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第161号 性格・特質を表す形容詞とともに使うto不定詞


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┛┛   英語の文法と語法    No.161    20100820   Chick Tack
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             ● 第161号 ●

………………
 Contents    性格・特質を表す形容詞とともに使うto不定詞
………………
       (1)Someone+is+形容詞+to不定詞

       (2)How+形容詞+of+someone

       (3)by and large


………………………………………………………………………………………………
(1)Someone+is+形容詞+to不定詞
………………………………………………

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    ・Someone+is+形容詞+to不定詞
    =It+is+形容詞+of someone+to不定詞
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 (a) You are kind to help me.
   「私を手伝ってくれるとは、あなたは親切です」
   「私を手伝ってくれて、ありがとう」

  前(第160)号(1)でも同じ並びになる講文を紹介した。前号の構文は、
  「to不定詞をする範囲においては形容詞である」と〔主語〕に対し判断を下
  していた。〔主語〕は「人間」でも「物」でもよかった。

  今号の(1)の構文は「to不定詞をするとは形容詞である」と〔to不定詞〕
  の行動を見て〔主語〕に評価を下すのである。この場合の〔主語〕は「人間」
  などの「生物」に限られる。

  ここで紹介する〔形容詞〕は、人間などの性格や特質を表す次のようなもの
  である。

     brave, cruel, mean, careless, rude, selfish, clever
     sensible, silly, stupid, unfair, intelligent, wicked
     polite, good, nice, wrong

 (b) It's kind of you to help me.
   「私を手伝ってくれるとは、あなたは親切です」

  (a)の文を〔形式主語〕it を使って書き換えると(b)になる。この場合、
  〔to不定詞〕の〔意味上の主語〕の前には for ではなく of が置かれる。
  (一部の形容詞では for を使った構文も見られる)

  この構文では、to help me という行為も kind だと言っているが、you も
  kind であるということを告げている。


 (c) You were careless to leave your camera in the train.
 (d) It was careless of you to leave your camera in the train.
   「電車の中にカメラを忘れてくるなんて、君もうかつだったね」
   (江川泰一郎著『英文法解説(改訂三版)』金子書房)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#newguide

   補足記事あり。
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/161-180/egu161.html#supple1

  〔to不定詞〕以降の行為は、careless と判断した〔根拠〕の部分。


 (e) You don't think it's selfish of me, Philip, do you?
   (“Of Human Bondage” by W. Somerset Maugham)
     http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer03.html#bondage
     「私をわがままだと思わないですか、フィリップ」
     「私はわがままではないと思うでしょ、フィリップ」

  it...の構文では、〔to不定詞〕が省略される場合もある。


 (f) It was so good of you to come.
 (“Cambridge Advanced Learner's Dictionary 2nd edition”)
   「来てくれたとは、あなたはとても親切でした」
   「来てくれてどうもありがとう」

  “BBI Combinatory Dictionary of English”には (f)の so が抜けただけ
  の例文があった。http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#bbi

  good, nice は「親切な」「人柄が良い」という意味の使い方限定で、“of
  +人”になる。

  逆にこの使い方の時、good, nice では、“of+人”の省略はできない。省
  略すると他の意味にとられる恐れがあるためか。これらの形容詞ではないと
  きには、“of+人”を省略することもある。

 (g) It was stupid (of them) to leave their bicycles outside.
  (“A Practical English Grammar”A. J. Thomson & A. V. Martinet)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english02.html#peg
   「彼らは自転車を外に放っぽり出して置くとは、ばかだった」

  〔行為〕の愚かさを述べるのが主眼か。their があるため、of them が明ら
  かだとも考えられる。


  今回紹介している〔to不定詞〕は、“be+形容詞”が述べている評価に先行
  している行為である。〔未来指向〕とは言い難い。次号の予定の〔感情の原
  因〕を表す〔to不定詞〕のところでも述べるつもりだが、「〔to不定詞〕の
  行為は実際にあったものだが、その行為に『向き合った(to)』結果〔形容詞〕
  だと評価した」のだ。


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 (h) You were a fool to agree.
 (i) You were foolish to agree.
  (“Practical English Usage 3rd Edition”Michael Swan)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english02.html#peu
    「同意するとは、あなたは愚か者だった」(h)
    「同意するなんて、あなたは愚かだった」(i)

  〔形容詞〕の代わりに〔名詞〕を置くことができる。ただし、ここに置かれ
  る〔名詞〕は語源が同じ形容詞を持つものや、形容詞のような意味を持つも
  のに限られる。

  ページ下部に2016年のセンター試験の問題を追加した
………………………………………………………………………………………………
(2)How 形容詞 of someone
……………………………………

 (a) He is foolish to make a fuss.
   「騒ぎ立てるとは彼もばかだ」

  (a)の文を〔感嘆文〕にすると、

 (b) How foolish he is to make a fuss.[!]
  (安藤貞雄著『現代英文法講義』開拓社)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#lmeg

  となる。

  (1)でやったように(a)を形式主語を用いて表すと、

 (c) It is foolish of him to make a fuss.

