相田みつをさんの世界・・・・・・・・・。
『にんげんだもの』『雨の日には雨の中を
風の日には風の中を』etcより
花を支える枝 枝を支える幹
幹を支える根 根はみえねんだなあ
<切り捨てる>
わたしは長い歳月 上にのびることばかり考えてきて
土の中深く根を張ることを 忘れていたようです。
ヒョロヒョロと幹ばかり高くのびて雑然と枝葉が
ひろがるようになった時 幹や枝葉の重みに
耐えられない根の弱さにわたしは初めて気がついたのです
気がついた時には手おくれでした 手おくれとわかったとき
わたしは思いきって 枝葉をおとすことにしました
土の中の私の弱い根と細い幹に支えられるだけの
わずかな枝を残して あとはばっさりと切り捨てました
それは根の弱い幹の細い力のない者が なんとか自分を守りながら
生きてゆくための消極的な しかもそれなりに勇気のいる生活の智慧でした
とは言うものの枝葉をおとす時 わたしはやっぱりさびしい気がしました
もったいないなあと思いました しかしおかげさまでいまでは眼に見えない土の中で
弱った根が新たな活動を始めたようで 枝葉を切り捨てた分だけいやそれいじょうかも
だれにもわからない根だけが知る 静かな充実感を持ちながら
『 この世はわたしが わたしになるところ
あなたが あなたに なるところ 』
<トマトとメロン>
トマトにねえいくら肥料やったってさ〜
メロンにはならねんだなあ
トマトとねメロンをねいくら比べたって
しょうがねんだなあ
トマトよりメロンのほうが高級だ なんて思っているのは
人間だけだねそれもね欲のふかい人間だけだな
トマトもね メロンもね当事者同士は
比べも競走もしてねんだな トマトはトマトのいのちを
精一杯に生きているだけ メロンはメロンのいのちを
いのちいっぱいに 生きているだけ
トマトとメロンをね 二つ並べて比べたり
競走させたりしているのはそろばん片手の
人間だけ 当事者にしてみればいいめいわくのこと
『メロンになれメロンになれ!!
金のいっぱいできるメロンになれ!!』
と尻ひっぱたかれてノイローゼになったり
やけのやんぱちで暴れたりしているトマトが
いっぱいいるんじゃ ないかなあ
<そっとしておく>
余計なことだったかな うん 余計なことだったな
頼まれもしないのに 勝手に先回りして・・・・・
こっちは親切のつもりでやったことだけれど
当人にとっては 余計な<おせっかい>
だったかもそっとしておくことが
一番よかったのに
親切と言うなのおせっかい
そっとしておくおもいやり
慈善という名の巧妙な偽善
まだ青い稲の上をわたる
風の行方を見ながら
ひとりつぶやくあさでした
<そっとしておいて>
どうか ことばをかけないでください
ただ そっとしておいてください
わたしのことを ほんとうに思ってくれるならば
どうかもう なんにも言わないでください
どうか黙っていてください
わたしのことを こころから考えて
くれるならば
いまのわたしには どんなことばも どんな慰めごとも
役には立たないのですことばをかけられると
それだけで心の傷が痛むんです
ただそっとしておいてください ただ黙って遠くから
見ていてくださいいまのわたしにはそれが
一番いいんです 一番ありがたいんです
どうか なんにもしないでください
ことばをかけないでくださいただ
そっとしておいてください
<その人>
その人の前にでると 絶対にうそが言えない そういう人を持つといい
その人の顔を見ていると 絶対にごまかしが言えない そういう人を持つといい
その人の眼を見ていると
心にもないお世辞や世間的なお愛想は
言えなくなるそういう人を持つといい
その人の眼には どんな巧妙なカラクリも通じない
その人の眼に通じるも
ただほんとうのことだけ そういう人を持つがいい
人間にはあまりにも うそやごまかしが多いから
一生に一人はごまかしのきかぬ人を持つがいい
一生に一人でいい そういう人を持つといい