祝島の日々 2007 10〜12月



祝島加工グループのヤズの販売

「ええ型じゃなーかね。こりゃあ刺身にせたらうまかろうじゃあ」

 出世魚は各地でいろいろな呼び名がありますが、例えばハマチのことを祝島では、1kg以下をヤズ、それ以上をハマチと呼んでいます。

 祝島では、元漁協婦人部、現在は祝島加工グループのおばちゃんたちが、毎年秋になるとヤズの販売をします。

 ここ数年は秋にヤズがなかなか揚がらず、今年も11月から12月のアタマまではさっぱりだったのですが、ようやく最近、まとまった量が水揚げされだしました。

 朝早くに現場(魚の集荷場)の生け簀からヤズを揚げ、締めて血抜きをし、氷で冷やして鮮度を保ちます。

 加工場ではヤズを待っていた島の人たちが列を作り、、自分たちで食べるために、また子供や孫たちに送ってあげるために、買い求めていきます。

 ヤズは流し釣りや係り釣りで釣れますが、上関原発の建設が計画されている田ノ浦近辺の海域は主力漁場のひとつで、現在、中国電力が詳細調査を強行しているため、やはり田ノ浦の辺りでは操業がしにくくなっていると島の漁師は言っています。


関連リンク
ヤズの朝売り
漁師のお仕事・漁の種類


朝早いうちに現場の生け簀から揚げ、
すぐに締めます



新鮮なヤズ


ヤズを待ちわびていた島の人たち
(撮影12/19、20)


雨の中、島の朝市


 今年最後の島の朝市がありました。

 この日はあいにくの雨で、農協の倉庫をお借りしての開催でしたが、人出も出品物も普段の半分以下となってしまいました。

 ただ祝島では夏以降の降水量がほとんどなく渇水状態となっています。

 盛んに節水を呼びかけたり、夜間は水道の水圧を半減するなどの対策をしているところですので、まとまった雨が降ってくれるのはとてもありがたいことです。

祝島産のみかんやレモン、
正月用の品なども並んでいます



祝島豚のハンバーグとソーセージも
(撮影12/22)


氏本農園に子牛が仲間入り

 祝島で循環型農業に取り組んでいる氏本農園に、今度は牛が仲間入りしました。

 生後1ヶ月ちょっとのオスのホルスタインです。

 豚と同様に船で島に運ばれ、三浦の氏本農園の棚田に作られた小屋に連れて行かれました。

 子牛は着いて早々にミルクを飲みましたが、それだけでは足りないのか収穫後のサツマイモの蔓を食んでいました。

 もちろんこの牛も最終的には豚と同様にお肉になる予定だそうですが、まずは豚と牛の混合放牧がどのように機能するかに興味が集まっています。

 耕作されていない農地を開墾するのに威力を発揮しつつある氏本農園の豚(氏本さんは「豚田兵」(とんでんへい)と呼んでいるそうです)ですが、背の高い草などはやはり食べづらいの

テーラーで運ばれていく子牛
島の人たちも興味津々



農園に到着
氏本さんはもともと北海道で肉牛牧場の牧場長をしていたので、牛の扱いはお手の物
だそうで、背の高い牛と組み合わせることでより効率的な開墾ができる可能性があるとのことです。

 また12/20にはこの子牛へのミルクやりが祝島小学校の授業の一環として行われ、島の子供たちも新しい島の住人と触れ合う機会を持ったそうで、教育、食育についても良い影響が期待されます。

関連リンク:氏本農園・祝島だより
(撮影12/11)


びわの花が満開


 今、島のびわ畑ではびわの花が満開で、畑に足を踏み入れるとびわの花のほのかに甘い香りがします。

 びわはバラ科の植物で、花はツリー状に並んで咲きます。

 しかし一つ一つの花を見ると、5つの花びらなど、同じバラ科の桜の花とよく似ています。

 今年はびわの花の着花数がかなり多く、全ての花に実を成らせてしまうとびわが小粒になってしまううえに樹の生命力もかなり消費してしまいます。

 大粒の実が適度な数、実るよう、島のびわ農家は花を摘む作業に追われています。

 また今冬は寒さが厳しくなるかもしれないという予報もあり、寒害が心配されます。

満開のびわの花


中にはまだ蕾のものも
咲くのが遅い花のほうが寒さに強い
(撮影12/18)

