第133回
VPCF13AGJのハードディスクを交換する
Western Digital WD7500BPVT
(2011年10月13日購入・2013年5月31日著)


今回のロードテストではメーカー製ノートパソコンでハードディスクの交換作業を行い、その際の手順の紹介と動作検証を行っております。ただし、メーカー製パソコンの場合は、同じ型番のパソコンでもカタログに記載されているスペック以上の細かい部分に関しては全製品で同じとは限りません。よって、今回のパソコンで、同じ交換用ハードディスクを使用した場合での動作を保証するものではありません。ご注意下さい。また、実際に今回と同じ事を行う場合、メーカーの保証対象外ともなり、メーカー保証や延長保証などが無効になるほか、修理自体を受け付けてもらえない可能性もありますので、ご了承いただいた上で作業していただきますようお願いいたします。

VPCF13AGJのハードディスクが壊れた

 ロードテスト第114回で購入したノートパソコン「VPCF13AGJ」は、CPUが4コア8スレッドのCore i7-740QMで、メモリも4GB、グラフィックチップはGeForce GT 425Mを搭載し、ディスプレイは明るく色域も広いフルハイビジョン液晶で、非常に快適に使用してきた。しかし、最近になって急にInternet Explorerが不安定になり出したのだ。 ウェブページを見ていると、ページを移動するたびにInternet Explorerが強制終了するのだ。自動的に回復するので、インターネットが使えないわけではないが、2ページに1ページは発生するとなると異常である。そこで、スキャンディスクを実行しようとすると、なんとスキャンディスクでエラーが発生して、スキャンディスクがキャンセルされてしまう。そこで、Internet Explorerを再インストールしてみると、とりあえず症状は治まった。そこでスキャンディスクを実行してみると、なんとクラスタエラーが出ているではないか。今のところ2つだけだが、よく見ると、最近インストールしたソフトのデスクトップのショートカットが2つ消えている。もちろんウィルスチェックを行ったが、ウィルスではないらしい。そうこうしているうちにInternet Explorerのエラーがまた発生し出した。これは本格的におかしい。Windows全体の動作に問題はないが、早めに対処した方が良さそうだ。
 しかし、クラスタエラーとなると、ハードディスクに傷が付いたり、部品に問題が発生したりという物理的な故障の可能性が高い。ということはハードディスクの交換が必要になる。確かに、ノートパソコンはリビングの机で使用しているため、食事のたびに棚へと移動しており、その時の振動でハードディスクに傷が付くと言うことは十分考えられる。とりあえずバックアップソフトを使ってハードディスクを丸ごとバックアップするが、クラスタエラーがあるせいか、途中でエラーが出てしまう。エラーを無視してバックアップを継続することはできるが、バックアップしたデータから復元できるか分からないというメッセージが表示されたため、とりあえず丸ごとバックアップが完了したら、次は個別にもバックアップをとる。Windowsが起動しなくなったりはしていないため、バックアップがとれたのにはホッとした。
 さてバックアップがとれたら、どう修理するかである。ノートパソコンの場合、デスクトップパソコンの様に簡単にパーツ交換ができない場合があるので、メーカーの修理を依頼するのが一般的だ。しかし、ソニーのホームページで修理金額の目安が出ているが、ハードディスクの場合47,000円となっている。500GBハードディスクが5,000円を切る金額で売られている今となっては、かなり高い。ノートパソコンはパーツの交換がしにくいとは言っても、パーツ自体は規格化されているため、今回もハードディスクに簡単にアクセスできるなら、つまり裏ぶたを開けるなどするだけで簡単にハードディスクが見つかり、取り出せるのなら交換は可能なわけである。そこでインターネットで調べてみると、高性能な機種だけあってSSDへの交換事例が多数見つかった。SSDでもハードディスクでも交換手順は一緒なので、参考にできる。これを見ていると、どうやら本体裏面にいくつかフタがあり、そのうちの1つがハードディスクに直接アクセスできるらしい。ふたを開けてネジを外せばすぐにハードディスクを取り出せる様だ。これまで使ってきたノートパソコンでは、いずれも細かいツメなどをドライバーで押して外しながらキーボードやパームレスト部分を取り外して、場合によってはさらに金属パネルを外す必要があるなど、かなりの数のパーツとそれに伴うネジを外す必要があり、「分解」するに近かった。手間がかかる上に、ハードディスクを交換後に元に戻せるか不安があったし、そもそも交換方法が見つからなかった場合、交換できるかすらわからない。それならばメーカに修理に出そうと思っていたが、非常に簡単そうなので、自分で交換してみることしたのだ。

