怪談一般
口裂け女 人面犬 悪夢 悪夢2 カシマレイコ
悪夢3 田中君 ムラサキカガミ リカちゃん サッちゃん
ひきこさん アンサー 夢の試練 さとるくん
残されていたもの コインロッカー・ベビー 未来の夫 骨こぶり
霊の通り道 血まみれの兵士 天狗の新聞 滑り台が消えたワケ
額縁の裏


 口裂け女

 学校帰りの小学生などに向かって「私きれい?」と尋ねてくる謎の女性。パッと見は整った顔立ちの美人なのだが、非常に大きなマスクで口元を隠している。不自然に思いながらも「きれい」と答えると、マスクの下の口を見せて「これでも?」と聞く。マスクの下から現れる口は耳元まで裂けている。その素顔は、お世辞にもきれいなどとは言えず、子供のことなので恐怖に立ち竦んでいると、懐から鎌を取り出し襲い掛かってくるという。


■参考1(情報提供:ゴゴTさん)

はじめまして。
懐かしいの口裂け女ですが、
某広告代理店が口コミの威力を
調査するために流した噂、という説
もあるようですね。
一日で日本全土を駆け巡ったとか・・・
ただ、当時、私が住んでた日本最東端の地では
他地方よりかなり遅れて噂が流れてきた
ようなので、そのことも都市伝説なんでしょうね。

※ゴゴTさん、情報提供ありがとうございました。

■参考2(情報提供:綾虎さん)

ちょっと前のナイ*イサイズでCIAの謀略って言う話も出てましたよね。
番組中ですぐさま否定的な結論に落ち着いてましたけど。

※綾虎さん、情報提供ありがとうございました。

 怪談系の都市伝説の中ではもっとも有名な話なのではないか。日本各地で目撃情報があり、20年近く前に教育現場では、実際に口裂け女に対する対策が立てられるなど、全国的に社会問題になった話。

 口が裂けているのは整形手術の失敗のためだという。整形の際に小さな口を大きく(あるいは大きな口を小さく)したのだが、気に入った形にならず、何度も大きさを変えているうちに裂けたままどうしようもなくなってしまった、というもの。また、一度は手術が成功したものの、化粧品や整髪料(ポマード)などが、手術跡に悪影響して肉がただれ、やがて口が裂けた、という話もある。

 実在の犯罪者、変質者の類のようでもあるが、以下のような妖怪・化け物じみた特徴がある
 ・かなりの高速(時速80km?)で追いかけて来るのでとても走って逃げられるものではない
 ・ポマードを非常に恐れていて、そのポマードという言葉を聞いただけでもたじろぐ
 ・べっこうあめが好物

 三人姉妹の一人だという話もある。また、かなり希な例だが、「カシマレイコ」が本名とも。話の混同が起きているのかもしれない。大きな騒動となった80年代の口裂け女の噂の発祥地は、岐阜県内であると言われている。マスコミ各誌に口裂け女の記事が初出した時期と、掲載された発生・伝播の経緯は以下の通り。

1979年3月23日付 週刊朝日
78年暮れ岐阜県内で発生、翌年2月滋賀県東部、3月京都府内へ伝播

1979年1月26日付 岐阜日日新聞
岐阜市内で発生

1979年6月26日付 週刊朝日
岐阜県八百津町で発生、最初の目撃者は老婆だったと言い、そのストーリーは「のっぺらぼう」の怪談のパターンを踏襲するもの
 





 人面犬

 人面犬は、その名の通り人の顔をした犬である。基本的には特に人間に害をもたらす存在ではないが、話し掛けると「ほっといてくれよ」などと、人語を話す。

1、東名高速道路を東京方面に走っていた人が、得体の知れない何かに追い越されていったことに気づいた。よく見るとちょうど柴犬のような感じのものだった。しかし、犬が車を追い越すほどの高速で走れるはずがない。ぞっとするものを感じたが、その人が本当に驚いたのはそのあとだった。
車のほうを振り返ったその犬のような生き物の顔は、人のそれだった。パニック状態に陥ったその運転手はハンドル操作を誤り、事故を起こしてしまった。
同じような事故は続発し、県警が調べたところ人面犬の存在は確かに確認されたそうだ。

2、あるレストランの裏口にはゴミ箱があって、よく野良犬などが残飯などを漁りに来ていた。そのため、店の人間は時々ゴミ箱のところへ行き、犬を追い払うようにしていた。そのときもいつもと同じようにゴミ漁りに来ていた犬を追い払ったのだが、その犬は振り返って「ほっといてくれよ」と言った。


■参考:くだん
 人面牛身の妖怪。漢字で書くと人偏に牛で「件」。生まれると同時に必ず当たる予言をし、間もなく死ぬのだという。天保7年(1836年)には丹波国でくだんの出現を伝える瓦版が発行されている。比較的新しいところでは、昭和19年岡山でくだんが生まれたという。そのときの予言の内容は日本の敗戦だったそうだ。

 10年程前に世間を騒がせた犬。口裂け女と同様に各地で目撃証言があった。その証言を総合すると、人面犬は北に向かってどんどん移動していき、やがて足取りがつかめなくなったようである。

 人面犬のブーム以降、一時期は「人面○○」といったものが多く取り沙汰された。代表格は顔周りの模様が人の顔のように見える錦鯉・人面魚だろう。ブームが下火になった頃には、佃煮にされた人面魚もいたようで、食べれば不老長生をもたらすと言う人魚の肉に引っ掛けてか、長命の珍味のような売り出され方もしたようだが、この件の詳細については未確認。人面犬の佃煮には何となく不気味なイメージも漂うが、冷徹に見れば鯉の佃煮に過ぎず、別に珍しくも奇異でもない。

 人面犬の顔が、犬に襲われて亡くなった女性の顔だったという話もある。狂犬病よろしく「人面犬」が伝染するイメージなのか。

 人面犬誕生の経緯については、筑波のあるバイオ技術の研究所で、ちょっとしたミスから研究者と犬のDNAを掛け合わせて生み出された生物で、それが逃げ出したため白衣の研究者が東京都内で人面犬を捜索していたという話がある。他にも犬の散歩中に犬ともども暴走族にひき殺された人の霊であるという説もある。SF映画「ボディ・スナッチャーズ」がモデルとも言われる。

 人面犬の話に関しては、どういうわけか「自分たち(あるいは身内)が広めた」という有名人が多い。実は人面犬の噂は、もともとメディアが広めたような噂なのである。そのあたりの事情となんらかの関係があるのだろうか。
 