祝島豚の試食会
祝島豚を100%使用したソーセージとメンチカツが並ぶ
他の料理もほとんどが祝島産の素材でできている


 10/23に初出荷された氏本農園の祝島豚が製品となり、その試食会が島で行われました。

 この日は祝島小学校など島の子供たちの他、豚の運搬や檻を作った漁師さん、びわのくずや芋の蔓などの飼料を提供してくれた農家の方たちなど、島の人たちも招かれ、初めての祝島豚の味に舌鼓を打ちました。

 出荷された祝島豚は、本場ドイツでも数々の賞を受賞している下松のグルメロード安田さんの手によって、今回はソーセージとミンチに。

 安田さんは「太陽が降り注ぐすばらしい環境で育ち、島の人たちに愛され、そして最後までこうやって見送ってもらえる。こんな幸せな豚は今まで見たことがない」と挨拶されました。

 今回の祝島豚の肉質については、通常飼育された豚に比べ脂肪が少ないが、赤身がしっかりしているとのことです。

 生産者の氏本さんは、肉本来の旨みで勝負するという狙いに近いものができたことに手ごたえを感じているようでした。

まず祝島の子供たちに食べてもらう


メンチカツをパクリ


豚の運搬や檻、食料などさまざまな形で協力した島の人たちも招待
 
 同時に、出荷までの期間が通常の6ヶ月に比べ今回は9ヶ月かかった点、また離島という条件による輸送のコストなど、解決しなければいけない問題はまだ山積しているとも言っていました。

 また今回の試食会では、豚をかわいがっている島のおばちゃんたちの中には「かわいそうで食べられない」という人もいました。

 島の子供たちも豚が出荷される前は「食べるのはかわいそう」と言っていましたが、氏本さんの「食事をすることは命をいただくことだから、『いただきます』といってあげよう」という言葉を受け、しっかり「いただきます」と言って何度も御代わりをしていました。

 この日は管理人も相伴させてもらいました。
 ソーセージももちろん美味しかったのですが、メンチカツの美味さには本当に驚きました。噛む度に肉の旨みが口の中に広がり、これまで食べた中で最も美味しいメンチカツだったと断言できます。

 祝島豚の各種製品の購入については、今後の生産量にもよりますが、当面は下松のグルメロードと当サイトで取り扱わせていただく予定になっています。

関連リンク
試食会氏本農園・祝島だより
祝島豚試食会祝島・えべすや@祝島の情報
あしあと11月祝島フォト情報
グルメロード
(撮影11/1)

伊美別宮社の八幡丸(約150年前の模型)、祝島で修理を
八幡丸と、祝島の船大工の新庄さん
「こがいに古いものを、大事にせんにゃあいけんじゃろうが。のう。」


 神舞で祝島と親交の深い大分県国東半島の伊美別宮社の回廊には、昔、神舞のときに神主一行が祝島に渡るのに使われていた「八幡丸」という御座船(祝島で言う「神様船」)の模型が展示されています。

 模型といっても嘉永年間に造られたであろうとのことなので、建造されてから150年は経っている計算になります。

 この模型の八幡丸、造られて長年経ったことと風雨にさらされていたこともあり、かなり痛みが激しくなっていました。

 そこで、この八幡丸を祝島の船大工、新庄さんが修理ことになり、八幡丸が祝島まで運ばれてきました。

 新庄さんは神舞年を除き毎年行われるお種戻しで伊美別宮社に行くたびに、この八幡丸のことが気になっていたそうで、ついに今年、伊美別宮社に自ら修理することを申し出たそうです。

 10/29に島の人たちが船と人手を出し、八幡丸は祝島に運ばれてきました。

 現在、八幡丸は島の東、クレーン波止の元にある新庄造船所にあり、新庄さんは普段の仕事の合間を縫って修理を進め、来春には伊美別宮社へお戻しするそうです。

伊美別宮社の回廊に置かれている八幡丸
以前は博物館に展示されていた時期もあったらしい



説明書きの板には下記のように記されている
「祝島海上渡御
 御神霊御座船八幡丸(模型)
   杵築藩御用船々大工
      木野村房吉 作
  建造奉納年代ハ不詳ナレド
  嘉永年間ト推定サレル
          別宮社々務所」



