ガルバルディβ
    
永野護氏デザインMS大全    
  
機動戦士ガンダム 1985−1986放送
永野氏デザインによる連邦軍用MSで、主にTVではライラ・ミラ・ライラが騎乗。
一年戦争時ジオンで開発されたガルバルディの後続機という設定で、ゲルググ・ギャンの設計思想を継いでいる。
  
 
 
 
 
 ガルバルディβ
 
永野氏デザインによる連邦軍用MS。
主にTVではライラ・ミラ・ライラが騎乗。一年戦争時ジオンで開発されたガルバルディの後続機という設定で、ゲルググ・ギャンの設計思想を継いでいる。
赤い機体でスマートになったゲルググという雰囲気。

 
ガルバルディβに関しては当初、永野氏の設定画には「MSX−03β ガルバルディβ(旧MS−17)」という型式番号が書かれていた。
これは初代ガンダム放送後大河原氏・小田氏によって発表されていた「MS−X:ペズン計画(
一年戦争時秘密工廠で開発されていたMS群。カモフラージュするため使用されていなかった型番MS-10,11,12,13,17を使用したため、MS−X計画と呼ばれた)」にて発表された、ギャンの後継機ガルバルディαの発展型というコンセプトだったためであろう。
 
ガルバルディβは1年戦争世代のMSと、グリプス紛争時代に新しく登場した次世代MS(Zガンダムなど)の橋渡し存在としてデザインされている。
1年戦争時代の名機「ゲルググ」の印象を強く残した、永野氏にしては比較的オーソドックスな形にデザインされている。
「科学考証相談役の科学ライター永瀬唯さんとのミーティングで出たのは、現実の戦争もそうだけど、7年ではMSの世界にさほど大きな進歩は見られないだろうということ。そこでとりあえずは(スポンサーさんを安心させる意味を含めて)MSに見えるMSを出そうということになったんです。で、僕が真っ先に「1stガンダム」に出てきたリックドムとゲルググの後継機に当たるMSをデザインした。それが、リック・ディアスとガルバルディβなんです」 [ZガンダムメモリアルLD-BOX1封入ブックレット]
「ガルバルディβは、ガルバルディβというモビルスーツのデザインを見せてもらって、それを元にゲルググのイメージを残しつつデザインしている。」 [Zガンダムエース]
「いくら何でも最初から怪しいものを作るわけにもいかないので、さすがに僕もブレーキをかけた結果がリック・ディアスとガルバルディβという形になったんです。要するに前作のイメージを残してデザインしているんですよね。それでも、反発が強くて「これは、MSじゃないよ」とか言われていたけれど、富野さんが頑張ってくれて、「出してしまえば、こっちの勝ち」といってデザイン的なOKはもらっていた。」 [Zガンダムエース]
「最初はスタッフサイドは、旧シリーズには囚われないで一新した「ガンダム」を作ろう、っていう意識でやってたんですけど、やっぱり、周りはそれでは納得しない。「永野君のデザインは難しすぎる」なんて意見が出てくるわけです、それで、旧シリーズっぽいガンダムMK-IIやハイザックを出すことになった。」 [Zガンダムヒストリカ09]
 
 
ガルバルディβに関しては
「結局僕はポイントになるメカだけを作っているんですね。(中略)昔のモビルスーツの代表としてガルバルディがいる」 [アニメック1985年10月号]
「リックディアスとガルバルディーは、ノリで作って、ハンブラビとキュベレーは開き直りで作った(笑)」 [Beep1988年1月号]
「エルガイムを支持してくれた人たちは、新しいMSとして見てくれたけど、そうでない人たちからは、かっこうの批判材料として、「ジオンのMSがこんなに細いわけないじゃないか!」とか「勘違いしてんじゃねぇか?」とか、言われましたね。いま見たらバランス取れてるんだけど、当時はね−」 [ISSUE&OUTLINE]
「ガルバルディβやリック・ディアスは、富野さんの意思も入っている」 [Zガンダムエース]
 
等のコメントが各誌に掲載された。

 


 
設定画
全身像前面・全身像背面・コクピッドハッチ・シールド・ビームライフルが永野氏によるもの。
ちなみに全身像斜め上俯瞰・頭部背面・頭部背面(信号弾発射時)・バストアップ前面・バックパック・腕&ビームサーベル・シールド裏のミサイルは藤田一己氏によるものである。

 
MSX−03β ガルバルディβ(1)(旧MS−17)
前面パースが描かれていて、腰のスカートが異なる初期稿もある。
サイン等については2002年に発行されたGREAT MECHANIC6にて確認出来るのだが、非常に小さく掲載されているため一部判読出来ない。
「MamoruNagano84.11.4.(*******)」←判読できないが日付と思われる。腰部を手直しした際の日付ではないだろうか・・・?
 