交換するハードディスクを選ぶ

 さて2.5インチハードディスクはデスクトップパソコン用の3.5インチハードディスクに比べると、「自作パソコン」で使用されることがほぼ無いためか、販売している店舗が少なかったり、販売していても数種類しか販売されていないこともある。そこで日本橋のでんでんタウンに出向き、パーツショップを見て回る事とした。
 その前に、とりあえずどういった製品があるのかを調べておこう。今回交換するハードディスクは5400rpmの500GBハードディスクである。同等でも良いが、できれば大容量化か高速化を行ってみたいところだ。現在のところ、2.5インチハードディスクを販売しているのは「Western Digital」「Seagate」「日立GST」「Samsung」「東芝」程度である。ラインナップは5400rpmと7200rpmがあり、500GB以上の容量としてはどちらの回転数でも500GB、640GB、750GBがあり、さらに5400rpmには1TBのモデルがある。以前は1TBモデルは12.5mm厚で、通常の9.5mm厚より厚みがあるため交換対象にはならなかったが、最近になって9.5mm厚ながら1TBのモデルが出回り始めている。狙い所としては5400rpmの750GBか1TB、7200rpmの750GBあたりだろうか。
 実際に見て回ると、以前ロードテスト第119回でノートパソコンの外付けハードディスクとして使うために7200rpmの750GBハードディスクを購入するために見て回った時よりも、さらに販売している店や数が減っている。その当時よりSSDの高容量化・低価格化が進んだ結果、ノートパソコンを高速化するための交換という用途にすらハードディスクが用いられなくなったためではないかと思われる。
 そんな中でも価格調査を実施すると、2011年10月13日現在で、5400rpmの場合500GBが4,370円〜4,780円、640GBが4,580円〜5,180円、750GBが4,840円〜5,470円、1TBが9,450円〜9,980円である。7200rpmは500GBが4,870円〜5,160円、750GBが6,250円〜6,970円である。これを見ると、大容量の製品を中心にかなり価格が下がっていることが分かる。実際、5400rpmの500GBモデルは価格的な意味をほとんどなしていない。一方1TBのモデルはまだまだ高い。価格調査中に「安い!」と思う事もあったが、12.5mm厚の方のモデルであり、9.5mm厚の方はコストパフォーマンスは良くない。750GBの5400rpmか7200rpmにしたいと思う。価格差は1,410円。これで、Windowsやアプリケーションの起動などが若干速くなるが、それだけの価値があるかどうかだ。今回内蔵する「VPCF13AGJ」は購入する時にカスタマイズが可能で、その選択肢の中には7200rpmモデルがあったことを考えると、発熱や消費電力の問題が発生する可能性は低い。しかし、突然の出費であるため1,480円の価格差は小さくないこと、1,480円というと小さいようだが、パーセントで言うと約30%も高いこと、5400rpmに比べると7200rpmは熱くなるため、パームレスト部分が今より熱くなったり、ファンがうるさくなることも考えられるため、今回はおとなしく5400rpmの750GBモデルを購入する事とした。また7200rpmのモデルより5400rpmのモデルの方が大容量化は先行するので、将来的により大容量のハードディスクと交換する時に、今回7200rpmのモデルにしてしまうと、5400rpmに戻れなくなる事も考えられ、そうなると大容量の製品が選べないと言うこともあり得るのだ。購入したのは、Western Digitalの「WD7500BPVT」である。これ以外に、Seagateの「ST9750423AS」、日立GSTの「HTS547575A9E384」、そのパッケージ版「0S03085」の4製品があるが、Seagateの製品は日本橋でんでんタウンの8店舗で1店舗も取り扱いがなく、「WD7500BPVT」が4,840円〜5,180円に対して「HTS547575A9E384」は5,180円〜5.470円、「0S03085」は5,470円〜6,080円となり、価格で「WD7500BPVT」が安いため、この製品とした。その割にプラッタ容量やキャッシュ容量にも違いがないため、性能差はあまりないと考えられることと、「WD7500BPVT」は6店舗が取り扱っており、日立GSTの3店舗に対して多いため安心感があることも理由となった。BEST DO!日本橋店で4,840円で購入した。

