The Adventure of Van Rood Quester

ファン・ルード・クエスターの冒険

その7−遺跡脱出の計画

『起きろ!従者ファン、起きんかコラ!この役立たずがぁぁぁあ!』
そんな声がどこか遠くから聞こえてくる。
「んっ?んぐぐぐぅ」
思わず誰?っ言うおうとしたのだが、声がでない。
慌てて目を見開くと、そこには、マタタビを嗅いだ猫のように、うっとりとした目つきの半獣人の幸せそうな美女がいた。
そして俺の口の中では、ねちゃねちゃと彼女の舌が扇情的に動き回り、俺の舌を絡め取ったり、口腔内をチロチロとくすぐったりと、やりたい放題しているようだった。
「んぐっ、んぐぐっ」
慌てて首をふる俺。
だけどしっかり抱きかかえられているらしく、身動きすら禄に取れない。
何がなんだかわからないまま、しばらくたっぷりと口の中を蹂躙されてしまう。俺を抱き締めたケモノ耳の美女は幸福に浸り目を細めながら、水に飢えたドーブツのように舌を使ってぴちゃぴちゃと満足げに喉を鳴らしていた。
もちろん飲んでいるのは水ではなく、俺の唾液だ。
「んふぅ」
やがて、ねちゃという音がすると、その美貌が俺から遠ざかり、ずるっと口のなから獣人特有の長くザラザラした舌が引き抜かれていく。
「……はぁはぁはぁ…いっ…いったい?」
思わず呼吸困難になるほどの、長い長いキスにぼんやりとする俺。
『いったい?じゃないわ、たくっ、そんな半獣人の娘っ子一人で気をやって意識を失うとは……そんなことでこの俺様の従者が務まると思っているのか!いいかそんな気弱な態度ではこのペンス・ドーンの力を使いこなすことなど到底無理と知れ』
そう怒鳴るのは、柄に真っ赤な宝石をつけた一振りの豪奢な両手持ちのバスタードソードだった。
……え?…これは…そうだ…たしか俺は…ゴブリン退治に来て…
さっきのディープキスで酸欠状態になっていた俺の脳ミソに、徐々に記憶が蘇って来る。
……三人組の女冒険者達
……ゴブリンの遺跡
……床の抜けるトラップ
……知性ある剣の正体
……そして、ペンス・ドーンの支配の力
……そして、そして、あの美しい赤毛のセスティアの魅惑の肉体
って、ちょっと待てぇええええいっ
「ペンス・ドーンっっ!!」
俺は、がばっと目を見開くと、もう一度、あの無駄に豪奢な剣を睨みつける。
『なっ何だ?突然大声だして、脅かすな、たくっ従者のくせに生意気な』
そうだ、この目の前の剣がペンス・ドーン本人だったんだ。
正確にはペンス・ドーンの魂を柄にはめ込んだ宝石に封じて作られた魔法の品。
自称、聖剣ペンス・ドーン。
そしてその目的は、自らの遺体に封じ込めた異界の魔神の復活を阻止する事。
その今にも復活しちゃいそうな魔神の魔力の影響で、「赤牙」のセスティアがバーサークした。
それで、俺はそのセスティアを救うために、ペンス・ドーンから引き継いだ魅了の力で………
って、言うかもともと全ての元凶はこの「悪徳の騎士」が魔神なんかと契約したせいじゃないか。
「あっ、あんたのせいで俺は、それにセスティアさんもっっ」
俺は頭に血を登らせると、目の前に置かれているペンス・ドーンの剣に向かって殴りかかろうとする。
けど…
「なに?ファン呼んだ?」
自分の胸元から聞こえる艶やかで甘い声にピタリと動きがとまってしまう。
「せ、せ、セスティアさん?」
「うん♪そだよ……あっ、それとあたしのことは…セスって呼び捨てにしてくれると嬉しいな、あたしのファン」
そこには、俺の胸にもたれかかる様にして、スリスリと頬を摺り寄せる半裸の美しい獣人女性がいた。
その瞳はうっとりと全幅の信頼を寄せて此方見つめており、しなやかな指先でモジモジと俺の肩口をいじっている。