 悪夢

 ある人が、帰宅の途中に斧をもった男に追い掛け回され、殺されるという夢を見た。数日後、そのときの夢と同じような状況で怪しい男と出会った。なぜか「このままでは殺される」と直感し、母親に電話を入れて迎えに来てもらった。すると、その男が「夢と違うことをするんじゃねぇ」と言った。

 都市伝説では悪夢が正夢になる話が多いらしく、この話もそのひとつ。ホラー系ショートショートとでも評せそうな、かなり洗練された話だと思う。
 





 悪夢2 カシマレイコ

 夢の中にカシマレイコという女性が現れる。そして「足が要るか?」と聞いてくる。このとき、「要らない」と答えると、足をとられてしまう。「要る」と答えた場合「カシマさんの”カ”は仮面の”仮”、”シ”は死人の”死”、”マ”は悪魔の”魔”」と言う呪文を唱えれば助かる。
 この話を聞いた場合、3日以内にカシマレイコが夢に現れるという。

 学校の怪談でも登場し、口裂け女の本名とされているカシマレイコが夢に現れる話。いろいろな話に流用される「カシマレイコ」という名前の特性には興味をひかれる。

 カシマレイコが何者なのかは不明だが、助かるための方法が示されているのは他の場合と同じ。
 





 悪夢3 田中君

 田中君は仲間たちと一緒にツーリングに出かけたが行方不明になってしまった。その田中君が夢の中にあらわれる、という話。夢の内容は、後ろから肩をたたかれるので振り返ってみると、体半分がぐちゃぐちゃになった田中君が立っていた。この夢を見ると数日のうちに死んでしまうが、このことを知っていた人は肩をたたかれても振り向かず、そのせいか死ぬことはなかったという。

 この話も悪夢の都市伝説のひとつの典型的なパターン。不吉・不気味な夢を見てしばらくすると死んでしまうというパターンも多い。

 「自分が死んだ事に気づかないまま、生きている仲間を自分の方に誘おうとする死者」という怪談話で割とよく見られるモチーフの変形にも見える。
 





 ムラサキカガミ

「ムラサキカガミ」という言葉を20歳までに忘れないと呪われる。

 「ムラサキカガミ」という言葉のもつ意味は関係なく、20歳までにその言葉やその鏡の存在を忘れないと呪われると言うもの。呪われるとどうなるのかについては不明。「呪われる」という以上に突っ込んだ設定は必要ないのかもしれない。「呪われる」という部分は、「不幸になる」とか「死ぬ」というように表現される場合がある。「結婚できない」というものもあるようだ。

 「ムラサキカガミ」というのは、鏡を使った(呪いの)儀式から来ているらしい…と説明される事もある。その話の大まかな内容は、ムラサキカガミという名前そのままに、鏡を紫色の塗るというもの。

 その一方で、呪いとか儀式とかと言った意味合いがあるわけではないとする話もある。「親にもらったインド製の鏡をいたずらで紫色に塗って、そのことを忘れてしまい、20歳になったときにそれを取り出したら死んでしまった、という話が元になっているらしい」というようなもの。

 ムラサキカガミと同じような呪いの言葉として、他に現段階で分かっているものとして「赤い沼」、「紫の亀」、「黄色いハンカチ」、「イルカ島」、「銀色のナイフ」。逆に呪いの効果を打ち消す言葉としては、「水色の鏡」、「白い水晶玉」、「助けてホワイトパワー」。
 





 リカちゃん

1、数年前に茨城の工場で機械が故障して3本足のリカちゃん人形が製造されてしまったという。その人形はいったんは市場に流通したものの、工場関係者の手で回収された。しかし、何体かはいまだに回収されないままだという。

2、ある女性がトイレに入ったとき、個室内にリカちゃん人形が転がっていた。そんな場所に人形が落ちているのを不審に思って拾い上げてみると、その人形には土気色をした3本目の足がついていた。思わず人形を落とすと、そのリカちゃんはリカちゃん電話と同じ声で「私、リカちゃん。でも呪われてるの」と繰り返した。女性は恐怖のあまり、人形を放り出してその場から逃げ出してしまった。しかし、その後もリカちゃん人形の声が耳からはなれず、女性は自分の鼓膜を破ってしまったのだという。

3、ある女の子が両親の仕事の都合で遠くに引っ越すことになった。その引越しのときに、長年大切にしていたリカちゃん人形を捨てていくことにした。
引っ越してからしばらく経ったある日、彼女のところに電話がかかってきた。「もしもし、私リカちゃん。よくも捨ててくれたわね。同じ目にあわせてやるから憶えてなさい」。最初はただのいたずらと思ったのだが、その後も不気味な電話は続いた。
「もしもし、私リカちゃん。今あなたのいる県についたの。これからあなたのところに向かうから。」
そして翌日の夕方。
「もしもし、私リカちゃん。今近くの駅についたの。迎えに来てね。待ってるから。」
女の子は、怖くなってそのまま電話を切ってしまった。その日の深夜、再び電話がかかってきたが女の子は決して受話器をとろうとしなかった。すると、留守電の応答メッセージが始まり、そしてリカちゃん電話と同じあの声が聞こえてきた。
「もしもし、私リカちゃん。ずっと待ってたのに迎えに来てくれなかったわね。でも、お家はもう分かってるのよ。今は・・・お前の後ろだぁ!」

 1と2はともに「3本足のリカちゃん」に関する話。ただし、この二つは連続したひとつの話ではないようだ。1の話では、3本目の足はあくまで機械の不調でついてしまったもので、本来の2本の足と同じ作り物の足であり、呪いという事までは触れられていないのだが、2の話では、問題の3本目は「人肉でできている」という説明がつくことがあり(土気色という表現がつくのはそのことと関連しているといえる)、3本足のリカちゃんは呪われた存在として扱われている。

 リカちゃんがらみでかなり有名な話が3。結末にいろいろなパターンがあり、振り返るとそこにリカちゃん人形が立っていて、包丁で刺されたり、人形にされてしまったり、翌朝になると女の子の姿が消え、後には薄汚れたリカちゃん人形だけが残っているなどがある。また、上で紹介したように結末が語られない事もある。

 「メリーさん」というタイトルでよく似た話もある。これらの電話怪談のモチーフは、鈴木光司原作の「リング」の一部に引き継がれていったと言って良いだろう。
 





 サッちゃん

1、童謡「サッちゃん」には隠された裏の意味がある。その裏の意味を知っていると、夜寝ているときにサッちゃんが現れ足を引っ張られる。

2、サッちゃんには隠された4番があり、そこまですべてを歌うと枕元にサッちゃんが現れ、殺されてしまう。



■類話1(情報提供:あんぱんさん)