購入した「WD7500BPVT」である。一般的な9.5mm厚の2.5インチハードディスクである。


システムのデータをコピーする

 それでは交換用ハードディスクも手に入れたところで、交換に入りたいと思う。「VPCF13AGJ」はハードディスクリカバリの機種だが、リカバリ用ディスクも作成してあるため、ハードディスクの交換後にリカバリディスクを使ってシステムをリカバリすることも可能だ。今回はハードディスクに問題が発生して交換するので、システムに問題が発生している可能性もあり、この方が絶対的に安心だ。ただ、「VPCF13AGJ」には数多くのアプリケーションソフトをインストールし、使いやすい様に設定も色々と変更しているため、1から行うのはずいぶんな手間である。ここは、現在のWindowsや各種データを丸ごと新しいハードディスクにコピーして、使ってみて、問題が発生する様ならリカバリを行うことにした。
 さて、Windowsのデータなどシステムを丸ごとコピーする場合は専用のアプリケーションソフトが必要だ。幸い、 ロードテスト第122回で、デスクトップパソコンVGC-RM50のシステムドライブをSSD化する際に購入した、「HD革命/Copy Drive Ver.4」というアプリケーションソフトがある。ロードテスト第129回で購入した、ハードディスククレードル「裸族のお立ち台USB3.0eSATAプラス(CROSEU3)」 に「WD7500BPVT」を立て、外付け化する。Windowsを起動しない状態でコピーするので、eSATA接続にした。そして「HD革命/Copy Drive Ver.4」を使って、「VPCF13AGJ」のデータを丸ごとコピーする。リカバリ領域もコピーできるため、交換後もハードディスクリカバリが利用できるはずだ。コピーには時間がかかったが、丸ごとバックアップを行う時には出たエラーが、なぜか丸ごとコピー時には出ずに完了したのはうれしい誤算であった。

ノートパソコンの場合はハードディスクが1台しか内蔵できないため、「裸族のお立ち台USB3.0eSATAプラス(CROSEU3)」 に「WD7500BPVT」を立て、外付け化する事で2台接続する。

「HD革命/Copy Drive Ver.4」を使って、「VPCF13AGJ」のハードディスクのデータを丸ごとコピーする。リカバリ領域もコピーできるため、便利だ。


ハードディスクを交換する

 それでは、実際にハードディスクの交換作業に入ろう。まずは「VPCF13AGJ」の電源を切り、ACアダプタを外し、バッテリも取り外しておく。もちろん、金属を触って体の静電気を逃がしておくのも忘れてはならない。そして、「VPCF13AGJ」を裏返す。裏側にはいくつかフタがあるが、そのうち、(裏返した状態で)左手前にあるのがハードディスクへアクセスできるフタである。「VPCF13AGJ」の場合、2カ所のフタと、Blu-rayドライブ用のネジが取り付けられているが、それぞれネジ穴の横に、点の数で分類してある。点1つがメモリスロット、点2つがハードディスク、点3つがBlu-rayドライブ用のネジなので、今回は点2つのマークが付いたネジ2つを外す事になる。ネジ2本を外して少し手前にスライドさせると簡単にフタを外すことができる。

VPCF13AGJを裏返した所である。作業に入る前にACアダプタだけでなくバッテリも外しておく。

左手前にある、点2つのマークが付いたネジを2本外す。

ネジを外して、少し手前にスライドさせると、簡単にフタを外すことができる。

 内部は金属のフレームがあるが、開けられた穴からハードディスクが見えるため、奥の方に隠れているのではないことがわかる。金属フレームの右上と左上にあるネジを外したら、右側にある透明のフィルムを左側に引っ張る。金属フレーム全体を少しスライドさせ、持ち上げると金属フレームごとハードディスクを取り外すことができる。

フタを外すと金属のパーツが見える。ここにハードディスクが固定されている。

ハードディスクを取り外すためには、右上と左上にあるネジを外す。

透明のフィルムが付いているので、これで左に少し引っ張り金属フレームを少しスライドさせると、金属フレームごと外すことができる。

ハードディスクを取り出した後の空間である。右側にSerialATAのコネクタがあるのが見える。

 取り出したハードディスクから、まず金属フレームを外す。側面4カ所のハードディスク固定用ネジ穴で固定されているのでネジを外せばフレームが外れる。出てきたのは、東芝の「MK5065GSX」というハードディスクであった。一般的な2.5インチハードディスクである。今回購入した、「WD7500BPVT」と比較しても、当然、サイズやコネクタ位置などは全く同じである。これならば問題なく換装ができそうだ。
 先ほどと逆の手順で今度は「WD7500BPVT」を金属フレームに取り付ける。そしてVPCF13AGJ本体に元通りに納める。取り外したときとは逆に右にスライドさせると、コネクタにしっかり接続できた感触があった。最後にふたを閉めてネジ止めして終了だ。ここまで特に位置がわからないところや、細かい作業、堅くて抜けにくいと言った箇所もなく、非常にスムーズに交換作業は進んだ。メーカーの保証範囲外の作業だが、作業自体の難易度は低いと言えるだろう。
 作業が完了したら起動してみる。ハードディスクの内容を丸ごとコピーしているため、特別設定も必要なく、いつも通りWindows 7が起動した。リカバリ領域もしっかり残っているため、リカバリ時も安心だ。違いと言えば、ハードディスク自体の容量が増えたため、空き容量が増えていることくらいだ。また、やや故障気味のハードディスクからのコピーしたものだったが、交換後は非常に安定しており、Internet Explorerが強制終了することもなくなった。