こっ…これは…
『うはははは、どうだファン、気分が良いものだろう、女をモノにするってのは、うははは、これが俺様の力だ!おそれいったか、ひれふせ、拝め、奉れぇえ、うははははははのは』
柄の宝石がこれ以上ないってぐらい轟々と音をたてて光を放ち、高らかな笑い声をあげている。
「うははははのは」
そしてその剣の根元で、もう一匹おバカな鉱石妖精のリ・クリルがこちらも意味も無く胸をはって高笑いをマネしている
なんだろう、とっても頭が痛くなってくるのだが。
俺は思わずズキズキと偏頭痛のする額をおさえて首をふる。
「どうした?あたしのファン、気分が悪いのか?」
そんな俺の鼻先に、「赤牙」のセスティアその凛々しい眉を潜め、優しい声とともに、心配そうに覗き込んでくる。
「なぁ?痛いとこがあったら言ってみろ?あたしが舐めて治してやる、どうしたファン?」
ぴったりと俺にしがみつくスベスベとした獣毛に覆われた艶やかな肌。
しなやかに絡みつくスタイル抜群の腰と驚くほど長く綺麗な脚。
そして、なによりたっぷりと張り出した爆乳が柔らかく、むにゅっと押し付けられている感触が……たっ堪らないですっ。
あうぅぅ…そうだ…俺…ついさっきまで、この美しい女獣人と、その色々しちゃってたんだ。
あうぅ、思い出しただけで、股間がまた大きくなってきてしまう。
あんなに凄くすっきりするまで出しまくったのに、またすぐに元気になってくる。
それだけセスティアのグラマラスで肉感的な肢体は、魅惑的だった。
もう、やり尽くして種がかれてもいいと思うまで抱きつくしたくなって……いっいけない、このままでは俺は「二代目悪徳の騎士」とかそんな不名誉なモノになってしまう。
そうは思っては、俺の体は素直に密着する美女の体に反応し、ムクムクと大きくなってしまう。
「あは、ファンったら♪ そうか、まだ交尾し足りないんだな、ふふふ、わたしならいつでもいい大丈夫、ファンにこの身も誇りも全て捧げたんだ、さあ、ファンの性欲処理に好きなだけあたしを使ってくれ……あっ、でもさ、その、できたらでいいんだけど…さっ最後は、ココの中にまた子種をたっぷり注いでくれると嬉しいかな、さっきので病みつきになっちゃた♪」
そんな俺の様子に、いち早く気がついたセスティアが、俺のビクビクと脈打つナニをみながら、自分の引き締まった腹部をそっと寄せてくる。
「うわぁ、いいよ、いいったら、いっ今はまだいいって、うん、ちょっちょっとまって状況確認、それ大事」
俺はあわてて顔を真っ赤にしながら大声をだす。
「ん?そう、じゃあ待つ、あたしはファンの言う通りにするよ……あのさ、でも、ヤリたくなったら何時でもあたしに言うんだぞ?あたしはもうこの身全てファンのモノなんだからな」
しゅんっと耳を垂れて、残念そうにこっちを覗き込んでくるケモノ美女。
あううっ、そんな顔しないでくれ…俺だって状況が状況じゃなきゃ……って、そうだ。
「セスティアさん全然元に戻ってないじゃないか!」
俺は暢気にこっちを見てる……ような感じのする「悪徳の騎士」の剣に向かって歯をむいて声を荒げる。
『うははは、まぁそう怒るな小僧、見てみろその女を、魔神の影響は確実に抜けているではないか。さっきも言ったが魔法を打ち消せるのは魔法だけだ。今はその女はお前の力ですっかり支配されているわけだ、万事解決だろうが……とまあ、そんなことより、今度からはもっと積極的にいかんといかんぞ!特にあの責め られるばかりの姿勢はいかん!男ならもっと無理やり押さえつけてズッコンバッコンとだなぁ…』
「そんなことはどうでもいい、元に戻さないと!」
