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第193号 名詞の複数形−4


=━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ English Grammar and Usage ━━━
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┛┛   英語の文法と語法    No.193    20120523   Chick Tack
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             ● 第193号 ●

………………
 Contents         名詞の複数形−4
………………
       (1)-ouse → -ice

       (2)a → e

       (3)only too...


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(1)-ouse → -ice
…………………………

  -ouse が -ice に替わり〔複数形〕を作るものがある。

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    louse[laUs]「シラミ」 →(複数形)lice[laIs]
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 (a) But the most hateful sight of all, was the lice crawling on their 
  clothes.(“Gulliver's Travels into several remote nations of the   
  world”by Jonathan Swift)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer03.html#gulliver
   「しかし、全てのうちで最もおぞましい光景は、彼らの服を這い回るシラ
    ミだった」

  louse[laUs]「シラミ」の〔複数形〕は lice[laIs]。

  中学生のころ、rice「ご飯」「米」の発音が下手だと、レストランで lice 
  が出てくると脅された。実際には、そんなものは出てこないに決まっている
  が……。

  文中では〔複数形〕で登場する例が多い。1匹見つかれば、その周囲に何十
  匹、場合によっては何百匹いるはずである。

 (b) An adult louse is rarely seen.(イギリス書き言葉)
  (“Collins コウビルド英英辞典 改訂第5版”トムソンコーポレーション)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html#cobuild
   「大人のシラミは、めったに見られない」
   「シラミの成虫は、めったに見つからない」

 (c) The female louse lives for about a month and lays 7-10 eggs each 
  day in tiny sacs which can be seen as small bead-like structures  
  stuck to the hair where it joins the scalp.(イギリス書き言葉)
  (“Collins コウビルド英英辞典 改訂第5版”トムソンコーポレーション)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html#cobuild
   「雌のシラミは約1か月間生きる。頭皮付近の髪の毛に突き刺さるように
    吸着する小さなビーズのように見える小さな嚢(のう)に入った卵を、
    毎日7個から10個産む」

  (b)(c)のように「シラミというものは」や定義のような文中で〔単数形〕が
  見られる。


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    mouse[maUs]「ハツカネズミ」 
                  →(複数形)mice[maIs]
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 (d) When the cat's away, the mice will play. 
    「猫が離れているときに、ネズミたちは遊ぶだろう[遊ぼうとする]」
   →「うるさい人がいない時に羽を伸ばす」
    「鬼の居ぬ間に洗濯」
    http://wdtem.obunko.com/w/miceplay.html

  mouse の〔複数形〕は mice.

 (e) What's the plural of that small, rolling pointing device invented
  by Douglas Engelbart in 1964?  We prefer“mouses.” “Mice”is just
  too suggestive of furry little creatures.  But both terms are    
  common, so take your pick.(“mouses”vs“mice”by Mark Israel)
  http://alt-usage-english.org/excerpts/fxmouses.html
  「1964年にダグラス・エンゲルバートによって発明されたあの小さな転がる
   点指示装置の複数形は何でしょう? “mouses”の方を薦めます。
   “mice”は毛に覆われた小さな生き物を指していると誤解されるかも知れ
   ません。しかし、どちらの用語も一般に使われます。ですから、好きな方
   を使ってください」

  コンピューターの「マウス」の〔複数形〕は、mouses[ma'UsIz]のみ
  としている辞書がある。

  発明年は1961年とする説がある。


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  補足記事あり。
  http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/181-200/egu193.html#supple1


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(2)a → e
…………………

  語中の母音字 a が e に替わり〔複数形〕になるものがある。


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     man[maen]「男」「人」→(複数形)men[men]
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  man は元来「人間」という意味であった。
                   _           _
  男女を区別するときは、wer「男」、wif「女」が用いられた。wif はやがて
  wife「妻」として利用されていく。
                   _
  waep(n)man「男」(aeは1文字)と wifman「女」も使われた。「女」の方
  は woman に変化していく。

  man は「男」だけを指すことにも使われ、やがて「大人の男性」としての利
  用が増えた。普通 boy とは区別する。

 (a) Man hopes for peace, but prepares for war.
  (“Random House Webster's Unabridged Dictionary 2nd”)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#rhwud
    「人は平和を希求する。しかし、戦争の準備をしている」