VPCF13AGJから取り外したハードディスクである。まだ金属フレームが付いた状態である。

金属フレームを外すには側面の4カ所のネジを外すだけである。ハードディスク固定用のネジ穴に、一般的なプラスネジで固定されている。

VPCF13AGJから取り外したハードディスクは東芝の「MK5065GSX」であった。500GBの容量で5400rpmの製品だ。


取り外した「MK5065GSX」(左)と、交換する「WD7500BPVT」(右)を並べたところである。シールの上下は逆だが、形状は当然ながら同じである。
「WD7500BPVT」を元のネジを使い金属フレームに固定する。問題なく固定することができた。

「WD7500BPVT」を金属フレームに取り付けたら、逆の手順でVPCF13AGJに戻してネジ止めする。こちらも何の問題もない。


ハードディスクの速度を比較する

 最後に、VPCF13AGJに搭載されていた「MK5065GSX」と、交換した「WD7500BPVT」の速度をベンチマークテストを利用して比較してみよう。いずれもVPCF13AGJに内蔵された状態で計測している。ちなみに、VPCF13AGJのスペックは、CPUがCore i7-740QM(1.73GHz)、メモリが4GB、OSがWindows 7 Professionalである。ベンチマークテストにはCrystalDiskMark 3.0を使用し、テストデータ1000MB、テスト回数5回としたものを、さらに3回実行して平均値を出している。「MK5065GSX」と「WD7500BPVT」のスペックは以下の通りである。

メーカー
Western Digital
東芝
型番
WD7500BPVT
MK5065GSX
容量
750GB
500GB
回転数
5400rpm
5400rpm
キャッシュ
8MB
8MB
プラッタ容量
375GB
250GB
シークタイム
12ms
12ms
インタフェース
SerialATA II
SerialATA II
動作音(シーク時)
26dB
25dB
動作音(アイドル時)
24dB
25dB
消費電力(リード/ライト時)
2.5W
1.5W
消費電力(アイドル時)
0.85W
0.75W

 これを見ると、回転数だけでなくキャッシュ容量なども同等であることが分かる。ただ、容量が増えているため、プラッタ容量も大きなものとになっており、容量が1.5倍になっている。動作音は、シーク時は上がり、アイドル時は下がっているが、1dBでは差は感じないだろう。消費電力が大幅に増えているのは気になるところだが、CPUやグラフィックチップなどと比べれば微々たるもので、バッテリ駆動時間に影響を与えるほどではないだろう。


 それでは、テスト結果を見てみよう。シーケンシャルリードは、「MK5065GSX」の68.34MB/sから大きく向上し、「WD7500BPVT」では100.94MB/sと5400rpmながら100MB/s超えを果たしている。シーケンシャルライトも61.29MB/sから88.87MB/sとこちらも大幅アップだ。それぞれ、47.7%と45.0%のアップとなる。プラッタ容量は50%アップしているとはいえ、回転数もキャッシュ容量も変わらずこの性能向上は驚きだ。
 ランダムアクセスの内、比較的大きなサイズの512Kのテスト結果を見ると、リード性能はやや向上しただけだが、ライト性能が2倍近い数値を示している。理由は不明だが、こちらも性能アップしていることは確実だ。ランダムアクセスの4Kのテストでも、リードが13.9%、ライトが8.2%アップしており、回転数はそのままでも確実な性能アップが確認できた。
 ちなみに、回転数が同じ事もあって、発熱や動作音は特にこれまでと変わったとは感じなかった。



 今回はメーカー製パソコンのハードディスクの交換を行った。大型ノートパソコンだけあって、ハードディスクには簡単にアクセスでき、交換後のトラブルもなく、安価に故障箇所を修理できた。その上、性能もアップしているというおまけ付きである。もちろん、メーカの保証対象外であり、トラブルが起きてもメーカー側では対応してもらえず、完全な自己責任となるが、修理費を抑えたいという人は検討してみても良いかもしれない。


(H.Intel)


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