=━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ English Grammar and Usage ━━━ ┛┛ ┛┛ 英語の文法と語法 No.214 20140418 Chick Tack ┛┛ ………………………… …………… ……………… …………… ┛┛ http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/index.html ┛┛┛ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ● 第214号 ● ……………… Contents 冠詞−12 ……………… (1)総称の the (2)at a particular speed (3)接頭辞 bi- (4)so far ……………………………………………………………………………………………… (1)総称の the ……………………… 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ・“the 普通名詞”で、名詞の表す種類・種族一般を指す 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 (a) The tiger has no mane. (b) Tigers have no mane. (c) A tiger has no mane. (“A COMMUNICATIVE GRAMMAR OF ENGLISH 3rd”Geoffrey Leech and Jan Svartvik)http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#leech 「トラには、たてがみは全くない」 〔定冠詞〕は、ある特定の物や人だけを指すのではない。“the 名詞単数形” で、その名詞の種類や種族全般を指すことがある。the の〔総称〕用法と呼 ばれるものだ。 (a)の the tiger は「トラ」一般を〔総称〕している。lion などの他の動 物と区別していることを明らかにするために the が用いられている。 the tiger は「トラ」を総括して述べられており、個々のトラに目をやる意 識は薄い。学術論文などによく見られる。 (b)は、第212号(1)で紹介した。日常ではよく使われる。〔複数形〕のため 「トラ」のすべてを指していると考えられる。 (c)は、第203号(1)の例文(b)で紹介した。この〔不定冠詞〕a は any の意 味を持つ用法で、「サンプルとしてトラを1頭連れて来ても」というくらい の意味を表している。 (d) The beaver is increasing in number. (e) Beavers are increasing in number. (f)(×)A beaver is increasing in number. (くろしお出版『謎解きの英文法 冠詞と名詞』久野ワ・高見健一著) http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#article 「ビーバーは数の範囲で増加しつつある」 →「ビーバーの数が増えている」 先ほどは“定冠詞+単数名詞”“不定冠詞+単数名詞”“無冠詞+複数形” で同じような内容になったが、こちらの意味では“不定冠詞+単数名詞”は 適当ではない。 サンプルのビーバーを1匹連れて来て「数が増加している」とは言えないか らだ。「ビーバーは前歯が出ている」ならば「サンプル一匹」で十分可能だ が。 (g) I can't play the piano. (h) I'd like to have a piano. (“English Grammar in Use 3rd edition”Raymond Murphy) http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english02.html#egu (g)「私はピアノを演奏できない」 (h)「私はピアノを(一台)所有したい」 “play the 楽器名”も〔総称〕を表す使い方である。他の楽器と区別され たその楽器一般を表している。楽器の種類が問題となっている。 (g)は、特定の「そのピアノ」を弾くことができないというわけではない。 広くピアノという種類の楽器が演奏できないのである。 (h)は、目に見える具体的な実物のピアノが欲しいのである。もちろん気に 入った1台が目の前にあれば、the piano とすることも可能。目の前になく ても特定できるピアノならば〔定冠詞〕が使える。 小西友七・南出康世編集『ジーニアス英和辞典第4版』大修館 の piano 項 http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#gej [語法]欄に次の記述がある。 ================================================================ (1)楽器には通例 the をつけるが、piano がバンドなどにおける役割や ロック・ジャズなどの演奏(曲)を指す場合、また《米》ではしばしば 省略される;さらに、プロの奏者の場合は通例省略される。She plays excellent jazz piano. 彼女はジャズビアノがすばらしくうまい。 (2)「ある(特別の)」の意のときや限定的修飾語句・節を伴えば a の 場合もある:He hates playing a piano which is out of tune. 彼は 調子のはずれたピアノはひきたがらない。 ================================================================ (2)などは、〔総称〕の the に込められている。「ピアノという名の楽器で 普通のもの」の意味を考えれば理解できる。 (1)は、play piano, play jazz piano などが、全体で〔句動詞〕のように 働いているから〔無冠詞〕なのだろう。go to bed などと同じではないだろ うか。 (i) She studied oboe and saxophone at the Royal Academy of Music. (“Practical English Usage 3rd Edition”Michael Swan) http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english02.html#peu 「彼女は王立音楽院で、オーボエとサキソフォンを勉強した」 この例文掲載書では、ジャズ・ポップの他に、クラシック音楽でも the を 省略するときがあると書かれている。 これは学科名に準ずるようにも思う。 ┛ ┛ ┛ ┛ ┛ ┛ ┛ ┛ ┛ ┛ 【まとめ】名詞の表す種類・種族一般を指すには、3つの方法がある。 (j) The male lion has a mane. (ポータルサイトの質問コーナーより) 「雄ライオンにはたてがみがある」 The male lion は“定冠詞+名詞単数形”。 (k) Cats can find their way home - without map or compass - when abandoned hundreds of miles away in strange territory. (“The Wisdom of Animals” by Vernon Coleman and Donna Coleman) http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/201-220/egu214.html#link 「猫は、家から何百マイルも離れている見知らぬ地域に捨てられても、 地図や磁石は使わずに帰り道を見つけることができる」 cats は“無冠詞+名詞複数形”。 map, cpmpass 共に〔可算名詞〕で〔冠詞〕をつけるか〔複数形〕にするべ きなのだろうが、“without map or compass”の形で使われる例が多くある。 書名の一部にも使われている。本来の〔名詞〕の機能を離れ、慣用表現化し ているからではないか。 (l) A snake doesn't have a nose like people do. (“A Reptile a Reptile” by Dwight and David Kuhn) http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/201-220/egu214.html#link 「ヘビには、人が持っているような鼻はない」 a snake は“不定冠詞+名詞単数形”。 