俺は腕の中でゴロゴロと喉を鳴らしてスタイル抜群の体を擦りつけてくる獣人美女を意識しながら、ペンス・ドーンの無駄話を切り捨てる。
『あぁ、それは無理だな』
だが、それに答えたのあっさりとしたペンス・ドーンの返事だった。
「へ?…無理って?」
『うははは、俺様ゆずりの支配の力は完璧だぞ、そんじゃそこらの魔法では解呪できん、まさに完璧、最高、究極だぁ、どうだまいったか、誉めてくれていいぞ!うはははのは』
またしも柄の宝石が轟々と音をたてて光り、高らかな笑い声をあげだす。
そして、
「うはははのは」
つられてリ・クリルも頭にキンキン響く高い声で笑い出す。
あっ…胃が、胃が痛い。
思わず「うぐぅ」とうなってうなだれしまう。
だが、そんないつもなら孤軍奮闘の俺の様子に、敏感に反応してくる稀有な存在が今はいる事を忘れていた。
「お前、あたしのファンの敵か?」
俺の胸の中でまるで昼寝するように目を細めていたセスティアの瞳が、ギロリと剣呑に輝くと、獣化した爪が鋭く輝く。
その目線の先にあるのは『うはははのは』と高笑いをしていたペンス・ドーンの剣。
『へ?…なっ…ちょっ…ちょっとまてお嬢さんっ、俺様はそこの小僧に力を貸してやった張本人、つまりはお前は俺様の奴隷でもあるんだぞ』
戦闘態勢の獣人の鋭い瞳に、ペンス・ドーンは宝石をチカチカまたたかせながら、慌てた裏声をだしている。
案外、ビビりな性格みたいだ。
まぁそうじゃなきゃ、あんな卑怯な力を魔神と契約して手に入れようとしないよな……
「黙れ、あたしはお前みたいな魔法の剣なんか知らない、あたしの主人はファンだけだ、そのファンを害する奴はだれだろうとかまわない……殺す」
そう言うやいなや麗しく危険な獣人の女戦士は、シュッと軽やかに飛び上がっていた。
その優美な肢体は瞬きする間にペンス・ドーンの側に降り立つと、柄につけられ宝石の部分を爪を伸ばした手で、ガシッと鷲掴みにする。
次の瞬間、ギリギリっと物凄い音がすると、柄につけられた飾りごとセスの手がペンス・ドーンを握りつぶしだす。
さすがセスティア、まさに有限実行、本当に容赦ないな。
『ちょちょ…ちょっとまてぇ…やっやめんかぁぁ』
「断る、ファンの敵はあたしの敵だ」
その声の響きは俺が聞いたこともないほど低くて、とっても恐ろしげだ。
他人事と判っていても、とっても怖い。
「やっちゃえぇ、やっちゃぇ」
その足元では、リ・クリルが意味も無く嬉しそうに手をバタバタさせている。
『やっやめんかぁ、おい小僧何見とるぅっ、早くこいつをとめろぉ、ぐおぉっ、なんて力だ、この宝石は……ひぃ、マジ割れてきたぞ、おい、小僧、はっ、はっはやくせんかぁぁ、お、お前は俺様の従者だろうがぁ』
なんだか声がどんどん必死になっている。
その間も、爛々と怒りに燃える瞳で剣の柄を握り潰そうとする鋭い目つきのセスティア。
はっきりいって俺も、そんな獣人の女戦士に声をかけるのは怖いんですけど。
「…あっ…あの、セスティアさん…セス……はっはなしてやってくれないか?」
恐る恐る、へっぴり腰で声をかける俺。
「んっ?わかった、ファンがそう言うなら」
ちらりと俺に流し目をおくると、セスティアはギリギリと音を立てていた指を、あっさり離す。
剣の柄の白鳥を模した飾りはぐにゃりと無残に曲がり、赤い宝石にも幾つか亀裂が入っていた。
『はぁはぁはぁ…もっ…もうちょっとで魂ごと消えるとこだったぞ…いやホントに』
その宝石の奥で、チロチロと力なく光が揺らめいている。
「おい、お前、今度あたしのファンをバカにしてみろ…一秒で握りつぶしてやる」
セスティアの三白眼が、弱々しい光を放つ宝石をぎろっと睨みつける。