  こちらも〔感嘆文〕にすると、

 (d) How foolish it is of him to make a fuss.[!]
  (安藤貞雄著『現代英文法講義』開拓社)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#lmeg

  出てきても、意味がとれるようにはしておこう。

  it is の部分が省略されることも多いので、気をつけよう。

 (e) How nice of you to like me so much after we have known each
  other such a comparatively short time.
  (“The Importance of Being Earnest” by Oscar Wilde)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer02.html#earnest
    「知り合ってからこんなに短い時間しか経ってないのに、こんなに私を
     気に入ってくれて、どうもありがとう」
     ←「こんなに比較的短い時間お互いにずっと知り合いである後で、
       そんなにたくさん私を気に入ってくれるとは、あなたは何と良い
       人なんだ」

  How nice it is of you... の it is が省略されている。

  さらに不定詞以降も省略されることがある。

 (f) How silly of me.(アメリカ英語の書き言葉で用いられた例)
  (“Collins コウビルド英英辞典 改訂第5版”トムソンコーポレーション)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html#cobuild
   「私はなんて愚かなんだ」


………………………………………………………………………………………………
(3)by and large
…………………………

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    ・by and large「概して」「一般的に」「全般的に見て」
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 (a) By and large the government does a good job.
  (“CAMBRIDGE GRAMMAR OF ENGLISH”Ronald Carter & Michael McCarthy)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english02.html#cge
    「全般的に見て、政府はよくやっている」

  “by and large”で、“in general”や“on the whole”“for the most 
  part”の意味になる。“generally speaking”“as a rule”などとも近い。

  and で結ばれているので、by と large は同じ品詞と考えられる。両方とも
  〔副詞〕ではないかと思う。「だいたい(の見方)で」「大きく(見て)」
  がくっついたものではないか。こう思ったが、実際は違った。

  船舶の用語で large は「追い風が吹いて(いる)」という意味を表すそう
  だ。by は「追い風ではない(状態)」を表すのだそうだ。by the wind
  という船舶用語があり、これは「できるだけ風上の方向につめて走る」とい
  う意味なのだとか。帆船は風向きにまっすぐに逆行して進むことはできない
  が、角度を変えてジグザクに進めば、風上方向にも進める。また、横方向は
  もっともスピードが出るという。by and large で、「順風であったり、順
  風でなかったり」→「順風でも順風でなくても」という感じで「だいたいは」
  「大部分は」ということで使われるようになったようだ。

  このように by and large は17世紀に船舶用語として出てきて、18世紀
  には波線に囲まれた部分の意味で一般にも適用されたようだ。


 (b) By and large, I enjoyed my time at school.
  (“Oxford ADVANCED LEARNER'S Dictionary 7th edition”)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html#oald
   「概して、学生時代は楽しかった」

  (a)(b)は文頭に来る例。


 (c) Charities, by and large, do not pay tax.
  (“LONGMAN Dictionary of Contemporary English 4th edition”)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html#ldoce
   「チャリティーは、一般的に税金は払わない」

  by and large が〔主語〕と〔述語〕の間に割り込んでいる。


………………………………………………………………………………………………
 参考文献  http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html
……………… http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html
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● あとがき

 残暑お見舞い申し上げます。

 こんなに暑いのに、体重は減るどころか増えています。真夏の怪奇現象です。


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                随時
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        (c) Matsumiya Institute of Thinking 2010
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“It's 形容詞 of 人 to不定詞”の成り立ち

酒井典久著『英語のしくみが見える英文法』文芸社では、この構文の起源を、
1500年代までの「〜によってされる」の of(by が一般化するまでの用法)であると推定している。

そして、1600年代にみられた
It was a careless part of you to leave your camera in the train.
の英文を示し、
「電車の中にカメラを忘れてくることは、君のそそっかしい一面だね」
と考えればと推奨している。

a と part などの名詞は簡便化のため省略されて、今の構文が成立した、とみている。

(×)It's careful of someone to do something

He was careful to distinguish between them. (Random House Webster's Unabridged Dictionary 2nd)
「彼は注意深く2つを区別した」 ←「2つをきちんと見分けるとは、彼は注意深かった」

本文記事の例文(d)のように careless は、It's careless of you to do something. の構文が可能である。

しかし、careful では It〜to...の構文は使えない。

人(he)は careful とできるが、行為(to distinguish between them)は careful とはできないのだと推察される。

センター試験に挑戦

問題

平成28(2016)年1月16日実施大学入試センター試験 英語
第2問
A問10.A・Bの(  )内にふさわしい組み合わせをを1〜4の中から選べ。

( A ) so considerate ( B ) him to come and see his grandmother in the hospital every day.

 1.A:He is B:for  2.A:He is B:of
 3.A:It is B:for  4.A:It is B:of

解答と解説

想定される日本語訳例
毎日病院にいる祖母に会いに来るとは、彼はとても思いやりのある子だ。

解説
今号の(1)で説明してある“It is 形容詞 of someone to不定詞”を使うのがふさわしい。He is so considerate to come and see his grandmother in the hospital every day. という英文もできるが、問題文の並びとは異なってしまう。“It is 形容詞 for him to come...”と間違えるのを期待しての出題だが、形容詞の部分が人の性質・性格を表す場合、for ではなくofが用いられる。

解答
したがって解答はIt isofとなる。

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