石の森 第 110 号   ページ  /2002.7

 水神

金堀 則夫


タキは
急流をさし
瀧には龍が映る
常に空に向かって昇っているのだ
荒れ果てた祠の小さな巳さんが
周りの均衡を保っている
瀑布は
空を昇る龍なのだ
奮い立つ勢いは
畏れ多い瀧の神なのだ
谷川にも八またの大蛇が
ひとすじ流れている
八つの頭と八つの尾を振りながら
ときには暴れながら
川から空へ
昇ることのできない
瀧に向かって
蛇行しているのだ
ひとりのおとめを
ふたりのおとめを さんにん よにん
そして はちにんのおとめを
稲田の豊作待たずに
呑み込んでいく
大蛇を押さえる
勇者の
神話は生きているのか
退治した大蛇から生まれ出てくる
鉄が
この地の瀧なのだ
瀧は
龍を亡くし
ただの水として流れている
鉄は水から探し出された
宝刀なのだ
荒れ狂う大蛇も 龍も
生きているのか
村は 巳さんの祠を
改築するというが・・・


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