当時スタッフに配布された設定画を調査したところ、(1)が前面(全身)パースで、(2)が背面パースであることが判明した。
  またサインの(******)の部分は(84.12.7.加.)であることが判明した。やはり腰部を修正した日付であると思われる。 2005.1.25追記
  
ガルバルディβ (2)
全身画の背面パース。タイトルも(1)のように形式が書かれていることもなく非常にシンプル。カキコミ等も一切書かれていないようである。
 
サインも「MamoruNagano84.11.4.」のみで、前面パースのように加筆修正されていないようである。 2005.1.25追記
  
●シールド、コクピットハッチ、ビームライフル
残念ながらサイン・日付・タイトル一切不明。
Zガンダムエースに掲載された設定画により、「くりす」というサインが書かれていたことが判明。ただし日付やシートのタイトルは今の所確認されていない。
  その他にも、一部カキコミがあったことも判明した。  2005.9.22追記
 
シールド
「収納時」
 このカキコミは盾が縮んだ状態の設定画に書き添えられていた。シールド展開図・縮小図・裏面の3点が描かれている。
ハッチ
「ハッチのひらき方前に出る」
 ハッチの開閉図。横からの視点図もあり。
ビームライフル
「←サーチャー」
「ガルバルディのビーム砲.ゲルググのものにサーチャーをとり替えただけ.」
 ガルバのライフルは、一年戦争時のゲルググが使用していたものにサーチャーを取り付けただけのものでであることが判明。・・それで・・・いいのか?
 
以上より、永野氏による設定画シートは
3枚と考えられる。
Zガンダムノスタルジアに掲載されている藤田氏が描いたガルバルディβの設定画(上方パース・頭部・バックパック・脚裏)のタイトルが「ガルバルディβ(4)」とタイトルが書かれている事からみてもほぼ間違いないと思われる。
 

 
掲載雑誌
アニメック1985年05月号 P65
  設定画完全一部書き込み完全一部タイトル サイン
アニメック1985年10月号
  設定画完全一部書き込み完全一部タイトル サイン
Zガンダムを10倍楽しむ本 P96
  設定画完全一部書き込み完全一部タイトル サイン
機動戦士Zガンダムグラフティ P91
  設定画完全一部書き込み完全一部タイトル サイン
MS大全集 P20・51
  設定画完全一部書き込み完全一部タイトル サイン
Z大辞典 P66
  設定画完全一部書き込み完全一部タイトル サイン
ZZ&Z保存版設定資料集 P58
  設定画完全一部書き込み完全一部タイトル サイン
GREATMECHANIC6 P46
  設定画完全一部書き込み完全一部タイトルサイン
Zガンダムエース
  設定画完全一部書き込み完全一部タイトル サイン
Zガンダムについての永野氏のインタビューが掲載され、ガルバルディβについての話や設定画が掲載されている。
ZガンダムメモリアルLD-BOX1封入ブックレット P16
永野氏のコメントの中に、ガルバルディβがデザインされた当時の事も掲載されている
ISSUE(P102)&OUTLINE(P104)
ガルバルディβがデザインされた経緯についてのコメントが掲載されている
   
 
 
 ガルバルディβ原型デザイン
 
2011年突如発表されたガルバルディβの初期デザイン。
ファイブスター物語リブート2巻P26に掲載されている。 
 
Zガンダムの企画初期に描かれたらしく、このデザインを基にZG(百式ラフ)など永野氏によるMS群が生まれてきた、まさに始祖と呼べる機体なのかもしれない。
残念ながら永野氏のサインなどは掲載されていないため、どの時期に描かれたか不明である。