『ひっ……すいませっ……ごほっん…とっ…とりあえず、ファン、お前が俺様を持ってろ、なっ何があるわからないし、お前は俺様の従者なんだからな』
腰に手をやって悠然とたつ全裸の麗しい獣人戦士に怯えながら、ペンス・ドーンが情けない声をかけてくる。
ほんとに全ての女性を虜にしたあの伝説の「悪徳の騎士」ペンス・ドーンなんだろうか…
この全ての元凶を今ここで粉砕してやりたいところなんだけど、それじゃ何の解決にもならない。
それに、セスティアがこんな事になったとはいえ、一応あのバーサークから命を助けて貰ったのは間違いない。
何より、話が全て本当ならこの剣の力を借りないといけない事態がまだありそうだ。
「……ふう……わかった」
俺は嘆息しながら立ち上がると、砂地に半ば埋もれているペンス・ドーンの柄に手をかけ、持ち上げる。
飾りのゴテゴテついた鞘に入っているためか、けっこうずっしりくる重さだ。
しかもペンス・ドーンは、今まで使っていた中古の片手用ブロードソードとは違い、両手用のグレートソード並の大きさで、俺には使い込なせないだろう。まったくの無駄な拾い物だ。
「ところで、従者って何の事だ?」
俺は、『ひいっ、たっ、助かったぁ』と小声で呟いているペンス・ドーンの剣を掴み上げながら聞いてみる。
『んあ?あぁ従者の事か?俺様の力を貸し与える時に、師従の契約をむすんだではないか、お前は今日からこの「誉れの騎士」ペンス・ドーンの従者ファンってわけだ、くくくっ、ついにこの俺様にも従者ができたか、うははははは』
カタカタと剣が鍔なりをはじめる。
どうやら自慢げに高笑いしているみたいだ。
まぁこんな性格だから生前従者の一人もつかなかったのだろう……
そんな奴の従者にされちゃった俺って、一体……
「そうなんだ……よかったな」
俺は、何かもう言い争いをする気もなく、胃の辺りがシクシクと痛み出すのを感じだながら肩を落とす。
『こら、ファン!何をぼやっとしておる、荷物をまとめてさっそく出発だ、異界の魔神を倒すためにな!うははははは』
ちょっと、再封印するんじゃなかったの?
あ…なんだか頭も痛くなってきた。
「あたしもやるよ、ファンのために」
頬を染め尻尾を振りながら俺を熱い眼差しで見つめてくる女獣戦士セスティア。
「あたしも手伝う〜」
意味も無く首をつっこみたがる鉱石妖精リ・クリル。
『うはははははは』
そして、いまだに俺の手の中で高笑いを続ける元「悪徳の騎士」自称聖剣ペンス・ドーン。
「………ハハハ」
俺は、頬を引きつらせてぎこちない笑みを浮かべるしかなかった。


それからしばらく後、俺は、セスに素手であっけなく破壊された革鎧をあきらめ、予備の麻の服に着替えると、頼りがいがあるのか無いのかわからないペンス・ドーンの剣を履き、ランタンを片手に、やや広めの石造りの通路歩いていた。
ちなみに今まで使っていた中古のブロードソードは、ここに落下した時に石床の残骸にはさまれ使い物にならくなっていた。
……俺の唯一の貴重品だったのに。
へこみまくる俺の頭上では、「はらへった、ふぁん、はらへりへりぃ」と意味も無く嬌声あげる絶対頼りがいのない、いや頼ったら破滅を見ること間違いなしの鉱石妖精リ・クリルが手足をばたつかせている。
そして俺の隣では、こちらは頼りがい十分の歴戦の戦士であり、凛々しい美貌とグラマラスなスタイルを持つ女獣人セスティアが、グレートアックスを構えて護衛してくれていた。
残念ながらセスの防具も、俺との激しい攻防の際、脱ぐのが面倒と言う理由で本人の手で引き裂かれ半壊したため、今は、たっぷりと張り出した胸元と、引き締まった腰まわりを布きれで覆うだけと言う、なんともワイルドで際どい原始的なビキニスタイルだ。
