Chick Tack 英語5文型  >  メール・マガジン『英語の文法と語法』  >  201号〜220号目次  >  203

第203号 冠詞−2

=━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ English Grammar and Usage ━━━
┛┛
┛┛   英語の文法と語法    No.203    20130430   Chick Tack
┛┛  …………………………  ……………  ………………  ……………
┛┛      http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/index.html
┛┛┛
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


             ● 第203号 ●

………………
 Contents          冠詞−2
………………
       (1)不定冠詞 a, an の成立

       (2)職業を表す a, an

       (3)無冠詞の官職・役職

       (4)have a good command of something


………………………………………………………………………………………………
(1)不定冠詞 a, an の成立
……………………………………

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
                _
    ・不定冠詞の変遷・・・ an → an → a
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  〔古英語期〕の〔基数詞〕は、次のような形であった。
       _         _.       _      _
   1・・・an   2・・・twegen(男性), tu(中性), twa(女性)
     (英語の名詞には、男性名詞・中性名詞・女性名詞の区別があった)
     (それぞれの性の名詞に対応した数詞が用いられた)
         _       _
   3・・・thrie(男性), threo(中・女性)
      (th は本来 p の縦棒が上にも突き出た形に似ている1文字)
        _          _
   4・・・feower   5・・・fif   6・・・six

   7・・・seofon   8・・・eahta  9・・・nigon
        _
   10・・・tien    11・・・endleofan  12・・・twelf
         _ _          _  .      _    _  .
   13・・・threotiene   20・・・twentig  21・・・an and twentig
          _  .          _
   100・・・hundteontig    1000・・・thusend
            _
  このうち、1を表す an[α:n アーン]の弱形が an であった。これが
  〔単数名詞〕の〔不定冠詞〕として使われ始めた。後に〔子音〕で始まる語
  の前では n が脱落し、a となった。

 (a) And Judas Iscariot, which also betrayed him: and they went
  into an house.
   And the multitude cometh together again, so that they could
     not so much as eat bread.(cometh は comes のこと)
  (“The Bible” King James version, Book 41: Mark 3:19;20)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer02.html#bible
   「それに、イスカリオテのユダ。このユダがイエスを裏切ったのである。
    イエスが家に帰られると、群衆がまた集まって来て、一同は食事をする
    暇もないほどであった。」
  (『聖書新共同訳』マルコによる福音書3章19・20節)

  現在でも、hour など、発音されない〔子音〕の前では an hour と an を用
  いるが、発音される h の前でも an が使われる例が、20世紀まであった。

  (a)の house の前が an になっている。


  〔数詞〕の1の方は、〔中英語期〕に on, oon, en などと共に one が現れ
  現在に至っている。


      ┛ ┛  ┛ ┛  ┛ ┛  ┛ ┛  ┛ ┛

  〔不定冠詞〕an, a は、もともと one と同語源であるから〔単数名詞〕の
  前方に置かれる。特別な場合を除き〔複数名詞〕の前方には置かれない。

 (b) A dog is an animal.
 (c) Dogs are animals.
  (“English Grammar in Use 3rd edition”Raymond Murphy)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english02.html#egu
    「犬は動物です」

  (b)の a dog は、「どんな犬を一匹[頭]連れて来ても」という意味を持っ
  ている。

  an animal は〔主語〕の〔数〕に対応して〔不定冠詞〕が付いている。
  animal は〔母音〕で始まっているので、an を選択している。


 (d)(×) Sometimes it is difficult to live a honest life.
   (○) Sometimes it is difficult to live an honest life.
  (“LONGMAN Dictionary of Common Errors Second Edition”)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#dce
    「時々、正直な暮らしを生きることは難しい」
    →「正直に生きることが困難な時もある」

  〔動詞〕live とその〔目的語〕life は、同語源の語で〔同族〕と言う。本
  来〔自動詞〕であるべき〔動詞〕が〔目的語〕をとる特殊な例である。逐語
  訳すると、くどくなる。

  honest の h は発音せず、実質 o- で始まっているので、an を採用してい
  る。


 (e) Then he showed Huckleberry how to make an H and an F, and the   
  oath was complete.
  (“The Adventures of Tom Sawyer, Complete”by Mark Twain)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer02.html#sawyer
   「それから彼は、HとFのつくり方をハックルベリーに教え、誓いは成立
    した」