さっちゃんの歌の話のことなんですが、私の聞いた話は、ここにあるものと違います。私の知っている話は、実はさっちゃんの歌詞は10番まであり、それを全部知ってしまうと、夜中に自分の枕元に、さっちゃんのお父さんが血まみれのさっちゃんを抱えて立っているそうです。そして、足をもぎとられるという、なんとも痛々しい話です。ちなみに、さっちゃんの4番目の歌詞の一部に「血まみれさっちゃん」という部分があるらしいです。

※あんぱんさん、情報提供ありがとうございました。

■類話2(情報提供:あやめさん)

都市伝説として定番(?)のさっちゃんの話。こんなのを聞きました。
さっちゃんの噂をした日は、夜寝る前に枕元にバナナかバナナの絵を置いておかなくてはいけない。そうしないと、さっちゃんが来て布団から出ている部分(例えば、頭だけだしていたら頭。足が布団からはみ出していたら足・・・)を鎌で切断されて殺される。
バナナなんぞ置かなくても、大丈夫なことは実証済みです。でも、この『布団から出ている部分を切断』というの、全身布団の中に納まっていたり、逆に体のどこにも布団がかかっていなかったらどうなるのでしょう?
余談ですが、さっちゃんの姉にあっちゃんというのもいるらしい。(超マイナー)姉妹そろって何をやってるんだか・・・。

※あやめさん、情報提供ありがとうございました。

■類話3(情報提供:みっちゃんさん)

都市伝説”さっちゃん”についてですが
携帯メールでなく口頭で聞いておびえた経験があります。
内容はほぼ記事と同じでしたが参考に書きます。

小学生当時(1986年くらい)の話です。
”童謡のさっちゃんはバナナを食べる途中で事故に合い
死んでしまったので全部食べられなかった”というもので
この話を聞いてしまったら、さっちゃんが夜に
”布団から出ている部分を切りにくる”というものでした。
防ぐには布団を頭からかぶって出るようにする、または
バナナ(バナナの絵)を枕もとにおいて寝るということでした。

ちなみにこれを聞いた私はすっかりびびり
バナナの絵を枕もとに置いて寝ました。
一緒にいた2人の友人のうち1人が夜寝る前にそのことを忘れ
なにもせずに寝たそうですが、当然何事もおこらず
アレから20年近く経ちますが未だ元気です(笑)

※みっちゃんさん、情報提供ありがとうございました。

 歌に隠された裏の意味だが、「バナナを半分しか食べられない」という2番の歌詞を、「病気でのせいでバナナが半分しか食べられないほど体が衰弱している」とか「事故にあって体が上半身だけになってしまったので、バナナも半分しか食べられない」と解釈するものがある。また3番で「遠くへ行っちゃう」といっているのは死んでしまうことを暗示しているという。

 バナナの絵を書いて枕の下か枕元において置くと、サッちゃんが現れることはないという。

 サッちゃんの歌の4番は、電車にはねられてサッちゃんが死んでしまったという話が広く伝わっているらしい。メールで投稿いただいた内容の中にも、4番の歌詞は『"さっちゃんはね 電車ではねられて死んじゃった 今度足をもらいに行くからね"』だとするものがあったし、チェーンメールで出回ったバージョンもそうなっている。現実に存在する歌でも、3番では物悲しい雰囲気が漂っているので、それに引きずられて出来た話なのではないか。それにしても、10番までとは長すぎる。これでは、さすがに歌う側もダレるだろう。
 





 ひきこさん

■情報提供:トリーネレインさん

兵庫県の女性です。
友達のお兄さんから聞いた話です。

ある小学校にA君という男の子がいました。A君は学校が終わると、いつもなら友達のB君、C君、D君と遊ぶのですが、その日は午後から雨となり、一番遠い家にすんでいるA君は、急いで学校をでました。
あたりは薄暗くなり、小雨がぱらついてます。ちょうどA君が帰る途中に、大きな橋がありA君はいつもその橋を渡って帰っていました。
A君は、いつもどおりその橋を歩いていました。すると、ちょうど橋の真ん中くらいに差し掛かったとき河川の端の石段に何かすごいスピードで動いてるものが遠くで見えました。その河川の端の石段は人が歩けるくらいの幅なのですが、あたりが薄暗くあまり見えないので、A君はなにが動いているのか一生懸命目をこらしてみると、、それはおんなのひとでした。
そのおんなのひとはちょうどA君くらいの人形を引きずっており白いぼろぼろの着物を着ていて髪は長く、顔にかかっており、異様に背が高く顔は遠くからでもはっきりわかるほど、目と口が横に裂けていました。
そして、よくみてみるとそのおんながすごいスピードでひきずっているものは人形ではなく、A君くらいの小学生だったのです。A君はこわくなり、その場からたちさろうとしました。そのとき、すぐ近くまできてた女がA君に気づき何かを叫びながらA君をおっかけてきました。
A君は無我夢中で家にたどりつき、その夜はなかなか寝付けないまま次の朝を迎えました。朝になると、昨日とは一転して空は晴天で、A君は昨日のことはさっぱり忘れていました。

その日は学校が終わると、いつもようにB君、C君、D君と放課後教室に残り、楽しく遊んでいました。すでに6時が過ぎるころ、ふとA君が窓の外を見ると雨が降ってきました。
そしてA君は昨日のことを思い出したのです・・・・。
A君はみんなに、昨日の出来事を話しました。
みんな半信半疑で、A君が言う事をまったく信じてはくれませんでした。
B君は、A君をかわいそうに思い、窓の外をみているA君に話し掛けると、A君は、窓の外を指差し、みんなにいいました。

『あいつだよ!校門のところにあいつがいるっ!』

みんなが窓から外をみてみると薄暗い小雨の中一人気味の悪いおんなが下を向き体を震わしながらたっていました。そのおんなは、みんながいる窓のほうをむくとなにか叫びながら、横走りに動きすごいスピードで校舎に向かってきました。
C君は『やっぱりA君がいってたことは本当だったんだ!みんな逃げろっ』
と叫びました。
みんなそれぞれ、下の階に下りようとしましたが、すでに下にはあのおんながきておりそのおんなの姿をみんな目の当りにしました。
おんなの背は学校の天井につくくらいの高さだったのです。
みんなそれぞれつかまらないように、A君は職員室の方へB君は掃除棚へC君は理科室へ、D君は運良く学校の柵の外へ逃げ切りました。

みんなはそれぞれ隠れながら、女がいってしまうのをじっとして待っていました。
そとでは気味の悪いおんなの声とひたっひたっ、たったったったっというすごいスピードで動いている女の足音がずっと聞こえていました。

