この理由は使われている状況とVの cover との相性(あいしょう)です。cover は with と相性がいいのです。したがって、
Mt. Fuji | is | covered | with | a lot of snow | . |
S | Vbe | p.p. | 前置詞 | 動作主 | |
富士山は、たくさんの雪におおわれている。 |
という英文がよく見られます。過去分詞になるVによって、相性のいい前置詞が決まっていて、それを覚えてもらうしかありません。受動態になった形で紹介しておきます。
be covered with 〜 | 〜におおわれている |
be known to 〜 | 〜に知られている |
be surprised at 〜 | 〜に驚いている |
be satisfied with 〜 | 〜に満足している |
be interested in 〜 | 〜に興味がある |
be pleased with 〜 | 〜に喜んでいる |
be delighted with 〜 | 〜に喜んでいる |
be filled with 〜 | 〜でいっぱいである |
などがあります。
旺文社の『オーレックス英和辞典第2版』Planet Board 43 によると、「彼女はここのみんなに知られています」という意味の英文を作るアンケートの結果は次のようになっています。
(a) She is known to everyone here. 13%
(b) She is known by everyone here. 32%
(c) 両方 42%
(d) Everyone here knows her. 13%
(c)の「両方使う」と答えた人の中で、次のように使い分けする人がいます。
(A) (a)は「彼女の名がよく知られている」場合で、(b)は「個人的に知り合いである場合。
(B) 意味に違いはないが、(b)より(a)の方がかたい。
(C) (a)は悪いことで有名。
言葉は生き物で、編集人が生徒のときに習った表現や決まりも刻々と変化しています。常に新陳代謝させなければいけないようです。
動作主の前ではないのですが、受動態と前置詞の組み合わせで、
be made of 〜 | (材料が明らかなもの)でできている (材料がそのままの形でもちいられて)つくられている |
be made from 〜 | (原料が不明なもの)でできている (原料が形をかえているもの)からつくられている |
というのもあります。
This house is made of stone. | この家は石でできています。 |
Wine is made from grapes. | ワインはぶどうからつくられています。 |
受動態の文では、“by+動作主”などが省略される場合もよくあります。
動作主が明らかな場合や、by us, by you, by them, by people など、一般の人々が動作主となっている場合には、省略されます。
English and French | are | spoken | in Canada | . |
S | Vbe | p.p. | 副詞句 | |
カナダでは、英語とフランス語が話されています。 |
という[受動態]を[能動態]に書きかえるときは、注意が必要です。
Canada は、動作主ではないので、能動態のSにしてはいけません。
(×)Canada speaks English and French.
この場合、by them, by us, by you などの省略とみて、
They | speak English and French in Canada. |
We | |
You |
としなければいけません。
この文の話し手も聞き手も、カナダ人でなければ they を使い、話し手がカナダ人なら we を使い、聞き手がカナダ人なら you を使うことになります。もう一度、よく考えて読んでください。皆さんならわかるはずです。
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