鎧を修繕すればいいのだが、その重量感たっぷりに突き出した胸元や、長くすべすべの美脚に、俺が見とれている事に気がつくと、セスはサービス精神たっぷりに身をくねらせれ、半壊した鎧を惜しげもなく捨て、その見事な半裸姿で行く事に決めたらしい。
まぁ、身軽な方がいい時もあるしな。うん。
ただ、俺が常に前かがみになってしまうのはどうにも困る。
それはともかく、俺達はペンス・ドーンの剣が放置されていた地下の広間をでて、遺跡内を結構な距離つき進んでいた。
ペンス・ドーンは『魔神復活が近いぞ、世界の危機が今ここに!ファン、さあ俺様と一緒に魔神を倒すのだ』とことあるごとに脅しめいたセリフで俺に命じてくるが、それに律儀に反応しているは、地下と言うことでテンションただ上がりの鉱石妖精リ・クリルだけだった。
「ふぁん、ふぁん、まじん、まじんごーっ、やばいね、やばいよね、おなかしゅいたーーっ、うひゃひゃひゃ」
『その通りだ、妖精の幼女、魔神はヤバイ、まじヤバイ、という訳で、さあファン今こそ俺様の従者として、この俺様を信じてともに戦うのだ、この世の全ての美女達のため、つまりは世界のために、魔神を倒すのだ!うはははは』
ペンス・ドーンの高笑いとリ・クリルの嬌声がまったく噛み合わない相乗効果で、時をおうごとにうるさくなっていく。
アホはアホ同士いいコンビらしい。
もっとも、俺はペンス・ドーンとの契約通りに魔神を再封印、または倒す気なんかさらさらない。
いかにこの「悪徳の騎士」に女性を支配する何ともコメントしずらい力を与えたとはいえ、相手は魔神、そう神様の類なのだ。
名の無い何処かの小神か、下位の従属神、はたまた半神(デミゴット)だったとしても、一介の冒険者、しかも駆け出しの俺が手をだせる相手ではない事は、考える間もなく明白だ。いや、例え俺が英雄譚に名を馳せるような勇者でも神を倒すことは、不可能だ。
神ってのは不滅だから神なのだ。神を倒せるのは、同じ不滅の存在である別の神だけだ。人間に唯一できる事は、過去のペンス・ドーンが自分の遺体に魔神を封じたように、この世界への干渉を防ぐ事ぐらいだろう。
そこで、俺の考えた案は二つ。
一つ目は、件の魔神の魔力が、残る女性達、森エルフの「魔弾」フィーセリナと鬼巫女の「静謐」更紗を操り魔神を開放してしまう前に、二人を助け出し、この遺跡を抜け出す。
二つ目は、酷いようだが、二人は見捨てこの遺跡から脱出し、都の騎士団に助けを求めにいく。
実際、自分の力量を考えれば後者がベターだろう。ベストじゃないけど。
だけど、そんな考えは、あっという間に崩れ去っていた。
何せ、遺跡内部の通路は迷宮のように入り組んでおり、帰り道がわからないのだ。
この遺跡を造ったはずのペンス・ドーンは『うはははは、何せ昔のことだしな、けっこう色々凝った造りをしたから、俺様も忘れてしまっ…おい、ファンやめろ、そのケダモノ女をけしかけるなぁっ、ほんと、ほんとなんだ、やめ、握りつぶされるぅぅ』と役に立たない。
自称、魔神封印の見張り役じゃなかったのかと問い詰めたい。
一方、セスティアの話では、俺とリ・クリルが、落とし床の罠にひかかった偽の棺があったトラップ部屋の奥に、やはり魔法で隠された扉があったらしい。
その先の地下迷宮には、無数のトラップと、侵入者を無差別に襲う石製のゴーレムが無数に配置されており、それらを排除している間に、セスティアは徐々に意識を正常に保てなくなり、何時の間にか仲間とはぐれてしまったらしい。
そして次に正気に戻った時には、俺に抱かれて今にいたるというわけで、道順なんか当然覚えていないらしい。