朝方になって、C君は理科室を出て、B君のいる教室へ向かいました。
B君が『C君大丈夫かい?』と呼びかけるとそっと掃除棚が開き、ほっとした様子のC君が出てきました。
B君もほっとし、D君の行き先を尋ねました。
D君は学校の柵をこえ、、なんとか家のほうにむかっていったよ
ということで、今度はA君のことを尋ねると、C君は震えながらこういいました。

『僕見たんだ・・・僕・・夜中にあいつの気配がないことに気づいてそっと棚を開けてみたんだ・・・そして外の様子をうかがおうと窓の外を見てみると・・・・あいつが・・あのおんながすごいスピードでA君を引きずりながら走り去っていくのを・・・・』 『ひきこさん』について知っていること。
彼女の本当の名前は,『森妃姫子』と言います。
背が高くて,活発で良く笑う可愛い娘でしたが、先生にえこひいきされたことと、この名前が偉そうだと言う事で,彼女は長い間虐められてきました。かばんの中に子猫の死骸を入れられたり,給食に蟲を入れられたり,上靴をカッターでズタズタにされたり、教科書をゴミ箱に
捨てられたり,掃除用具のロッカーに押し込めて閉じ込められたり。
思いつく限りの虐めを受けて来ました。

ある日,虐めグループが彼女の手を紐で縛って,足を持って学校中引き摺り回しました。
「ひいきのひきこ、ひっぱってやるよ!」
ひきこさんは痛がって泣き叫びましたが、誰一人として助けようとせず,それを笑いながら見ているだけでした。学校を一周して教室に戻ってきたとき、彼女の顔には曲がり角に打ち付けられた時に出来た酷い傷がありました。
それで、ひきこさんはとうとう学校に来なくなりました。

ずっと、長い間家の中に篭って,布団を被って泣き続けるだけの毎日でした。家では父親が酒乱で,ひきこさんを殴ります。母親と一緒になって,またもひきこさんを引き摺り回します。
それでも、ひきこさんは泣きながら家具にしがみついて,学校に行こうとしません。そのうち、部屋から出てこなくなったので,親は一切ご飯を与えないことにしました。やがて,しばらくして親が部屋を覗きこむと,其処には空腹で虫を捕まえて食べているひきこさんの姿がありました。
親は気持ち悪がって彼女を閉じ込めたまま、部屋から出そうとしませんでした。ただ、日に一度、コンビニの100円おにぎりと水を差し入れるだけで、彼女は部屋から出ることなく、何年も何年も、その部屋の中だけで過ごしました。

ひきこさんは雨が好きでした。
家の外で鳴くひきがえるの醜い顔は,自分の顔に刻まれた傷の醜さを忘れさせてくれます。
ひきこさんは可愛いヒキガエルを食べました。

それから、しばらくして、雨の日にひきこさんが小学生を襲うようになりました。窓から抜け出て、異常にひょろ長くなった背丈で、嘗て自分を虐めた小学生を今度は逆に引き摺るようになったのです。
彼女は顔を見られるのを極端に嫌がって,みんなが傘を差して視界が悪くなる雨の日以外は家の中に引きこもっています。しかし、雨が降ると近隣の小学校の付近に出没しては、小学生を追いかけるのです。

何でも,ひきこさんはおかしくなってしまって、傷が治りそうになるたびに自分でカッターナイフで切りつけて,それで口と目が裂けてしまったとか。不思議と、目立つ容貌にも関わらず,彼女を目撃するのは小学生だけでした。そして、彼女は自分の顔を見た小学生を決して逃がしはしないのです。
小学生を見つけると,恐い顔で追いかけながら『何故逃げるー!私の顔は醜いか!醜いかァァァー!!』
と叫びながら追ってきます。

この時,何故かひきこさんはまっすぐ走れません。カニみたいに横向きに走るのに,異常に足が速いのです。そして、足を捕まえると,そのままズルズルと引き摺って、猛スピードで走り出します。階段も平気で引き摺ったまま走るので,そのうち小学生はズタズタの肉塊になります。それでも、次の小学生を見つけるまでは彼女はその足を離さないのです。

彼女の家には、引き摺られた二人の親と,引き摺られた小学生がコレクションされています。それで、雨が降ると彼女はその時一番お気に入りの子を連れて出かけるのだそうです。だけど、ひきこさんは虐められッ子だったので、虐められている子は襲われないそうです。それと、名札に嘗て自分を虐めた子と同じ名前が書いてあると、恐がって近寄ってこないそうです。

ひきこさんに出会ったら,助かる方法は幾つかあります。
一つはさっき言ったように、虐められっこか、虐めっ子と同じ名前であること。
もう一つは,『私の顔は醜いか』と聞かれたときに,逃げずに『引っ張るぞ!引っ張るぞ!』と叫ぶこと。
この時,普通に『綺麗だ』と言うと,気に入って引っ張りたがります。また、『醜い』と言うと、怒って引っ張りたがります。更に『まぁまぁですよ』と答えても、口裂け女じゃないので無駄です。
ひきこさんは歪んだ復讐の為小学生を引っ張りますが,結局自分も引っ張られたことがトラウマなのです。

最後にもう一つ。
ひきこさんは自分の顔を見るのが凄く嫌なので、鏡を見せられると逃げ出します。雨の日は、小学生は傘と一緒に鏡を持ち歩くといいかも知れませんね。

※トリーネレインさん、ありがとうございました。



■参考(情報提供:ヒッキーさん)

ひきこさんの話なのですが、「α-WEB 怖い話」というサイトが初出なのではないでしょうか。私はここがどういうサイトなのかはよく知らないのですが、最初の一人が「ひきこさん」という話を投稿してから、「私もひきこさんに会った」とか、「ひきこさんについて知っている事」をまことしやかにカキコしたり、このサイトの事をよく知らない私には、すごく不思議な光景に見えます。

※ヒッキーさん、情報提供ありがとうございました。

 口裂け女の話を思い出させる内容。いわゆる妖怪とは断言しにくいが、あまりにも人間離れしているので一応怪談話系に分類。現在では上記内容のかなりの部分は一人の人物の後付創作だった事がわかっている。初見では、既存のものを参考にしつつ、なかなかよく練られた話と言う印象を持ったが、さほど広範に広まらないうちにテレビで紹介され、知名度を上げる結果になったようだ。

 興味を引かれるのは「ひきこさん」という名前。ヒキガエル、ひいきといった要素の他にも、「引きこもり」を連想させる。雨と縁があるようで梅雨時は一層不気味。いじめ、虐待、引きこもりといった現代の病理のような部分も連想させるかなり陰惨で、薄ら寒いような内容の話なのではないかと思う。