 
デザインに関してはガルバルディβとはあまり似ているとは言えず、全体的な雰囲気がやや似ているかな?とい程度である。
ガルバルディβには見られないバインダーや日本の鎧のような装甲など、他の機体に採用されたデティールが散見できる。
具体的にはバインダーと腕部(リックディアス)、盾(ネモ)、腰部装甲(バッシュ、ベルリン)、肩部(ジュノーン後期型)といったところか。 
「ベルリンのデザインはここまでさかのぼる。これは「ガルバルディβ」の原型デザインで、ここからさらにZガンダム(百式)、ガルバルディβ、ネモ、そしてガンダムZZのM-9、百式ノイに発展し、ファイブスターのMHにはベルリンやバッシュ、ジュノーンまで根こそぎパーツが流用された。背中のブースターはリックディアスに、全体のシルエットはガルバルディと百式に変化していったのがすぐわかると思うが、バッシュとベルリンに腰の装甲がもって行かれ、肩のパーツはジュノーン後期型の肩にそのまま使用されている。」  [リブート2巻] 
 
  

 
設定画

リブート2巻のみに設定画が掲載されている。 
残念ながら設定画のみの掲載で、サインやタイトルは掲載されていない。
 

 
掲載雑誌

ファイブスター物語リブート2巻 P26
  設定画完全一部書き込み完全一部 タイトル サイン
設定画が掲載されている。
 
  

 ガルバルディ
      (2005ポスターVer.)
 
2005年Zガンダム劇場版公開に合わせて4体のMSが描かれ、Zガンダムエースニュータイプ2005年7月号の付録ポスターにて公開された。
何故かガルバルディβではなく、単にガルバルディとだけかかれている
(ガルバルディ・キュベレイZガンダムエースリック・ディアスハチカニュータイプ2005年7月号
 
永野氏がモビルスーツのイラストを描く場合は大抵原型を留めていないデザインになってしまうのであるが、この時に描かれたMSの内、ガルバルディ、キュベレイリック・ディアスはデザインに変更はほとんど見られなかった(ただしハチカは完全な新デザインのMS)。
私個人としては、キュベレイとガルバルディが描かれたポスターを始めて見た時の印象は、珍しく暴走していない・・・という意外な印象を受けた。
しかしながら、最後にはちゃんとハチカというオチが用意されていたわけである(笑)。

 
 
デザインにおいてTV版のガルバルディβとの相違点はほとんど見られないが、肩部分にモノアイが追加されているなどの若干の違いが見られる。
ここら辺はいかにも永野氏らしい変更である。

 
また、機体のメインカラーは通常赤紫色であるが、このポスターに描かれた機体は鮮やかな赤色である。
なお、ポスターに描くかれているキャプションによるとライラ・ミラ・ライラが騎乗した機体のみは赤紫色に塗られていたということであるので、一般的なパイロットが騎乗した機体はこのような鮮やかな赤色の機体であったということらしい(ただし永野氏の脳内設定)。
胸にはジオン公国のマーク、盾には何故かディフォルメ化されたハンブラビのマークが描かれている。
「連邦軍MS部隊隊長ライラ・ミラ・ライラの専用機は、赤紫に塗られていたという [ニュータイプ2005年7月号付録ポスター] 
 
機体自体はそんなに変更されていないが、装備している武器と盾が、オリジナルのデザインと大きく異なり、盾は8角形型から舟形に、形状が変更されている。
また、このMSが持っているライフルはハチカと同じものであり、ニュータイプ2005年7月号のポスターに書かれているハチカのキャプションによるとなにやら怪しげな火気管制?システムがあるらしいが、残念ながら詳細は不明との事である(笑)。
(ハチカは)リックディアスやガルバルディと同じウェポンシステムを搭載している。詳細は不明」 [ニュータイプ2005年7月号付録ポスター] 
 
このバージョンのガルバルディの特記すべき点として、このMSに振られている形式番号が「MS-23」であったことである。
言う迄もなく「MS-**」という形式番号はジオン公国のものである。
ガルバルディβは大戦末期にジオン公国が開発したガルバルディαを連邦軍が接収し、その後改良が加えられてガルバルディβとしてロールアウトされている。
そしてグリプス戦役で連邦軍側で使用されているので、形式番号は連邦側の「RMS-***」が適当であり、実際ガルバルディβの形式番号は「RMS-117」である(RMSは量産機、RXは試作機)。
 
