右半身の痺れ


当初は左手の小指だけにあった痺れが、2004年4月半ばを境に、身体全体に広がってしまった。右肩甲骨の下、右の頬、みぞおちの右側、右の太もも、右の膝といった右半身、それから左手の小指の痺れが特に、ひどい状態であった。更に「明日は午前6時起きで自動車を飛ばし、白馬村での調査に入る」という前日の、5月1日(土曜日)の夜、何かの拍子で右肩甲骨下の筋肉を痛めてしまい、痺れだか痛みだか、釈然としない状態になってしまった。

以上のような自分自身の体調の悪さを抱えながら、2日(日曜日)のお昼過ぎから、2004年春の白馬村両生類調査を開始した。今回は「これが血行障害による痺れなら、山歩きをすれば、少しは病状が改善するはずである」との期待感を持って臨んだ調査ではあった。この調査の最中も、小型のリュックサックを背負った辺りから痺れが広がっていくようなので、リュックサックを下ろし、出来るだけ身軽になることを心掛けた。だが、幾ら身軽になっても、右半身の痺れが取れることはなく、ずっと痺れをかばいながらの、今回の調査となってしまった。

4日(火曜日)は土砂降りの雨の中、福井から早朝、わざわざ自動車を飛ばして白馬まで来てくれた○○さんの現地案内を、友人の懸川雅市さんとおこない、風邪を引いてしまった。その風邪が、新潟に戻ってから急にひどくなり、鼻水が出っぱなしで、6日(木曜日)は、ティッシュペーパーを一箱なくした。頭がガンガンして、咳も喘息なみにひどく、おかげで風邪の症状と身体の痺れがない交ぜになって、9日(日曜日)と10日(月曜日)は大事をとって大学に行かず、下宿の部屋で休んでいた。その間、途中途中で何度か目を覚ますのだが、これまでと大きく異なっているのは「幾ら眠っても眠り足りない。何度でも、ぐっすり眠れる」という感覚であった。

私の身体の痺れが知れ渡ってから、色んな方から心配していただくようになった。ただ、皆さんが口にする病名が人それぞれで、素人判断では全く埒(らち)が明かないものであることも事実であった。私の身体の痺れに関して、皆さんからいただいた病名は、脳硬塞、脳卒中、腱鞘炎、ストレス、眼精疲労、肺血栓(塞栓症)、腰痛、頚椎ヘルニア、等々、多岐にわたっていた。いずれにしても、皆さんの見立てでは、血行障害を起こしていることだけは確かなようであった。

12日(水曜日)、いよいよヤバくなって来た。椅子に座っているだけで、身体全体に圧迫感がある。まず、はめている時計のバンドによる左手首の圧迫感、スラックスのベルトによる腰の圧迫感、履いているソックスによる両足首の圧迫感。これらの圧迫感と身体の痺れが、ない交ぜになっている。ここに来て「そのうち、身体の自由が利かなくなるんじゃないか?」という恐怖感を抱くようになった(1)。

こうなったら、もう医者に行くしかないのかもしれない。問題は「こういった症状は、どの医者に行けばいいのか?」ということである。「内科なのか、外科なのか? 内科だとしたら、神経内科か? 外科だとしたら、脳神経外科か、それとも整形外科か?」といったことが、全く見当も付かない。「これは駄目元で大学の保健管理センターに相談してみるしかない」と思ったのだが、ホームページを見ると「メールでの相談は受け付けていません(2)」と書いてある。仕方がないので15日(土曜日)、風邪も良くならないし、とりあえず「下宿の近所にある内科医院(3)」で診察を受けた。

診察の結果は「痺れが循環器系の症状なら、右半身全体に出ることはない(つまり「血行障害ではない」ということらしい???)。左手の小指の痺れは、これとは切り離して考えるべし。運動器系も神経系も正常。現在のところ原因不明だが、重大な病気である可能性は低い。ただ、脳のところで何かトラブルがあるといけないから、精密検査をするのなら、紹介状を書く」ということで、神経内科のある総合病院で精密検査を受けることになった。おそらく、CTスキャンを撮ることになるのだろう。さてさて、どうなることやら......。

19日(水曜日)、午前中いっぱい掛かって(9時ちょっと前から12時近くまで)、医師の診察と精密検査を受けて来た。「済生会新潟第二病院(4)」という、かなり大きな総合病院の神経内科である。精密検査では「頚部のレントゲン写真」と「頭部のCTスキャン」を撮ったが、どちらも私にとっては「初めての経験」であった(5)。

診断結果は、全く異常なし。輪切りにされた自分の脳の連続写真を初めて観たが、綺麗なものである。「強いて挙げれば、頚椎骨の6番目と7番目の間隔が若干、狭いことくらいだが、これが痺れの原因になることは考えられない」という話である。従って、右半身の痺れに関しては、原因不明のままで「重大な病気である可能性は低いから、少し様子を見ましょう」ということになった。この診察から一ヶ月後に、再診である(6)。

[脚注]
(1) 「志し半ばで逝ってしまうのか?」という想念が頭をもたげるのは、こんなときである。
(2) 現在の時代にメールが使えないなんて、不親切なこと、きわまりない。2004年4月から国立大学法人になっても、旧態依然とした体制は何も変わっちゃいない。ここに来て、また部屋に電話がないことの不便さを、痛感する出来事が起きてしまった。
(3) ここは以前、咳で肋骨に、ひびが入ったとき、お世話になった医院である。看板や診察券には「内科・神経科」とあるが、神経内科が専門の医院ではないことを、今回の受診で初めて知った。医者からは、看板に掲げる「神経科」が意味するところを説明してもらったが、色々と問題があるようなので、ここでは敢えて触れないことにする。ちなみに今回、処方されたのは、身体の痺れに関しては神経痛や筋肉痛を治療するビタミンB配合薬が1種類、風邪の症状に関しては咳や鼻炎を抑える薬が3種類であった。
(4) この病院は「外来患者の場合、何時間いても駐車料金が100円になる」というシステムが、素晴らしい(面会や、その他の事情で来院した方は、駐車料金が30分毎に100円ずつ加算されていくようである)。惜しむらくは、診察を受けに初めて病院に来た今回の私のようなケースでは、診察が終わって料金を清算する間際まで、このシステムが知らされず、不安を感じることである。
(5) 今回、掛かった費用は、診療費の合計金額が27,390円(基本料6,550円、検査料760円、レントゲン料14,880円、理学・その他5,200円)で、そのうち私が病院側に支払った金額は、健康保険の3割負担で8,220円であった。健康保険制度というのは、本当に有り難いものである。
(6) 5月23日(日曜日)のお昼頃、右半身の痺れが消えていることに気付いた。この独り言をアップした時点で、身体の痺れは全く感じていない。このまま何ごともなく、完治してくれると有り難いのだが......。


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