 「α-WEB 怖い話」は都市伝説も含めた恐い話の投稿サイトである。ひきこさんの話の成立と何らかのつながりがある可能性は高い。
 





 アンサー

■情報提供:パブロさん

最近、アンサーなる怪人の噂を聞きます。
携帯を10こ用意して、1個目から2つ目に、二つ目から3つ目に、・・・10個目から1個目に、と、輪になるように携帯を同時にかける。すると、普通は話中になるハズの携帯がどこかに繋がり、アンサーという人物に繋がる。
アンサーは、10人中9人の質問には、それが何であろうと答えてくれれるのだけれど、一人にだけ、逆に質問をする。
そして、質問に答えられないと、液晶から手が出てきて、体の一部をもぎ取っていくという。
アンサーは、頭だけで生まれてきた奇形児で、そうやって体のパーツを集めて完全な人間になろうとしているから。とか。

※パブロさん、ありがとうございました。

 この噂は2003年9月の段階で、意図的に流された話であることがわかった。詳細はこちら。終わってみれば、あまりに出来すぎた内容に不審を持っていた人も多かったようだ。いろいろあった話であるが、管理人の自戒の意味も込め、掲載当初からのテキストを無修正のまま以下に公開しておく。

 体の一部を奪っていく怪人。カシマレイコなどと同じく、体の一部を集める妖怪・怪異の話はかなり多い。しかし、『アンサー』はその亜種だとしても比較的新しい話だろうか。

 「輪になるように携帯をかける」という部分が特徴的で、この話で思い出したのがゲームソフトの「ペルソナ」シリーズ。作中に「ペルソナ様」という儀式や「JOKER」と言う怪人を呼び出す手順の描写があるがその内容は以下の通り。
・「ペルソナ様」
部屋の四隅に四人が立つ。そのうちの一人が壁伝いに歩いて行き、別の角にいる人に触れる。触れられた人は前の人とは別の側の壁に沿って歩いていき同じように次の角に立っている人に触る。これを繰り返すのだが、この動きは4人目で触れるべき次の相手がいなくなってしまい、そこで終わるはずである。「ペルソナ様」の儀式に成功した場合、4人目では終わらない。
これは専門的には『スクウェア』と呼ばれる交霊(降霊)術で、都市伝説としても、雪山で遭難した4人組が夜通しこれを繰り返したおかげで眠らず、凍死せずにすんだという話がある。一見どうということの無い話のようだが、よく考えてみると普通は四人目で終わってしまうこの行為が一晩中続く不思議さが、話のキモになっている。
・「JOKER」
特定の手順を踏んだあと、自分の携帯をコールした時、『JOKER』につながる。
なお参考までに、2としてリリースされている2編は、『噂(現実に存在する都市伝説的なものも含む)が現実化する』という点が重要なファクターとなっている。
個人的には上の二つの『儀式』を足して2で割ったような印象を受けた。
 





 夢の試練

 不思議な夢の話がある。
 眠りに落ち、気がつくとそこに老婆がいるというのだ。ただ、その状況というのがただ事ではない。その老婆は夢を見た人を追いかけている。追いかけられている人は、その老婆に捕まったら殺されてしまうので、必死で逃げるのだ。
 老婆から逃げていく途中、最初の角は右に曲がらなければならない。
 その次の角もまた右に曲がらなければならない。
 そうしなければ老婆に追い詰められて捕まってしまうからだ。
 さらにしばらく行くと、赤の扉と緑の扉がある。ここでは赤の扉を選ばなければならない。
(中略)
 さて、この夢の話を聞いた人はそれから数日以内にこの話と同じ夢を見る。もちろん、その夢の中では今の話と同じように行動しなければならない。もしも道を間違えたならば、その時が老婆に捕まり殺される時である。
 これは夢の中だけの話ではない。夢の中でこの老婆に殺された人は、決して再び目覚めることはない。

 このパターンの話は、夢に絡んだ怪談では比較的有名な部類に入るのだろうか。

◆『この話を聞いたら、いつかそれと同じ内容が自分の身に降りかかり、事前に知っておいた通りの手順で行動しないと悲惨な結末を迎える』という内容は、夢がらみの話では良く見られる。この話が特徴的なのは、その手順がかなり煩雑だという点であろう。上の話で途中経過が(中略)となっているのは、一つには私がその内容を憶え切れなかったためである。右へ右へと進んでいき、せっかくだから赤の扉を選んで、憶えているのはそこまでである。この道順は特別に必然性があるものではないので、漫然と聞いているだけではなかなか憶えられないだろう。ただ、それと同時にこの話を語る上で、『夢の中でいかに振舞うか』は重要ではないと判断したためでもある。むしろこの話で肝心なのは、この『助かるための手立て』というのが簡単には覚えられないという点であろう。そのため、この夢を見た時に取るべき行動には、おびただしい数のパターンが用意されている。それらを一つ一つ拾い上げるのは事実上不可能なので割愛した。

◆この話は、小学生の間で特に話題に上るようである。もっともらしく分析すれば、詰め込み式の暗記学習に対するストレスが生み出した話とでもなるのだろうか。仮にそうだとすれば、現在の”ゆとり教育”が続けば、この話は過去のものになるのかもしれない。
 





 さとるくん

■情報提供:esさん

電話を使った交霊術について調べているうちに都市伝説の部屋のアンサーの話を見つけました。アンサーははじめて見ましたが、これと似た話で「さとるくん」という話を知っていたのでカキコしました。さとるくんはこっくりさんの亜種で、公衆電話に10円入れて自分の携帯に電話し、携帯側から「さとるくんさとるくん、おいでください」と唱えると、数日以内にさとるくんから電話がかかってきて、どんな質問にも答えてくれるという話です。
別に命まで取られるものではありませんが、こういうおまじないは実行してもろくなことはないと思います。ご参考までに。

※esさん、情報提供ありがとうございました。

 携帯電話怪談にして新種の交霊術である”さとるくん”に関する話。

 さとるくんを呼び出す呪文は「こっくりさんこっくりさん、おいでください」の名前だけをすりかえたものである。さとるくんとコンタクトを取って得られるものも、質問に対する答えであり、このあたりからもまず始めにこっくりさんありきの話のようであることは間違いなさそうである。

 反面、正統な交霊術(そんなものがあるかどうかは定かではないが)といえるかどうかはやや疑問である。集団で行うこっくりさんの場合、コインの動きを自分以外の誰かのせいにすることができるため、”こっくりさん”が返す質問に対する答えは、参加者それぞれの願望が微妙に反映され、最終的に得られる結論は、それらを統合したものになると言われている。集団催眠によるある種の多数決と言え、これは古くからある交霊術の類にはある程度共通する部分である。さとるくんの場合はそういう合理的な説明は難しい。強いて言うなら自己催眠なのかもしれない。こっくりさんが分類される”自動書記”もつまるところ自己催眠だが、さとるくんの場合はやはり、究極的には交霊術というよりは怪談であろう。
 