  Hは[eIt∫ エイチ]、Fは[ef エフ]と〔母音〕の発音で始まって
  いる。そのため a ではなく an が用いられている。


………………………………………………………………………………………………
(2)職業を表す a, an
………………………………

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    ・職業を表す a, an・・・a teacher, an editor, an MP
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 (a) She's a very talented musician.
  (Merriam-Webster's English Learner's Online Dictionary)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/onlineeed.html#mwl
   「彼女は、とても豊かな才能を持つ音楽家である」

  一人の人物の職業を表すとき、〔不定冠詞〕が使われる。中学1年生の比較
  的早い時期に紹介する用法である。

  安藤貞雄著『現代英文法講義』(開拓社)では、
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#lmeg
  「ある種の成員を表す(日本語では、通例、訳されない)」と記されていて、
  職業・宗教徒の他、「独身」という例にも a が使われていた。

 (b) He was a bachelor for years, then finally married.
  (HEINLE'S Newbury House Dictionary of American English)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/onlineeed.html#hnhdae
   「彼は何年間も独身だった。その後、とうとう結婚した」

 (c) Greg Selinger is not an economist.
   http://www.westmanjournal.com/
   「グレッグ・セリンジャーは経済学者ではない」

  economist の発音が〔母音〕で始まっているので、〔不定冠詞〕は an。

 (d) In Britain, an MP is a person who has been elected to represent  
  the people from a particular area in the House of Commons.
  (“Collins コウビルド英英辞典 改訂第5版”トムソンコーポレーション)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html#cobuild
   「イギリスにおいて、MPとは、下院用の特定の地域の人々を代表するた
    めに選ばれた人です」
   「イギリスでMPと言えば、ある特定の地域の人々を代表するために選ば
    れた下院議員です」

  MPは、合衆国では「憲兵」である。

  MPは[empi:]と〔母音〕始まりなので、an を使用。

 (e) My grandmother was a devout Christian.
   「私の祖母は敬虔なキリスト教徒だった」

  何かの宗教徒であるというときにも a が使われる。


………………………………………………………………………………………………
(3)無冠詞の官職・役職
…………………………………

  中学生には特に教えていないが、一人しかいない官職や役職が補語として使
  われている場合、〔無冠詞〕になることがある。

 (a) He is chairperson.「彼は議長です」

  chairperson は〔主格補語〕。chairperson が〔形容詞〕のような働きをし
  ているからだと説明される。

  もちろん、 He is a chairperson. という英語も成立する。

 (b) They elected him chairperson.「彼らは彼を議長に選出した」

  chairperson は〔目的格補語〕。

 (c) They elected him the chairperson.「彼らは彼をその座長に選んだ」
   (安井稔著『英文法総覧(改訂版)』開拓社)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#betterguide

  特定のものだと示したいときには〔定冠詞〕the が使われる。話題に上った
  「あの座長・議長」と言いたいのだろう。


      ┛ ┛  ┛ ┛  ┛ ┛  ┛ ┛  ┛ ┛

 (d) He is a teacher of our school.「彼は私たちの学校の先生です」
 (e) He is the principal of our school.「彼は私たちの学校の校長です」

  of our school や〔関係詞節〕などによって〔限定修飾〕される〔名詞〕に
  は the が付くことが多いが、それは〔修飾〕される〔名詞〕(今回は「人」)
  が〔特定〕のものであることを示すためである。

  (e)のように、「校長」というのは、その学校に一人しかいないので the を
  付けることができる。

  (d)では、the が付く状況もあるかもしれないが、付いていない例文では、
  先生がたくさんいる中の一人であることを示せる。


………………………………………………………………………………………………
(4)have a good command of something
……………………………………………………

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    ・have a good command of...「……が自由に使える」
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 (a) He has a good command of English.
  (“Longman Active Study Dictionary 5th edition”)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#lasd
   「彼は英語が自由に使える」←「彼は英語の良い使用能力を持っている」

  command には〔動詞〕と〔名詞〕の使い方がある。

  〔動詞〕は「命令する」が基本となる意味。〔名詞〕は「命令」。ここから
  「指揮」や「支配」という意味も生じる。さらに「使いこなす能力」にまで
  拡張したのが、例文で使われている意味。

  have a good command of... で「……の良い使用能力を持っている」となり、
  「……を自由に使いこなす」という意味になれる。

  「……」の部分には、「言語」がくることが多い。

  good の代わりに excellent が使われることもある。また、poor に代える
  と「能力が乏しい」ことになる。

 (b) She has an excellent command of Russian.
 (“Macmillan English Dictionary: For Advanced Learners of American 
   English”Palgrave Macmillan)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#meda
   「彼女はロシア語を自由自在に使える」
   ←「彼女はロシア語の優秀な能力を持っている」