しかしながら、このガルバルディには「MS-23」という形式番号が振られ、胸にはジオン公国のマークが描かれている。
これらの事から想像するに、永野氏はガルバルディβを連邦軍側で使用されるのは嫌だったということであろうか?
まぁ、ガルバルディβはまんまゲルググ+ギャンであるので、ジオン公国のマークを描いたら格好良いという単なる思いつきによるものではないかと想像出来るのであるが・・・
 
ちなみにジオン公国のMSで最後の形式番号は「MS-17」のガルバルディαである。このガルバルディが「MS-23」である。
その間には5体のMSが存在したと言う(永野氏の脳内)設定があったのであろうか?

 
同様にリックディアスの「MS-24」からジオンオーダー最後の機体「ハチカ」の「MS-35」までは、10体のジオン系MSがあるということになる。う〜ん想像もつきませんねぇ。
ただし、1994年のイラストでアナハイムのマークをつけた赤いハンブラビが描かれていることから、この機体は間違いなく勘定に入っていることは用意に想像出来るのではあるが(笑)
 
 

また、他にもニュータイプのポスターの裏に4体のMSのモノクロイラストとキャプションが掲載されているのであるが、その中の文章に「これらのMSは全てアナハイムエレクトロニクス製作のもの」と書かれている事も非常に印象深い。
形式番号が「RMS-11*」の機体はルナツーでの製造であり、「RMS-117」であるガルバルディβは連邦軍基地ルナツーでの製造と考えられ、アナハイムエレクトロニクスが製作したとは考えにくいのであるが・・・。
「ここにあるモビルスーツはすべてアナハイムエレクトロニクス製作のものだが」 [ニュータイプ2005年7月号付録ポスター]
 
これらのMSを描いた理由として、永野氏は「デザイナーとしての最後の意地」であるとも述べているが、一方で金策の為に嫌々描いたとのコメントも存在する。
ま、単に描きたくなったんでしょね(笑)。
「何でいまだにキュベレイとかを相変わらず描くのかというと、それはデザイナーとしての最後の意地があるから。それだけですよ。だから、今回のポスターは「こっちにしておけば良かった」とみなさんに思わせるように描いてますから(笑)。」 [Zガンダムエース] 
「おご〜っ会社に金ね〜っ。その上車も調子わり〜っ。どーせーっちゅーんじゃ〜っ金策・・。おかげでぶっさいくなロボット4体も描くハメになったしーっ。」 [ニュータイプ2005年8月号]
(エストの台詞)描いてる時は「かっちイーっさすがオレメカ」とか言ってたくせにーっ。あれはぶっさいくなのがカッコイイんでスよー。主役メカだって毎回ブタみたいなカオしてるし〜。」 [ニュータイプ2005年8月号]
 
久々にリックディアス、ガルバルディβ、キュベレイのイラストを描いた経緯については、後にシャア役の声優である池田氏との対談でその経緯を語っている。
「劇場版「Z」に関しては、(池田秀一氏の劇場版Zをやってみて色々なシコリなどを吹っ切れたという発言に対して)僕も同じで、公開に合わせてもう絶対に描くことはないと思っていたリック・ディアスやキュベレイのイラストを描いたんです。要するにそこまで人間の気持ちがほぐれたということなんでしょう。」 [ガンダムエース2009年12月号池田秀一氏との対談記事より]

 
掲載雑誌

ZガンダムエースNo.001 付録ポスター・P246
付録ポスターにこのMSのイラストが描かれている。また目次ページにもこのポスターが小さく転載されている。
ニュータイプ2005年7月号 P156
付録ポスターの裏側に、このMSのモノクロイラストと永野氏によるキャプションが描かれている。
ガンダムエース2005年8月号 P79
同時期に発売された増刊「Zガンダムエース」に付録としてついていた永野氏書き下ろしのポスター(キュベレイとガルバルディβ)が小さく転載されている。
機動戦士ガンダム30周年画集「天地創造」 P202 
イラストが再録されている。 
  
 
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