 残されていたもの

 かつて、地方のとある旅館に泊まった家族の娘が、トイレで惨殺されるという事件があった。事件現場は凄惨を極めた。全身は滅多刺しにされ、顔は個人の判別もできないほどに破壊されていた。さらに異様な事に、遺体には舌がなかった。
 警察はこのむごたらしい事件の捜査に全力をあげたが、少しも事件の真相究明に近づく気配がなかった。それと言うのも、事件の現場が完全な密室だったためだ。トイレのドアは内側からカギがかけられていたのだが、それ以外で外部とつながっているのは、顔を出すことも出来ないような小さな窓と通気口だけだったのだ。
 解決のための糸口すらつかめず、関係者の間にあきらめのムードが漂い始めた頃、事件のあった旅館経営者の息子が両親に付き添われてやってきた。息子はビクビクと、何かにひどくおびえた様子であった。しかし、明らかに何らかの重大な秘密をかかえているらしいことが見て取れた。
 真犯人が自首してきたのかと、誰もが思った。しかし、息子も両親も、ほとんど口を開こうとはせず、1本のビデオテープを差し出すばかりだった。どうやらそのテープに事件の真相が残されているらしく、彼らに逃亡しそうな様子もなかったので、とにかく捜査員達はそれを再生してみることにした。その時息子が突然半狂乱になった。彼は明らかにそのテープにおびえているようで、捜査員達の間に緊張が走った。
 そして、テープが再生された。この旅館の息子は盗撮の趣味があったらしく、そこには排尿中の被害者女性の姿が映されていた。誰もが次に起こることを固唾を飲みながら見守っていたその時、例の小窓が開き、そこから身長20cmほどの老婆が現れた。老婆は手にガラスの破片のようなものを持っていて、それを使って一瞬のうちに女性の喉を掻き切った。その小さな老婆の凶行はなおも続けられ、あとにはあの日あのときの女性の惨殺死体が残されていた。
 女性が息絶えた頃、老婆は切り取った舌を持ったままカメラの方を見て言った。
「次はお前だよ。」
 この不条理な凶行の模様を収録したビデオテープは、今も警視庁に保管されているのだと言う。

 メールによる投稿。今から数年前、2ちゃんねるのとある掲示板に書き込まれていた内容だという。ただ、この話の起源はそれよりもかなり以前まで遡れるようだ。

 怪談話として普通に恐い話である。スプラッターの派手な要素を入れつつ、老婆の捨て台詞もかなり強烈な余韻を残している。

 老婆の名前は「一寸ばばあ」で定着しているようである。
 





 コインロッカー・ベビー

 東京で1人暮らしをしている女性がいた。彼女はあるとき、誰の子とも分からない子供を身ごもったのだが、育てることができそうになかったので、自宅でひっそりと子供を生み、そのまま東京駅のコインロッカーに生まれたばかりの赤ん坊を捨ててきてしまった。その後東京駅には近づかないようにしてはいたが、1人で暮らすのがいたたまれなくなり、地方の実家に帰った。
 しばらくして東京の会社に就職することになり、再び東京で暮らすようになったが、それでも東京駅には近づかないようにしていた。しかし、あるとき、会社の用事でどうしても東京駅に行かなければならなくなった。そのとき例のコインロッカーがどうしても気になったので、ふとそちらを見ると、男の子が一人泣いている。気になって「どうしたの?」と聞いたが返事がない。「お父さんは?」と聞いたら「分からない」。「お母さんは?」と聞いたら、その男の子は「お前だよ」と言った。


 コインロッカー・ベビーは、一時期社会問題化した事件である。一定以上の年代の人には、その時代の空気を思い起こさせる話かもしれない。事件に題材を求めたメインテーマ自体は極めて現代的な内容なのだが、プロットは端的に言って古臭い。

 子殺しの話に関して、上の例のような展開はよくあるようで、モチーフとしてはそれほど珍しい物ではない。他には、わけあって上の最初の子を殺し、次の子と一緒に、最初の子を殺したときと同じような場面に出くわしたとき、何も知らないはずのわが子が「今度は殺さないでね」と言うのである。この種の話は、六部(行者のこと)殺しと呼ばれる因果応報の物語だ。上はその現代版である。六部殺し自体、さらに古い起源を求めることはできそうだが、いずれにせよ非常に日本的な発想と仏教思想から生み出された話であると言えよう。
 





 未来の夫

 ある少女が、将来の結婚相手がわかると言う占いを実践してみることにした。その占いとは、真夜中の十二時、口にかみそりをくわえ、水を張った洗面器の中を覗き込むと、そこに結婚相手の顔が映るというものだった。
 彼女は、話に聞いたとおり、洗面器に水を張り、手元にかみそりを置いて時間が来るのを待った。
 そして、真夜中の十二時がやってきた。彼女は、かみそりを口にくわえ、おそるおそる水鏡を覗き込んだ。なんとそこには、確かに自分とは違う別の誰かの顔が浮かび上がってきている。
 驚いた少女は思わず叫び声をあげてしまった。と同時に、口にしていたかみそりが洗面器の中に落ちてしまった。すると、洗面器に張った水が、一瞬のうちに血のように真っ赤な色に染まった。彼女は何がなんだかわからなくなり、頭から布団をかぶるり、がたがたと震えながら朝を迎えた。朝になって洗面器の中を覗き込むと、普通の透明な水の底にかみそりが沈んでいるだけだった。
 それから数年後。彼女はある男性と付き合うようになった。話題が豊富で楽しく、性格も優しく、おまけに経済力もあった。ひとつ、彼がいつも大きなマスクをしているところだけが気になったが、彼女はこの男性をどんどん好きになっていき、やがて結婚の約束をした。
 そうなると、再び例のマスクの下が気になってくる。生涯の伴侶となる人の事は、よく知っておかなければならない。彼女は、その下に何があろうと自分の気持ちが変わらない自信があった。そんな彼女の気持ちに押され、男性もついに折れ、マスクを取って見せた。
 そこには、鋭利な刃物でざっくりと切りつけられたような、見るも無残な古い傷跡が残っていた。
「ひどい。一体どうしてそんな傷が。」
 彼女は悲鳴にも似た疑問を男性にぶつけた。すると男性が言った。
「お前にやられたんだよ。」


■参考(情報提供:嫣夜さん)

 あの話にそっくりな話が漫画「ぬ〜べ〜」の何巻かは忘れましたが似ている話が載っています。 しかしその話では未来で好きになった人はマスクではなく、ゲゲゲのきたろうみたいに顔の半分を前髪で隠していて「どうして隠しているの」と女性が聞くと手で髪をかきあげながら「お前のせいだよ」という感じで終わる話だったと思います。 