like は〔接続詞〕「S'がV'するように」。〔節〕中の〔動詞〕は通常 〔代動詞〕の do。この文では have a nose, have noses の代わりに do を用いている。 ……………………………………………………………………………………………… (2)at a particular speed …………………………………… 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ・at top speed「最高速で」 ・at full speed「全速力で」 ・at great speed「大変な速度で」 (×)at quick speed ・at high speed「高速で」 (at を省略する場合もある) ・at breakneck speed「猛烈な速度で」←「首を折るほどの」 ・at medium speed「中間の速度で」 ・at low speed「低速で」 ・at slow speed「遅い速度で」 ・at a breathless speed「息もつかせぬ速さで」 ・at a comfortable speed「快適な速度で」 ・at an easy speed「ゆったりとした速度で」 ・at a constant speed「一定の速度で」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 (a)(×)These new trains can travel in very high speeds. (b)(○)These new trains can travel at very high speeds. (c)(×)The car in front of ours continued with the same speed. (d)(○)The car in front of ours continued at the same speed. (“LONGMAN Dictionary of Common Errors New edition”Pearson) http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#dce (b)「これらの新しい列車は超高速で走ることができる」 (d)「私たちの前を走っている車は、同じ速度で走り続けている」 「with や in は、通常使わない」としている。 『ジーニアス英和』の語法欄には、「at は〈……の割合で〉のとき、 with は一瞬で終わる動作のときに好まれる」という内容あり。 (e) He scrambled to his feet and left the room with all speed. 「彼は急に立ち上がってあっという間に部屋を出て行った」 (小西友七・南出康世編集『ジーニアス英和辞典第4版』大修館) http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#gej 確かに一瞬だ。 scramble 自体にも「すばやく動く」という意味がある。“scramble to one's feet”で「急に立ち上がる」。 (f) Hedgehogs, though small, can move with surprising speed. (“Oxford Collocations Dictionary for Students of English”Diana Lea) http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#ocdse 「ハリネズミは小さいけれど、驚異的な速さで移動することができる」 これも速いに違いない。 (f)の〔主語〕hedgehogs は(1)の例文(b)で使われている〔主語〕と同じ 使い方。 (g) Passengers could now travel by canal boat into the West with comparative ease and comfort, if not at a rapid speed,... (“History of the United States”by Charles A. Beard and Mary R. Beard)http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer03.html#hus 「今や乗船客は、比較的安易にまた快適に運河の連絡船で西部へ入ること ができるであろう。それが高速でなければの話だが」 speed の〔冠詞〕のあるなしについては、編集人は確かな理由を述べること はできない。波線内で示した語句については、そのような例が多いようだ。 ┛ ┛ ┛ ┛ ┛ ┛ ┛ ┛ ┛ ┛ 具体的な数字で速さを表現する例は、以下の通り。 (h) The plane has a cruising speed of 480 knots. 「その飛行機の巡航速度は《トップスピードより遅い経済速度》は480 ノットである」 (研究社『新編英和活用大辞典初版』編集代表市川繁治郎) http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#kdec ←「その飛行機は480ノットの巡航速度をもっている」 1 knot は、時速1海里≒1852m/h。480 knots は、約 889km/h。 (i) The lion can reach speeds of 80 kilometers/hour (50 mph). (ポータルサイトの質問コーナー) 「ライオンは時速80km(時速50マイル)の速度に達することができる」 この the lion は(1)の〔総称表現〕。 mph は miles per hour の頭文字。 (j) The truck was travelling at a speed of 50 mph. (“LONGMAN Dictionary of Contemporary English 4th edition”) http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html#ldoce 「そのトラックは、時速50マイルのスピードで走っていた」 アメリカ英語では traveling。 (h)〜(j)の speed は〔不定冠詞〕か〔無冠詞〕の〔複数形〕が使われてい る。 (k) The plane will be travelling at twice the speed of sound when it passes overhead. (“Advanced Grammar in Use”Martin Hewings) |
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(1)例文(k) The Wisdom of Animals [Kindle版]
(1)例文(l) What Makes: A Reptile a Reptile [Kindle版]
(3)例文(b) Tokyo Weekender の Bilingual News の記事
(3)iTunes の podcast“Bilingual News”のページ
(3)例文(d) Los Angeles Times の3月10日のサロネンの記事
Foreign Minister Fumio Kishida and his Iranian counterpart, Mohammad Javad Zarif, on Monday struck an agreement on a bilateral investment pact.
(“Japan, Iran ministers agree...”The Japan Times: Oct. 12, 2015; Kyodo)
「岸田文雄外相とイランのムハンマド・ジェヴァド・ザリフ外相は、月曜日、相互投資協定の合意に達した」
bilateral は、bi+lateral。lateral はラテン語からきている。later- の部分は「側面」「横側」。-al で形容詞化している。「側面の」。bilateral で「2つの側面の」「両側の」「双方の」「相互の」となる。
「相互の」の bilateral は「2国間の」という意味だから「日米(の)」「日中(の)」という風に訳されることが多い。今回は「日イ投資協定」か「日本イラン投資協定」くらい。(2015/10/13追記)