  多分、4世紀頃のローマ帝国の軍事学者フラウィウス・ウェゲティウス・レ
  ナトゥス(Flavius Vegetius Renatus)
  「汝、平和を欲するなら、戦い(戦争)に備えよ」『軍事論』(DE RE   
  MILITARI)という言葉を意識した英文。

  man を「人」「人間」「人類」の意味で使っている。もちろん「人」で〔可
  算名詞〕となるが、「人類」や「人というもの」という意味で使う場合〔不
  可算名詞〕として扱い〔無冠詞〕になる。(a)はその例。


 (b) Men only know unhappiness.  We're always fighting fear.
  「男には、不幸だけがあるんです。いつも恐怖と、戦ってばかりいるのです」
  (NHK−Eテレ『Jブンガク』の太宰治『ヴィヨンの妻』の原文と英訳文
   translated into English by Robert Campbell)
   http://www.nhk.or.jp/jbungaku/#/archive

  こちらの men は「男」という意味で〔複数形〕になっている。「男」「男
  性」という意味でも〔単数形〕を〔集合的〕に〔無冠詞〕で使うことがある。


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     woman[wU'm∂n]「女」
               →(複数形)women[wI'mIn]
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 (c) We need more women in government.
  (“Macmillan English Dictionary: For Advanced Learners of American
    English”Palgrave Macmillan)
   「私たちは、政府の中にもっと多くの女性を必要とする」
   「(我々の)政府には、もっと多くの女性が必要だ」
                _                 _
  〔古英語〕期間中 woman は wifmann とつづられた。〔複数形〕は wifmenn
  であった。これについては man の補足記事を参照されたい。
  http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/181-200/egu193.html#supple2

  隣の音に影響されてその音と同じ音になってしまう現象を〔同化〕という。
  wifmann の f が後ろの m に影響されて m になる。wimmann。〔複数形〕 
  wifmenn も wimmenn となった。これが〔古英語〕期中に起こった。

  〔中英語〕期中に〔単数形〕の wimmann は w の影響で i の部分の発音が
  口を丸めたままで行われ[U]の音になる。この[U]はフランス語の影響
  で o とつづられる。wommann の重複している文字が削られ woman ができあ
  がる。

  〔複数形〕wimmenn の i の発音は[I]のまま保たれた。しかし、つづり
  だけは〔単数形〕と揃(そろ)えられ wommenn → woman となった。o のつ
  づりで[I]と発音するのは、英語ではこの部分だけのようである。
  http://ja.wikipedia.org/wiki/Ghoti


………………………………………………………………………………………………
(3)only too...
………………………

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    ・only too... (1) 非常に……、とても……
           (2) 残念ながら……、少なくとも……
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 (a) Mark was only too happy to agree with her.
  (“LONGMAN Dictionary of Contemporary English 4th edition”)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html#ldoce
   「マークは、彼女と同意できて幸せすぎただけだった」
   →「マークは、彼女と意見が合ってとてもうれしかった」

  “only too...”=“very...”となることがある。

  glad, happy, pleased などの前で使われることが多い。

  (a)は「単に幸せすぎて彼女に同意できなかった」と意味を取ってはならな
  い。


 (b) ...her father was only too pleased to let her provide a
  nice outfit for the child.  (“Heidi”by Johanna Spyri)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer02.html#heidi
   「彼女の父親は、その子供のために彼女に素敵な衣装一揃えを供給させる
    ことができて、あまりにも喜んだだけだった」
   →「彼女の父親はとても喜んで、その子供のための素敵な衣装一揃えを彼
     女に準備させた」

  too には「程度が行き過ぎている」という負のイメージがあるが、only too
  となると正の印象を受ける。


 (c) Children can be difficult, as we know only too well.
  (“Oxford ADVANCED LEARNER'S Dictionary 8th edition”)
  (“Oxford ADVANCED AMERICAN Dictionary: For Learners of English)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html#oald
   「私たちが十分過ぎるくらいよく知っている通り、子供たちは難しくなる
    可能性がある」
   →「子供というのは難しい。それはよく分かっているのだが」
    「子供というのは難しい。残念ながらよく分かっている」

