やまがた文庫インデックス
ぺんぺんぐさ



ぺんぺんぐさ 巻之三

本間郡兵衛のこと
 

志田火路司



 わたしが新人物往来社の『郷土人物事典』を読んで、やまがたゆかりの人物をテキストファイルに打ち込みはじめたのは、記録をさかのぼると2001年の10月5日となっています。

 関連事項としては、
●雇用創出対策・失業対策として、デジタルアーカイブ事業のアイデアを具体的にねりはじめたのが9月2日
●石原莞爾や平将門のことを記述したのが9月19日
●『西川町史年表』の中から大井沢(わたしの出身地)に関する項目を打ち込みはじめたのが9月22日
●石原莞爾に関する書籍の出版を具体的に考えたのが10月11日
……といったところです。

 青空文庫や電子図書館、デジタルアーカイブに興味をもったのはそれ以前ですが、「やまがた」という地方の文化と「電子図書・デジタルアーカイブ」がわたしのイメージのなかでむすびついたのは、ことしの9月から10月にかけてです。この時期に、アイデアが具体化したのには必然性があると思います。なぜかというと、この時期は、わたし自身、あるいはわたしをとりかこむ現代社会が大きな課題に直面したときだからです。
 つまり、失業対策・雇用対策が現代日本の大きな現実問題になったことがひとつ、狂牛病に代表される食糧の安全供給が問題になったことがひとつ、そして、ニューヨーク同時テロ爆破事件がつきつけた、現代社会・現代世界への恐怖とその余波です。

 現代社会がさまざまな問題にさらされたというのはわかるが、それと、「やまがた」がどうむすびつくのか? と疑問をいだく方もいらっしゃるだろうと思います。「こじつけにすぎない」と思われる方もいるかもしれません。

 くわしい解説は、ここではあえてふせておきたいと思います。機会があればあらためて記したいと思います。すくなくとも「やまがた文庫インデックス」をつくる動機として、それらが、おおきく関与していることを述べておくにとどめたいと思います。

 さて、表題の「本間郡兵衛」ですが、今回、この活動をはじめたのがきっかけで知ることのできた、郷土ゆかりの人物のひとりです。酒田、本間宗家とは分家筋の商人の家に生まれ、杉田塾で蘭学をまなび、葛飾北斎の弟子にもなり、勝海舟とも面識があったといいます。さらに、海外への留学経験があり、坂本龍馬の亀山社中設立にも影響を与えたという。そして衝撃的なのは、酒田へ帰郷したさいに、薩摩藩のスパイの疑いで、毒殺されたらしいという事実です。数行たらずの説明書きでしたが、興味をいだくには充分の内容でした。ナゼ? ナニ? ドンナ? ダレ? まったく疑問だらけです。
 ためしに、図書館で「ホンマグンベエ」を検索したところ、『黎明の人・本間郡兵衛』()という書籍に出会いました。たいへんおもしろい内容でした。同時代の同じ郷土出身であった佐藤政養(遊佐出身)とは、かなり親密な設定でした。海舟のもとで、二人とも弟子であったにもかかわらず、ひとりは故郷で毒殺され、ひとりは明治新政府のなかで重要な役をになっていく……。同時代人といえば、清河八郎(田川出身)や河井継之助(長岡出身)も、のがせません。
 『黎明の人』は、内容がおもしろいぶん、どこまで史実として読めばいいのか、どこが創作・フィクションなのか、あるいは、おおむねこのとおりの人物とかんがえていいのかわからないのが悩みどころです(歴史上の人物を題材にしている小説は、多かれ少なかれ、同じ問題をかかえているものですし、それを非難するのはヤボですけれども)。「事実」にもとづいた研究や評価がさかんになることが待たれるところです。



2001.12.15
志田


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