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第157号 目的を表す不定詞の副詞的用法


=━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ English Grammar and Usage ━━━
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┛┛   英語の文法と語法    No.157    20100710   Chick Tack
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             ● 第157号 ●

………………
 Contents      目的を表す不定詞の副詞的用法
………………
       (1)〜するために

       (2)so as[in order] not to do something

       (3)come and do something

       (4)〜するために存在する


………………………………………………………………………………………………
(1)〜するために
…………………………

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    ・to不定詞を使って「〜するために」「〜するように」という
     動作の目的を表すことができる。
                  ・to do something
                  ・in order to do something
                  ・so as to do something
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 (a) My sister studies hard to enter college.
  (文部科学省 中学校学習指導要領解説外国語編 平成20年7月発行)
   「私の姉は、大学へ入るために一生懸命勉強しています」

  人が何かをする目的を伝えるとき、〔to不定詞〕を使うことがある。不定詞
  には意味・使い方が色々あるが、これは最初に習う不定詞の使い方の一つで
  ある。

  〔to不定詞〕の示している時は、主動詞(studies)の示す時よりも〔未来〕
  となっている。「一所懸命勉強し」たのちに「大学に入る」。

  主動詞の動作時点では〔to不定詞〕の状態・動作は実現していないと説明す
  るものもある。


 (b) Why did you go to the post office?
 (c) I went to the post office because I wanted to mail a letter.
 (d) I went to the post office in order to mail a letter.
 (e) I went to the post office to mail a letter.
  (“Fundamentals of English Grammar”Betty Schrampfer Azar, 1985)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#azar
    (b)「あなたはどうして郵便局に行ったのですか」
    (c)「私は手紙を出したかったので郵便局に行きました」
    (d)(e)「私は手紙を出すために郵便局に行きました」

  実際には、丁寧にここまで答えることは少ないが、(c)〜(e)は(b)の疑問文
  に対する応答である。通常は because, in order to, to 以降だけで答える
  ことが多い。

  疑問文がない(c)〜(e)単独文は自然に出てくる。(d)の in order の部分は
  しばしば省略され、(e)の英文になる。

  in order to の代わりに so as to が使われることもある。

 (f) I went to the post office so as to mail a letter.
   (日本語訳は(d)(e)と同じ)


 (g) Time is precious, and Crito has come early in order to gain his  
  consent to a plan of escape.
  (“Crito”by Plato, translated into English by Benjamin Jowett)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/plato.html
    「時間は貴重です。それで、脱走計画に対して彼の同意を得るために、
     クリトンは早く来たのです」

  in order to は、かたい正式表現である。文の主語 Crito が目的に向かっ 
  て自ら行動していることがよく伝わっている。

 (h) In order to know a man you have only to travel with him for a   
  week.
  「相手の人柄というのは、一緒に1週間も旅をすればすぐわかるものだ」
   (安井稔著『英文法総覧(改訂版)』開拓社)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#betterguide
    ←「ある人を知るためには、あなたは1週間その人と旅行をしさえすれ
      ばよい」

  “in order to不定詞”“to不定詞”は、文頭に置くこともできる。

  “have only to do”は「〜しさえすればよい」という意味。


 (i) I shall return by the twelve o'clock train, so as to be there in 
  time for your coming.
  (“The Adventures of Sherlock Holmes” by Sir Arthur Conan Doyle)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer03.html#holmes
   「私はあなたが来る時間に間に合ってそこにいるように、12時の列車で
    戻ります」

  “so as to不定詞”の例。

 (j) I returned by the twelve o'clock train, so as to be there in 
  time for your coming.
   「あなたが来る時間に間に合ってそこにいるように、私は12時の列車で
    戻りました」
   「私は12時の列車で戻った。その結果あなたが来る時間に間に合った」

  “so as to不定詞”は〔結果〕を表していると考えられる場合がある。


  補足記事あり。
  http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/141-160/egu157.html#supple1


………………………………………………………………………………………………
(2)so as[in order] not to do something
………………………………………………………

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    ・「〜しないように」「〜しないために」は次の形が望ましい
                ・in order not to do something
                ・so as not to do something
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 (a) I'm going to leave now, so as not to be late.
  (×)I'm going to leave now, not to be late.
  (“Practical English Usage 3rd Edition”Michael Swan)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english02.html#peu
    「私は遅れないように、今から出発するつもりです」

  「〜しないように」と言う意味で〔to不定詞〕の〔否定〕を使う場合、
  “so as not to不定詞”“in order not to不定詞”が使われ、“to不定詞”
  単独は推奨されない。

 (b) I had to bite my lips in order not to laugh.
   (“The Moon and Sixpence” by W. Somerset Maugham)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer03.html#sixpence
   「私は笑わないように、くちびるを噛まなければいけなかった」

  not は〔to不定詞〕の直前に置き、(×)not in order to do something や
  (×) not so as to do something としてはいけない。


  補足記事あり。
  http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/141-160/egu157.html#supple2


………………………………………………………………………………………………
(3)come and do something
……………………………………

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    ・命令文や助動詞の後ろで go, come が原形となっている時
     〔目的〕を表す〔to不定詞〕は“and+原形不定詞”とする
     ことが多い。
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 (a) Come and see me, Ellen; don't forget.
   (“Wuthering Heights” by Emily Bronte)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer02.html#wuther
   「私に会いに来てね、エレン。忘れないでね」