※嫣夜さん、情報提供ありがとうございました。

 将来の結婚相手がわかる占いとして、真夜中に合わせ鏡をするというものもある。時に自分の死に顔がわかる占いとされることもあるこの儀式だが、上の水鏡の話もその流れをくむ物であろう。かみそりの刃が顔を傷つけると言う事態を直感的に理解しやすいようにするため、水を張った洗面器が鏡の役割を果たす小道具として選ばれたのだろうか。

 怪談話として見た場合、コインロッカー・ベビーの話もそうであるが、最後の「お前だよ」を大声で言って聞いている人を驚かすのがパターン。

 ちなみに、男女が逆になるパターンもあるが、占いを好むのは女の子というステレオタイプ的な発想からか、主人公は少女であることの方が多そうだ。
 





 骨こぶり

 とある病院での出来事。大部屋に入院しているある男は、同室にいる何人かのうち、一人の痩せた男のことが気になっていた。この男は、来る日も来る日も夜半に部屋を抜け出し、どこかに出かけている。そして小一時間もすると何事も無かったかのように部屋に戻ってくるのだ。
 別に痩せぎすの男は夜中にけたたましい音をたてて部屋を出て行くわけではない。そむしろ音も立てずに部屋から消える。ういう意味では、男の夜間外出に迷惑しているわけではない。しかし、純粋な好奇心から痩せぎすの男が夜中に何をしているのかが気になる。あまりに気になるので夜も眠れなくなったある夜、思い切って後をつけてみることにした。
 痩せぎすの男は、尾行されていることも知らずにどんどん歩いていく。あっという間に病院を出て、すぐ近くにある墓地へと入っていった。夜中に墓地とは明らかに普通ではなかったが、そのことがかえって尾行する側の好奇心を掻き立てる。いよいよ慎重に先行する男の様子を探った。
 やがて男はとある家の墓の前で立ち止まった。そして、墓石に向かって何かをしている。後をつけていた男の所からは、痩せぎすの男がそこで何をしているのか分からなかった。そこで、相手の手元を伺える位置へ密かに移動した。
 果たして、その痩せぎすの男は、墓の下から骨壷を取り出し、その中に入っていた遺骨をかじっていた。
様子を見ていた男は、思わず「あっ」と声をあげてしまった。その途端、骨をかじっていた男は尾行者に気がついたようだった。尾行がばれてしまった男は、わき目も振らず一目散に自室に駆け戻った。それから少し遅れて、あの同室の男が部屋に戻ってきた。男は別段慌てる風でもなかったが、めいめいのベッドで眠っている同室の患者の顔を覗き込んで回っているようだった。先に逃げていた男は、薄目をあけてその様子をうかがっていたが、追ってきた男が何をしているのか良く分からなかった。ただ、何事かをつぶやいていることだけは分かった。
 やがて、自分の所にもその男がやってきた。他の者にしていたように、顔をこちらに近づけてくる。そして・・・・・・。
「一つ、二つ、三つ・・・・・・・・・。鼓動が早いな、見たのはお前だ!」

 人間の骨の成分(もしくは髄)に万病に効く成分があるという話は今となってはもはや迷信以外の何物でもない。傷病者が多い反面、医薬品が絶対的に不足していた戦時中には藁にもすがる思いで人骨を薬として服用したと言う話をよく聞く。上の話はそういった経緯を単なる怪談のネタとして流用するにとどめているが、良くあるパターンの話と言えるだろう。

 広く知られたものではないが、「骨こぶり」という概念がある。人骨をしゃぶることによって、その骨の持ち主の意識、能力、あるいは霊性など、広く言えば「魂」を自分の中に取り込もうという発想である。「骨の髄まで」などと言う言葉もある。人の骨には、その人の「魂」が集約されていて、それが神秘的な力を持つと言う考え方が、「薬効」というより実際的な効用に結び付けられたことから骨をかじる男の怪談が生まれたのかもしれない。

 なお、同室で寝ている人間が夜半に起き出してどこかへ出かけて朝方になると帰って来るのを不審に思った主人公が、相手を尾行した先で秘密を目撃するというプロットを持つ話は、数こそ決して多くないものの、一部の昔話の中にも見られる。
 





 霊の通り道

 街を歩いていると、奇妙な位置に描かれた鳥居の絵を目にする事がある。何が奇妙なのかといえば、それらは大抵の場合、足下に近い低い位置に描かれている。
 ともすれば見落としてしまいそうな場所に描かれているのは、そもそもこの絵が人間に見せるためのものではないからだ。この鳥居は、お稲荷様や霊に通り道を教えるためのものなのである。新しく建物が建ったために本来霊が通っていた道筋を変えてしまったときに、その事を知らせる目的で鳥居の絵を描いているのだ。


※木漏れ日さん・中学生さんの投稿を元に編集。情報提供ありがとうございました



■参考(情報提供:水流さん)

「地獄先生ぬ〜べ〜」を見たのではないでしょうか?
もしくは、それを見た人から聞いたとか…

14巻・#122で、ヒロインの女の子が、鳥居マークのところでおしっこしてしまって、そこを通り道にしているお稲荷さんに取り憑かれる、というものです。
ほかにも、巻数は確認できなかったのですが、「おとないさん」という幽霊の回でも、幽霊の道を誘導するために使っていたかと。

年代的に見て、この漫画の話が伝わったているとしても、おかしくないのではないでしょうか?

※水流さん、情報提供ありがとうございました。

 結論から言ってしまえば、この鳥居の絵は多くの場合「立小便禁止」、あるいは「ゴミのポイ捨て禁止」の意味である(場合によっては信仰の対象という意味も皆無ではなさそうだが)。ある程度の年齢の人にしてみれば噴飯物の内容かもしれない。

 最近では街中での立小便そのものが減ってしまった影響か、若い人の中に「鳥居」本来の意味を知る人が少なくなっている。そのために新たな解釈が生まれたのだろうか。どの程度の規模で広まっているのかは分からないが、「霊の通り道」に向かって立小便をする不届き者もいないだろう。解釈は変わっても本来の目的は果たせそうである。
 





 血まみれの兵士

 ある夜、ふと目覚めてしまう事がある。もしかすると、そのまま自分の意思に関係なく脚が勝手に動いて戸口まで歩いていくことがあるかもしれない。そしてそんな時、扉を開けるとその向こうには血まみれの兵士が立っている。そしてその兵士は、「水をくれ」と言う。
 もし善良な人間であれば、兵士から水を要求された時にも体が勝手に動き、兵士に水を飲ませる事ができるという。そうなれば兵士は幸福を約束してくれる。
 もし善良な人間でなければ、体が動かず兵士に水を飲ます事も出来ない。そうなると、兵士は呪詛の言葉をはきかけながら消えていくという。そして、その夜から一週間以内に……。
 この兵士は、この話を聞いたもののもとに、いつか必ず現れるという。


