東京帝国大学在職25年祝賀会における祝辞
    加越能時報 第208号掲載記事 明治41年3月15日発行
櫻井教授と記念論文 理学士 池田菊苗
 謹んで先生に申し上げます。 研究即ち新しきを拓き幽<カク>れたるを捜ぐることが自然学に従事するものの本文であるとは先生が絶えず御論しになり常に躬行してその例を御示し下さる所でありまして私共平生この事を心掛けぬではありませんが今日まで何等為す所なく空しく御教訓に負いて居りましたは深く慚入る所であります。

 而るに近来、先生の門下に追々年少有為の士を輩出するようになりまして研究の精神が漸く勃興せんとして居るのは寔に喜ばしき次第であります。
  さればこのたび先生の御在職満25年を祝賀致す為に如何なる催しを為せば最も先生の御満足を得べきかと門下の者寄々評議の末、近頃研究して得た事共を書き著し一部の論文集となして差上ぐるが最も適当であろうというに編著致しまして即ち是に収めました15編の論文を得ました。固<もと>より識浅く才疎なるものの著作でありまして観るに足るべき論文はありますまいが先生の門下の間に研究の精神が勃興しつつあるその兆しの一端とのみそなわし<ミソコナワスの約=広辞苑>で御受納あらんことを希望致します。

  尚、この催を為すに当り京都理工科大学の久原教授、東京理科大学の垪和教授が貴重の論文を御寄せ下され又農科大学の松井教授が先生の小伝を御起草下されて本集に一段の光彩を御添わ下された事を御披露申上げます。       
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