2008年末のプリンタ 〜エプソンとキャノンのプリンタを比較〜 (2008年12月9日著・2009年1月1日追記)
エプソンとキャノンから、2008年年末商戦向けのプリンタが発表された。これらの製品を複合機、FAX機能付き複合機、単機能プリンタ、コンパクトプリンタの4種類を価格帯別に比較していこう。各比較は、独立したページとして用意してあるので、下記のリンクから飛んで頂きたい。
去年まででプリント機能はほぼ問題ないレベルに達したためか、エプソン、キャノン共にプリントの画質面では去年から変化無く、エプソンが1.5plインク滴で5760×1440dpi、キャノンが1plインク滴で9600×2400dpiとなっている。一方、両メーカーは画質以外の方向のアプローチをしてきている。まず、複合機では上位モデルを中心に小型化が図られている。これまで大きさが問題になる事が多い複合機だけにうれしい改善点だ。また、去年までキャノンの1機種しかなかったADFを搭載した機種がエプソンから3機種、キャノンから2機種に激増している。FAX機能付きの機種も、エプソン、キャノン共に2機種ずつラインナップされている。また、LAN搭載機も増え、エプソンでは複合機2機種、単機能プリンタが1機種の有線/無線LANを搭載、キャノンは複合機に有線/無線LAN搭載機が2機種、有線LAN搭載機が2機種となっている。最近では複数のパソコンを所有し、ルータを利用し同時にインターネットにつないでいる人も多くなってきているため、このような形になったと思われる。一方、フィルムスキャンに対応した機種が減り、キャノンの1機種しかなくなっている。さすがにデジカメへの移行が進み、フィルムスキャンの需要が減ったためと思われる。 ラインナップでは前述のように、両メーカーとも複合機と単機能プリンタにFAX機能付き複合機が追加されている。エプソンがFAX機能付き複合機が2機種、複合機が5機種、単機能A4プリンタが3機種であり、キャノンはそれぞれ2機種、6機種、3機種とほぼ同等である。一方、コンパクトプリンタはエプソンとキャノンで逆の方向に進んだ。エプソンからは新機種が発売され、3機種ラインナップされる。一方キャノンは写真・はがきサイズまでのコンパクトプリンタのラインナップが無くなり、A4対応のコンパクトプリンタのみとなった。
今年のエプソンのラインナップは去年と比べてどのようになっているか、まずは見てみよう。
エプソンは今回より品番の付け方が変更されている。従来はPM-A840のような品番で、頭がPMの場合染料インク、PXの場合顔料インクで、その後ろがAなら複合機、TならTV接続機能付き複合機、FAならファックス付き複合機、GかVなら単機能プリンタとなっていた。しかしPM-T990やPM-A890など900番台や800番台で最後の90まで使用してしまい、これ以上の品番が付けられなくなっていた。そこで、今回一新されたわけである。 新しい付け方は、EP-901Aのような形で、頭がEPなら染料インク、PXなら顔料インクとなる。そして、その後ろの数字の100の位でラインナップの上位・下位を表し、その後ろに何も付いていなければ単機能プリンタ、Aが付いていれば複合機、Fが付いていればFAXつき複合機となる。しかし、この法則は今年の年末の機種からになり、去年からの継続販売の機種や今年の2月に発売された機種などは従来の品番の付け方となっており混在しているのがわかり難い。 今回のラインナップで特徴的なのはまずデザインだ。サイズが大きく、パソコンの周辺機器的なデザインだった去年までから大きく変更され、コンパクトでリビングにあうデザインのものに変更されている。例えば去年発売された中での最上位のPM-T960は446×503×242mmであったが、今年の最上位機種EP-901Aは466×385×198mmとなっており奥行きが11.8cm、高さが4.4cm小さくなっている。PM-T960と同じADFを搭載しないEP-801Aに関しては446×385×150mmと高さも9.2cmも小さくなっているのである。 ラインナップ全体で見ると、複合機はDVDドライブ内臓の機種が姿を消し、FAX搭載機が2機種ラインナップされている。また、単機能プリンタは、2機種から3機種に増え、染料インクの機種は写真重視、顔料インクの機種は高速印刷重視へとシフトしている。A3プリンタは継続販売である。