石の森 第 113 号  10 ページ   /2003.1

 分身

四方 彩瑛


似ている、
と言われて自分でもそう思った
以来見つける度に
自転車の下敷きにして
なぜ触れなかったのか
侵入しなかったのか
自分の体内から血を流したいばかりに
全てをそれのせいにした
露を含んだ土は生物のように冷たく
根を引き抜き
この手のまま
何かを食べると死ぬのだろうか
と奇妙な期待に陶酔し
散乱した
彼岸花たちに笑いかける
私は今
自分自身を風葬した


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