  LDOCE や OALD では(1)(2)は分けられておらず very で統一されている。
  「残念ながら……」となるのは、日本語の問題も多分にあるのだろう。

 (d) It was only too true.
  (Merriam-Webster's Collegiate(R) Dictionary)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#mwcd
   「それは、本当過ぎる状態そのものだった」
   →「それは残念ながら事実だった」

  “only too true”で「残念ながら事実」「遺憾ながら事実」という使い方
  がよくなされる。


………………………………………………………………………………………………
 参考文献  http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html
……………… http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html
       http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english02.html


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● あとがき

 田植えと茶刈りが終わった。( ´o`)п< <(ホ)

 田植えは16日。とても暑かった。軽い(?)脱水症状になり、午後と翌日は寝
 込んでいた。 (((。o゜))))((((゜o。)))


・・・‥‥……──────────────────────……‥‥・・・
        (c) Matsumiya Institute of Thinking 2012
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補足記事

● -ouse → -ice

☆ウムラウト

louse は古英語期の形がlus。その複数形がlys
mouse は古英語期の形がmus。その複数形がmys
どちらも、前(第192)回の補足記事ウムラウト変化の例となる。

古英語に先行するゲルマン祖語において、語尾部分を[u:s]と発音していた lus と mus は〔複数形〕になるとき、さらに語尾に[iz]をつけて発音していた。[u:siz]となる。語尾の[i]の発音をしやすくするため、[u:]の舌の位置が[i]と同じ前方に出て準備をする。[u:]の舌の位置を前に持ってくると[i:]の音になる。[i:siz]ができあがる。

[i:siz]の語尾の[iz]がやがて消失し、[i:s]が複数形のとして残る。[i:]の部分は y の長音でも表すことができる。lysmysが誕生することになる。

中英語期に、lusは lous または luse、やがて louse に変わり、その複数形lysはlise または lice に変わる。u の長音のつづりが ou になったのはフランス語の影響で14世紀に置き換わる。
musの方は mous に変化し、その複数形mysは mis になる。

☆大母音推移

14世紀後半から18世紀初めにかけて大母音推移と呼ばれる母音の発音変化が起こる。母音発声時の舌の位置を一段か二段上げるのだが、一番上にある[u:]や[i:]は上げられない。そのままでは困るので、それぞれ二重母音化した。

[u:]は[∂u]に、[i:]は[∂I]に変化する。18世紀に[∂u]は[au]に、[∂I]は[aI]に変わることになる。

☆黙字 e

lice の e は発音されない黙字(もくじ)である。この e はもう一つの母音 i二重母音であることを示してくれている。[I]と一重で発音するのではなく[aI]と二重に発音するということである。

中英語期の mous, mis が現在 mouse, mice となっているのは、最期に e をつけることによって ou, i が二重母音[au][aI]であることを示しているためである。おそらく、印刷がなされるようになってからついたものだろう。

補足だが、黙字 e は、“silent e”や“magic e”と呼ばれている。

● man → men

☆ウムラウト

mann の複数形は、manniz(英語になる前なのでつづりはない。便宜上記した) と[iz]の発音が加わるものであった。これは、これまでのウムラウト変化の話しの通りである。
一番下の奥の位置にあった a の[a]舌が i と同じ位置にある前に移動し[æ]になる。mænn。
さらに n の前では[æ]は[e]となるので、menn となる。n が一つ削られ men が誕生する。

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