  Come to see me.「私に会うために来なさい」の代わりに and の前後に原形
  を並べている。


 (b) The sky must have fallen. I must go and tell the King.
   (CHICKEN-LICKEN from “Childhood's Favorites and Fairy Stories”)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer03.html#cffs
    「空が落ちたに違いない。私は行って王様に伝えなければならない」

  「王様に伝えるために行かなければならない」ということなのだろうが、  
  「行ってから伝える」という行動順序を考えれば and を使う理由が分かる
  気がする。


 (c) Go wash your hands.
  (“LONGMAN Dictionary of Contemporary English 4th edition”)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html#ldoce
   「手を洗いに行きなさい」

  アメリカ英語の会話において、and や to を言わずに、〔動詞の原形〕を2
  語続ける時がある。


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 (d) I didn't come to talk to Bill; I came to talk to you.
  (“A Practical English Grammar”A. J. Thomson & A. V. Martinet)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english02.html#peg
   「私はビルと話をするために来たのではない。あなたと話すために来たの
    だ」

  go, come が、現在形や過去形・動名詞・分詞になっている場合、and を使
  うのは標準ではない。


 (e) She has gone to see her sister this weekend.
  (“Oxford ADVANCED LEARNER'S Dictionary 7th edition”)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html#oald
   「彼女はこの週末、姉[妹]に会いに行っていて、今ここにいない」


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  次の〔to不定詞〕は〔目的〕を表しているものではない。

 (f) In time I came to love her.「私はやがて彼女を愛するようになった」
   (高梨健吉著『総解英文法』美誠社)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#sokai

  “come to不定詞”で「〜するようになる」(to不定詞になるのは状態動詞)
  という使い方があるので、〔目的〕を表す“come to do something”は使い
  にくく“come and do something”を使うのかと思っていたのだが、そうで
  はないように思えてきた。

  「〜をするために来る」「〜をするために行く」というよりも、順番に「行
  って〜する」「来て、そののち〜する」という感覚があり、go, come とそ
  のあとに来る動詞が対等と感じられているのかもしれない。


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(4)〜するために存在する
……………………………………

 (a) This wall is to keep people out of the garden.
  (“English Grammar in Use 3rd edition”Raymond Murphy)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english02.html#egu
    「この壁は、人々を庭に入らせないようするためにある」

  不自然だからそんな解釈はしないと思うが「この壁は人々を庭に入らせない
  ようすることです」と訳してはいけない。〔補語〕となる〔名詞的用法〕で
  はないのだ。

  「〜するために」→「存在する」という〔副詞的用法〕。存在する〔目的〕
  を表していると解釈できる。


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 参考文献  http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html
……………… http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html
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● あとがき

 サッカーのワールド・カップは、今までヨーロッパで開かれればヨーロッパ勢
 が強く、アメリカ大陸で開催されれば南アメリカ勢が優勝するのが普通でした。

 例外は1958年のスウェーデン大会と日韓共催となった2002年で、共に南米のブ
 ラジルが優勝しました。

 今回、初のアフリカ大陸開催となったFIFAワールド・カップ。南米が強いのか
 欧州が強いのか、注目していました。

 ベスト8決定時では、南米勢が4チーム入っていました。開催地の南アフリカ
 は南半球なので、南米勢ばかりのベスト4になるかと予想しました。そうなる
 と南米選手権になってしまいます。

 予想は外れ、欧州3、南米1のベスト4になりました。季節の違いよりも時差
 の違いの方が影響したのか、欧州勢が結果を出しました。ウルグアイが食い込
 み、かろうじて欧州選手権化はまぬがれました。

 そのウルグアイも3位決定戦に回り、欧州勢同士の決勝となりました。オラン
 ダ、スペイン、どちらが勝っても初優勝です。

 無敵艦隊スペインが勝つのか、はたまた、ヨハン・クライフも成し遂げられな
 かった偉業をオランダが達成するのか。日本時間の12日には決着がつきます。


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        (c) Matsumiya Institute of Thinking 2010
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 so as to... は文頭に置けないか

ジーニアス英和辞典第4版 の so as to do の説明欄(P1811)に
in order to とは違って、純粋な目的以外に自然な成り行き・結果が同時に含意される;また文頭には用いない
という記述があった。

この「文頭には用いない」というのは、本文記事(1)の例文(h)は、
(×)So as to be there in time for your coming, I shall return by the twelve o'clock train.
とはできないということであろうか。

In order to be there in time for your coming, I shall return by the twelve o'clock train.
は可能だが、so as to... を文頭に持ってくることはできないと読める。これは「自然な成り行き・結果」を表している場合に限るのであろうか、それとも、どんな場合でも言えるのであろうか。

A Practical English Grammar A. J. Thomson & A. V. Martinet の334.B.4(P294)には、
When the infinitive of purpose precedes the main verb, in order/so as may be placed first:
In order/So as to show his boss what a careful worker he was, he took extra trouble over the figures.
(But here also in order/so as may be omitted.)

とある。

precedes の解釈が悩ましいが、so as to を文頭に置くのは禁止していないようだ。

この件は、保留にしておく。

 take care not to...; be careful not to...

I will certainly take care not to give away anything again.
THE DEVOTED FRIEND from The Happy Prince and Other Tales by Oscar Wilde
「再び何かをあげてしまわないように、きっと気をつけます」

目的を表すto不定詞の否定は、so as や in order をつけるのが普通だが、take care, be careful の後では not to... で表す。

We are careful not to create any wrong impressions.
Rolling Stones by O. Henry
「ちょっとでも悪い印象を与えないように、私たちは注意しています」


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