こうなったら、とりあず定番のダンジョンマッピングをしながら地道に帰還路を探すしかない。
途中で、フィーセリナと更紗を見つければ御の字、脱出前に間に合わず魔神が復活したら……考えるのはよそう。
「とほほほほ」
思わず自分の境遇に情けない吐息を吐き出してしまう。
「大丈夫、何があってもあたしがファンを守るから」
素敵な笑みを見せるセスティアが、横から、ぺろっと俺の頬を舐めて元気づけてくれる。
「あひっ、ありがとな」
それだけで、セスとの身を焦がすような快楽の記憶が連想され、思わず股間を熱くしてしまう。
こんな時じゃなければ、きっと、隣を凛々しく歩く獣人の女戦士を迷わず押し倒し、あのねっとりと甘い肉壷の中に、常に硬くなってしかたない自分のナニをつっこんでいただろう。
…っと、いっいけない、理性、理性を保たないと。
なんせ、一度でもヤリだしてしまうと小一時間は止まらないのは、先程小休憩した時に、すでに学習済みだ。
そうです、すいません。
ちょっと小休憩した時に、誘惑に負けセスティアの魅惑の爆乳にもたれかかかってしまい、気がついたら猿のように腰をふって励んでいたわけで……美貌の女戦士の膣内に、またしても中出しシテしまいました。
しかも出した後、溢れないように何度も何度も奥までつき込んで……って思い出しちゃいかん。
ううっさらに股間がドクドクと硬くなってくる。
「どうしたファン疲れたか?また休憩しようか?そうだ、今度は口でおしゃぶりしてやろうか?」
ぺろっと唇を卑猥に舐めながら、セスティアが、赤い唇を開き、ご自慢の長いザラザラの舌を見せてくる。
「あうぅ、セス、そっ、そうじゃなくて」
思わずその、魅力的な唇に吸いつきそうになりながら、俺は必死で抵抗する。
「わかってるよファン、最後はあたしの中にザーメンぶちまけたいんだろ?いいよ、あたしの体、好きなように使ってくれて、あたしはファン専用だからな」
そんな俺の葛藤わかって誘惑しているのか、セスは魅力的に引き締まった自分のお腹をそっと撫でて「ここにまたぶち込でくれよな」っと嬉しそうにニッコリ笑いかけてくる。
「だっだから、そんな暇はないんだって、説明したろ急がないと」
「んっ?そっかぁ……そうだ、時間がないなら、立ったままハメてくれてもいいぞ、ほら、あたしこの壁に手をつくから、ファンは後ろからさ、立ち小便するみたいに精液あたしの中にだしてくれていいよ」
陽気にそう言いながら、巨大なアックスを軽々と担ぐ歴戦の美女戦士は、名案だろ言わんばかりに、得意げにケモノ耳をピクピクさせ尻尾を楽しげに振っていた。
何とも暢気だが、実際のところ、この美しさと強さを兼ね備えたセスティアがいなければ、こんなに堂々と遺跡の中を歩きまわる事はできなかっただろう。
セスティアはお気楽に俺にスケベな誘いをかけながらも、常にあたりに細心の注意をはかり、その天性の戦士の勘で危険な罠の場所を教え、襲い掛かってくる遺跡の石像ゴーレムをやすやすと打ち倒してくれていた。
しかも、魔神の力で正気失い別れしまった仲間達のため、パーティ内の暗号用の書置きを、分岐点ごとの遺跡の壁に書き残したりと、いかにも手練れの冒険者らしい作業も忘れていない。
自らトラップを誘発するリ・クリルや、自分で設置したはずの罠やら石像ゴーレムのコントロール方法すら忘却しているペンス・ドーンとはもはや比較に成らない。
もっとも、罠も感知できず、石の怪物にろくに傷一つつけられない俺も、同様に役にたっていないのは言うまでもない事だった。

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