※俵さん、情報提供ありがとうございました。

 早晩リンク切れになるかもしれないが、元ネタはここ。http://japan.internet.com/wmnews/20030814/5.html
インフォシークの、夏の怪談にちなんだ記事である。

 バッドエンドパターンの結末こそはっきりしないが、この話からもう一人の脚取り幽霊・傷痍軍人型カシマを連想するのは難しい事ではないように思う。数多い亜種の一つだろうか。聞き手の性質の善悪だけで一方的に結末を確定させられるところが特徴的。聞き様によっては説教臭い内容でもある。
 





 天狗の新聞

■情報提供:這い寄る混沌さん

「天狗の新聞」という話があるみたいです。
何でも人の生き死にについて書かれた新聞らしく、執筆者はもちろん天狗。
読者は天狗や死神。

なんだか恐怖新聞のパクリみたいですが、出所が全くわかりません。
はっきりしたところではマンガの話という情報も引っ掛けてきましたが、本当にそうなのか、少し疑問です。
天狗が出てくるところは古い伝承みたいなんですけど、瓦版じゃなく新聞なんて言っちゃってるし、迷信なのか都市伝説なのか謎だらけです。

※這い寄る混沌さん、情報提供ありがとうございました。



■参考(情報提供:ultraCSさん)

関係あるかわかりませんが、「天狗の落とし文」、「天狗の詫び証文」というのが伝承されている神社がいくつかあります。
神代文字(阿比留文字など)で書かれているケースが多いのですが、神社の口承としては天狗が神官にやりこめられたりして、その詫びとしてのこしたとされているようです。で、この文書には予言などが書かれていることになっています。

天狗というのは仏教では八部衆の迦楼羅王(ガルーダ)との関連が指摘され、また、修験者の化身としての位置づけもあります。
で、新聞を出すというのはどうですかね。
なんか、フレドリック・ブラウンの「みみず天使」(Angelic Anglewarm)を彷彿とさせますね。

※ultraCSさん、情報提供ありがとうございました。

 「天狗の新聞」を検索してみる限り、ネット上で散見される話のようである。

 起源が何なのかについて、断定的なことはいえないが、ネットでの流布には2ちゃんねるが関与していると考えて間違いなさそうだ。「あとから考えると怖い幼い記憶」というスレの中で「天狗の新聞」が話題になっている。そこで交わされた会話の内容によると、どうやら何かの本に掲載された物語のようだ。真偽や妥当性の判断は保留しておくが、現在では「天狗の新聞」も一種のネットロア化しているか。

 這い寄る混沌さんの投稿の中には、「マンガの話」という箇所もある。このマンガとくだんのスレで言われていた本が同一のものなのか、「天狗の新聞」の名が売れたことで比較的最近になってマンガ化されたものか、それともやはり、まず「天狗の新聞」の話ありきで、その上で書籍化されたり噂に上ったりしているのか。
 





 滑り台が消えたワケ

 東京ディズニーランドにチップとデールのツリーハウスというアトラクションがあります。これに関して、以前に気になるうわさを聞いたことがあります。

 このツリーハウスには滑り台がついていたのですが、ここで原因不明の事故が多発しました。そこで霊媒師を呼んで御払いをしてもらったところ、滑り台の下に人骨が埋まっていると指摘されました。
 実際には工事中に現場から人骨が見つかったとかで警察が出てくるような騒ぎになっていたのですが、この人骨がどういうものなのかは最後までわからずじまい。そうしているうちにツリーハウスの方が完成してしまい、骨のことはうやむやになってしまったのだそうです。

 骨に関しては古い時代の遺跡から紛れ込んだものだとする見解もあるようですが・・・。


■参考(情報提供:あおい ろしあんさん)

噂・怪異として結構流布している様ですね。

「東京ディズニーランド理論武装占拠計画」より「トゥーンタウンの人骨発掘事件」
http://www007.upp.so-net.ne.jp/spanky/kaiki7.htm

「おとなの平安京」より「遊園地という異界」
http://www.call-girl.jp/aruku/yuuennti.html


「チップとデールのツリーハウスには当初すべり台があったが、事故が多発した為に撤去が決定。
 その作業中に人骨が発見された」と言うのが大筋のようです。
「幼児誘拐事件」「スペースマウンテンの位牌」などと並べて紹介した上で
「噂としての扱い・考察」がなされてますので、ご参照ください。

ちなみにTDLの「チップとデールのツリーハウス」のすべり台は開設当初には存在してましたが
現在は(実際に)撤去されており、「チップとデールが壊しちゃった」と説明されている、との事。
実際に怪我をする子供が続出した為とも、夏の暑い日にすべり板がエライ事になった為とも。

カリフォルニアのディズニーランド(のツリーハウス)には、すべり台も残っているそうです。

※あおい ろしあんさん、情報提供ありがとうございました。

 「夢と魔法の国」の暗部再び。誘拐犯、秘匿された事故死者などの噂に続き、今度は怪談話である。汚れや翳りの感じられない「きれい」過ぎるものを汚したくなるのは、人間の生理的欲求なのだろうか。
 





 額縁の裏

 とあるホテルでの話。一人の宿泊客が、夜中に胸の苦しさを感じて目を覚ました。すると自分の上に正体不明の黒い影が覆いかぶさっている。恐怖に戦きながら、必死にその影に抵抗しようとしていると、やがて影は消えた。その客はふと思い当たる事があって、部屋にかけてあった額縁の裏を覗いてみた。やはり、そこには何かの魔除けだと思われる護符が隠されていた。
 翌朝。昨夜の出来事についてフロント係を問いただしてみると、最初ははっきりとした答えを渋っていた相手も、ついに声を潜めるようにして問題の部屋の秘密を漏らした。実はあの部屋に泊まった客から、昨夜起きたような怪異の訴えが相次いだので、魔除けのため、目立たない場所にお札を貼っているのだという。



 「友達の友達」の身に起こった話として、幾度同様の怪談話を聞いたか分からない。つい最近も同じような話を聞かされる機会があった。それらの中には、事実不可思議な体験をした人の話もあるのかもしれないが、多くの場合にお決まりのプロットに添った形で話が展開されていくのだから面白い。すなはち、夜中に原因不明の怪異に襲われ、ふとしたことから額縁の裏に隠された護符を見つけ、翌朝ホテルの従業員にことの仔細を問いただすと、昨夜の部屋に隠された恐るべき秘密が明かされるという流れである。