  good よりも excellent の方が上か。

  English, Russian ではなく the English language や the Russian    
  language とする例も多い。

 (c) I possess only a limited command of German.
   「ドイツ語はわずかしか使えません」
  (研究社『新編英和活用大辞典初版』編集代表市川繁治郎)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#kdec
   ←「私は、ドイツ語の限られた使用能力しか所有していません」

  have の代わりに possess が使われている例。a good の代わりに only a
  limited となっている。

  この例文採用書では、他に

   ・have a poor command of English「貧弱な英語の能力しか持っていない」
   ・have a ready command of several foreign languages
            「数か国語をいつでも(すばやく)使える能力がある」
   ・a perfect command of German「完璧なドイツ語の力」

  などの記載もあった。


 (d) He was a pitcher with good command of his curveball.
  (Merriam-Webster's Collegiate(R) Dictionary 11th edition)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#mwcd
   「彼は上手にカーブを操るピッチャーだった」

  with の〔目的語〕になり、〔形容詞句〕を作っている。

  of の〔目的語〕が「言語」ではない例。


      ┛ ┛  ┛ ┛  ┛ ┛  ┛ ┛  ┛ ┛

 (e) He gave me all the money at his command.
   「彼は自由になるお金を全部私にくれた」
  (学研『スーパーアンカー英和辞典』山岸勝榮;児玉徳美;貝瀬千章)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#lej
   ←「彼は、彼の支配の中にある全てのお金を私に与えた」

  at one's command で「〜の自由になる……」「〜の自由になる状態で……」
  という意味になる。

 (f) I'm at your command ― what would you like me to do?
  (“Oxford IDIOMS Dictionary for learners of English”)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#oidle
    「私はあなたの支配下です。あなたは私に何をしてもらいたいですか」
    →「何でも自由におっしゃってください。何をして差し上げましょう」

  「何でも言う通りにする」というときの表現。


………………………………………………………………………………………………
 参考文献  http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html
……………… http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html
       http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english02.html


────────────────────────────────────
□このメールマガジンは、以下のメルマガ・スタンドから配信されています。
 ・まぐまぐ!  :http://www.mag2.com/
 ・めろんぱん  :http://www.melonpan.net
 ・メルマ!   :http://melma.com/
 当メールマガジンは、無料でお読みいただけます。

□このメールマガジンの登録・解除は、下記のページからお願いします。
 ・まぐまぐ!  :http://www.mag2.com/m/0000190027.html
 ・めろんぱん  :http://www.melonpan.net/mag.php?009453
 ・メルマ!   :http://www.melma.com/backnumber_175104/

□バックナンバーは、下記のページのリンクからご覧ください。
 http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/index.html

∈≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡∋
 <(` )    Chick Tack
   (   )   E-Mail Address : mit_desde1994@ hotmail.com
    / |    魔笛を観に行こう: http://tatsuku.web.fc2.com/
  ∋  ∈   Chick Tack 英語5文型: http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/
 愛知哲仁 の ギリシア哲学への招待状:http://philos.fc2web.com/
∈≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡∋
メール・アドレスは、コピーして、あて先欄に貼り付けてから、@ と hotmail
の間の半角スペースを削除してください。面倒かけます。

 ┛ Chick Tack のおすすめ英語教材・無料サービスなどの紹介ページ ┛
 ┛ http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/recommend.html    ┛
 ┛                                ┛
      ┛ ┛  ┛ ┛  ┛ ┛  ┛ ┛  ┛ ┛

● あとがき

 できれば、等幅フォントでご覧いただきたい。

 本日午後、頭部MRI検査を受けてくる。


      ┛ ┛  ┛ ┛  ┛ ┛  ┛ ┛  ┛ ┛

 ☆ブログ 丹生川郷下村通信
 http://sobey.at.webry.info/


・・・‥‥……──────────────────────……‥‥・・・
        (c) Matsumiya Institute of Thinking 2013
・・・‥‥……──────────────────────……‥‥・・・
      






前回 第202号 に戻る    この号の目次へ    次回 第204号 に進む

Chick Tack 英語5文型  >  メールマガジン『英語の文法と語法』  >  201号〜220号目次  >  203