島に到着した八幡丸
それを不思議そうに見る島の子供


中を覗き込み、まず泥やホコリの汚れを洗い流す


八幡丸(模型)は全長約5m
本物の八幡丸は20mほどあったらしい



後ろから


てご(手伝い)をした漁師さんたち
運搬中の無事を祝って、まずは一杯
神舞の昔話にも花が咲く

関連リンク
あしあと(10月29日の部分)祝島フォト情報

サイト内リンク
2004年の神舞の風景神舞
お種戻しスナメリ倶楽部
(撮影10/29)


エゴエコドライブ、祝島へ(車は上関まで)
廃油を燃料に走るエゴエコ号
色とりどりのステッカーは友人や旅で知り合った人たちからのメッセージ
 今、SVO(ストレートベジタブルオイル)、つまり植物性油の廃油を燃料にした車での日本一周に挑戦している青年たちがいます。

 その二人はこの試みを「エゴエコドライブ」と命名、横浜を8/1にスタートして東日本、北海道、日本海側を中心に全国各地を回り、10月後半に山口県にも入り、上関町と祝島にもやってきました。
(車は上関の船着場付近でで止め、人だけ祝島にやってきて一泊していきました)

 「エゴエコドライブ」については下記関連リンクに詳しく書いていますが、できるだけ多くの人たち、特に若い世代と交流を持って環境について考えるきっかけにしてほしいという志で、二人はるこの挑戦をしているとのことです。

左がベルさん、右がシモケンさん
怪しい人間にも見えますが、
実際は礼儀正しく明るい青年たちです

たぶん


.彼らのここまでの道程がフロントの地図に
シモケンさん曰く「なまはげで有名な秋田の男鹿半島が強く印象に残っている。地域のプライドを感じた」

 燃料の廃油は各地の油を多く使うお店、特にてんぷら屋さんを訪ねては廃棄する予定の廃油をもらって補給しているそうで、上関町でも、室津のてんぷら屋さんで廃油がもらえたそうです。

 この後、山口から福岡へ行った後に九州を回り、九州→沖縄→九州→広島→四国へと渡る予定だそうで、年内にはスタートした横浜へ帰る計画だそうです。

 彼らの活動に興味のある方は、ぜひ応援してあげてください。

関連リンク
エゴエコドライブ(オフィシャルホームページ)
天ぷら油で日本一周中 “エゴエコドライブ”を実践:日本海新聞
ホンモノ思考(俺にしかできないこと)
(撮影10/25)


モイカ干し
 この時期になると、島の海岸ではモイカが干されています。

 モイカはアオリイカのことです。4〜6月ごろに獲れる甲イカと比べると肉厚で旨みがあり、刺身はもちろん、こうして干されたモイカの干物は旨みが濃くてまさに絶品です。


西から2番目の波止のふもとでもモイカ干し
 祝島では毎年10月1日から船でのモイカかけ(モイカは「釣る」のでなく「かける」と言う)が解禁となるため、10月になると船を持つ島のおじさんたちは、明け方に夕暮れに、西へ東へ船を走らせます。

 そして昼間には「今日は朝方に○杯かけたで」、「わしはどこどこで○杯かけた」と自慢話に花を咲かせています。

関連リンク
祝島魚歳時記
(撮影10/24)


祝島豚、初出荷
 祝島の氏本農園で循環型放牧スタイルで飼育されている祝島豚(仮称)の初出荷がありました。

 5月に島へ運ばれてきた豚のうち1頭が出荷され、約半年の間に体重は120kg程度になったとのことです。

 島から船で上関町室津の埋め立て波止場まで運ばれ、そこから防府の屠場まで車で運ばれていきました。

 11/1には関係者で試食会が開かれて肉質がチェックされる予定です。

 また11/10に開かれる「祝島未来航海プロジェクト『一流の離島・地球船 祝島丸』」の進水式では祝島豚の販売が、その後の懇親会では試食することができるとのことです。

関連リンク
氏本農園・祝島だより(blog)

祝島で豚が復活!(祝島の日々4〜6月)

「人間は他の生き物の命を食べなければ生きていけません。だからこそ、その命をありがたく頂戴します。」(氏本氏)


島からは船で運搬
(撮影10/23)



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