写真・はがきサイズまでのコンパクトプリンタは、3機種のままで順当な変化をしている。 複合機(FAX付きを除く)のラインナップを見てみよう。まず、上位2機種がコンパクトな新デザインへと進化している。新デザインの機種は前面給紙のみとなり、背面からは給紙できない。前面にA4などの用紙と写真紙を2段でセットできるダブルトレイになっているため便利だし、コンパクトさにも一役買っているが、前面から入って前面に出るため用紙が曲げられることとなるため、特殊な用紙などを利用する場合は注意が必要だ。またL版より小さな名刺やカードサイズに対応しなくなってしまった。ADF機能やタッチパネル液晶(EP-901Aのみ)、トレー内蔵型のCD/DVDレーベル印刷機能などの機能が追加されている一方で、自動両面印刷やネガフィルムのスキャンに対応しなくなった。印刷速度は若干高速化され、L判写真が14秒となっている。 3番目の機種はPM-A840Sという品番から判るように、PM-A840のマイナーチェンジの機種となり、デザインも従来の大型のものだ。PX-501AとPX-A640は顔料インクの複合機となる。デザインは従来機種と変わっていないが、もともとコンパクトな機種である。品番を見るとPX-A640の方が600番台で上位機種に感じるが、PX-501Aは新しい品番の付け方、PX-A640は従来の品番の付け方にならっているため、実際にはPX-501Aが上位機種である。2機種は印刷機能やスキャン機能は同等であり、液晶の有無やコピー機能の違いなどである。 FAX付きの複合機は、EP-901FとPX-FA700である。EP-901FはEP-901AにFAX機能を付けた機種であり、デザインも同じである。PX-FA700はデザインとも異なるものの、性能的にはPX-501AにFAX機能を付けたような機種だ。両機種ともADFを搭載するが、両面スキャンには対応しない。 単機能の機種は染料インクのEP-301と顔料インクのPX-201、PX-101の3機種だ。EP-301は写真印刷向けで、画質は最上位の複合機と同等、カラーと黒が同等のノズル数であり、全体的に高速だ。レーベル印刷も可能だ。一方、PX-201とPX-101はモノクロ印刷が高速である。PX-201は黒だけでなくカラーもノズル数が多めで、比較的カラー印刷も高速だ。また、カラーインクが切れてもしばらくは黒インクだけでも印刷できる機能も備えている。PX-101は黒インクを2本搭載する事で、低価格ながら高速なモノクロ印刷が特徴である。 コンパクトプリンタは3機種のままである。最上位機種が継続販売、下位2機種が新機種となっている。基本的には4色一体型インクでハイビジョンサイズの用紙まで対応、液晶ディスプレイを備えメモリカードからのダイレクト印刷が行える。以前は、E-500番台とE-300番台は印刷画質や速度に差が付けられていたが、今回のE-530とE-330はこの点は同じである。違いはUSBメモリや外付けドライブへのバックアップや、それらからの印刷が行えない点、オプションのバッテリが使用できない点と、液晶ディスプレイがE-530では3.6型、E-330では2.5型となっている事である。ただし、E-330も前機種とは異なり角度調整が可能だ。
今年のラインナップが去年と比べてどのようになっているか、まずは見てみよう。
キャノンは複合機のラインナップが拡充されており、4機種から6機種へと増えている。またFAX機能付き複合機も1機種から2機種へと増えている。単機能プリンタは3機種のままだが順当に進化している。一方、写真サイズまでのコンパクトなプリンタはラインナップから消えている。ただし、A4サイズまで対応しているコンパクトプリンタは新機種が発売されている。 共通の特徴として、インクが新しくなった事が挙げられる。色の再現範囲が約10%拡大している上に、「ChromaLife100」から「ChromaLife100+」になり、「キヤノン写真用紙・光沢 ゴールド」を使用することにより、アルバム保存300年、耐光性40年を実現している(キャノン写真用紙・光沢ではアルバム保存100年)。ただしこれは2008年の年末に発売された機種に限定される。 複合機や単機能プリンタは上位機種を中心に従来よりコンパクトになっているのも特徴である。ただしエプソンの機種とは異なり、デザインは従来を踏襲しており、サイズだけが小さくなっている。一方、その影響がいくつかでている。