石の森 第 113 号  10 ページ   /2003.1

 レジ待ち哲学

夏山 直美


スーパーの買い物かごを持って
今日はいくら位だなと思いながら
レジを選ぶ
ここは人が多い
ここはたくさんの買い物
見定めて選んだレジに並ぶ

隣りのレジの客は
どんどん支払いを済ませ
人は次々と流れる
私が選んだレジの店員は
近付いてよく見ると新米だったりする
バーコードの位置を捜し
つり銭を取る手をふと止め
思案する
つくり笑いのあいさつも
ぎこちなく
時が絡まっていく

突っ立ったままの私は
足の痛みに耐えながら
――人生て、いつも、こう
とつぶやく
私が選んできた道は
時間ばかりが
のたうちまわり
――あっちの道は
と愚かな自分の足もとを
痛みと共に見つめるばかり

人生はレジ選びに似ている
後から来た人に追い越され
いつも私は待ちぼうけ
つまらない事には勘がさえ
迷いに迷った道はそのまま迷路
冷静な部分の私が一円玉のように
サイフの片隅にへばりついて
出番のないまま哲学をしている


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