一つはインクが高さの低いものに代わり、容量が少なくなってしまったこと、そして前面給紙が普通紙のみになってしまったことだ。 一方で、エプソンしか対応していなかったスキャン結果をメモリカードに保存する機能がようやく搭載された。また、リポート用紙や方眼紙、チェックリスト、五線譜、写真入りの各種カレンダー、13種類のサイズから選べる証明写真をパソコンを使わずに印刷出来るようになっている点も特徴だ。 最上位のPIXUS MP980は従来の7色インクから6色インクへと構成が変化している。といっても単純に色が減ったのではなく構成が変化している。染料インクのブラック、シアン、マゼンダ、イエローという基本4色に加えて文字用の顔料ブラックというのは前と同じだ。前機種のPIXUS MP970ではライトシアンとライトマゼンダであったが、PIXUS MP980ではグレーインクを搭載している。そのためモノクロ部の階調表現力が高まっている。最小1plのインク滴と9600×2400dpiの解像度という点は変化がない。印刷スピードはアップしており、L判写真縁なしで17秒である。エプソンと異なり、ネガ読み取り対応のCCDスキャナの機種になっている。PIXUS MP970では有線LANだけであったが、PIXUS MP980では無線LAN接続にも対応した。 その下位のの2機種はPIXUS MP630とMP620であり、どちらも600番台であるが性格が異なる。両機種とも5色インクというのは共通だ。しかし、PIXUS MP630の方が印刷が高速で、スキャナ解像度も高く、レーベル印刷や赤外線通信に対応している。一方、PIXUS MP620は付加機能がいくつか省かれている一方で有線/無線LAN接続が行えるという特徴がある。 下位3機種からは本体デザインが変わり、スキャナ部の右側に操作パネルが配置される。PIXUS MP540はデザインこそ下位モデルと同等だが、性能的にはPIXUS MP620から有線/無線LAN接続機能を外したようなモデルだ。PIXUS MP480は染料ブラックのない4色構成でカラー一体型インクとなるほか、インク滴が2pl、解像度が4800×1200dpiに落ちる。前面給紙や手書き合成、写真の焼き増し風プリントも行えない。 最下位のPIXUS MP470は去年のモデルの継続販売で、基本的にはPIXUS MP480と同じだが、前述の今年から搭載された機能や新インクは利用することが出来ない。 続いて単機能プリンタを見てみよう。PIXUS iP4600は基本性能は昨年のPIXUS iP4500と変わっていない。しかし、今年の複合機同様新インクへ対応しているほか、本体が若干コンパクト化されている。一方で前面給紙が普通紙のみとなっているのも複合機と同様だ。PIXUS iP3600はPIXUS iP3500からインク構成が変わっている。PIXUS iP3500は最下位機種と同等の2plインク滴と4800×1200dpiの解像度で、染料ブラックを除いた4色構成となっており、最下位機種のインクが各色独立した感じであった。一方、PIXUS iP3600は染料ブラックも含む5色構成で、1plのインク滴と9600×2400dpiのインク滴と、上位機種と同等になっている。つまりPIXUS iP4600から前面給紙や自動両面、CD/DVDレーベル印刷機能を削り、印刷速度を落とした機種と言える。PIXUS iP2600はPIXUS iP2500と同等の機能ながら、排紙トレイすらなかったPIXUS iP2500からその点は改善されている。 さらにコンパクトなモバイルプリンタとしてPIXUS iP100がラインナップされている。A4用紙まで対応しているため、設置面積は大きいものの厚みは小さめで重量も2kgと軽い機種だ。5色で1plインク滴、9600×2400dpiの解像度とPIXUS iP4600/3600と同等の印刷画質である(発売日の関係で新インクには対応していないが)。
各機種を詳しく見てみよう。価格帯別の比較、独立したページとして用意してあるので、下記のリンクから飛んで頂きたい。
(H.Intel) 今回の関連メーカー エプソンホームページ http://www.epson.jp/ キャノンホームページ http://canon.jp/
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