後藤の部屋

No.69「鍼治療を頑張る」

 先日、日本東洋医学会という漢方分野での最大の学会に参加しました。今回は鍼灸がテーマでとても勉強になりました。鍼治療というと、長い鍼を思い浮かべる人が多いと思いますが、私は主に真ん中にごく短い針というより金属の突起がある円皮針を貼り付けて治療しています。出血することもなく胸部に使用した時に気胸を起こさないなど安全です。しかし、患者さんには効果は今一つと考えられている方も多いのではないでしょうか。学会ではその円皮針を用いても十分に効果があることが発表されていて、私の方法で良いのだと勇気づけられました。動物実験で頭の毛を刈ったネズミに円皮針をてっぺんに貼って置くと攻撃性がなくなり他のネズミと仲良くしている現象が紹介されていました。

 円皮針の問題はすぐに剥がれてしまうので効果が続かないということでしたが、一般向けに「パイオネックスゼロ」というほぼ同様のものがあり、患者さんが自分で買って貼ることが出来ることが今回わかりました。Amazonで調べると100枚3千円くらいでした。毎週針治療だけのために通院されている患者さんもおられますが、これは朗報だと思います。針を置くツボも変化することがあるので、効果が無くなったらその時だけ受診すればよいわけです。そのツボは何かということでも面白い研究が行われていて、神経の先端が集まっているところと考えられていたこともありますが、最新の研究では脂肪細胞と言われる特殊な細胞がツボに集まっていて、針を刺すとその刺激を受けた細胞から化学物質が放出されてそれが神経を刺激して効果があることがわかりました。医学生の時に「いいか、医者は一生勉強だ!」と言われましたが、何歳になっても学会に参加して勉強を続けなければなりません。

 鍼治療は多くの患者さんの症状改善、健康回復のために有効です。私は整形外科中心に痛みのある疾患を治療することが多いのですが、うつ病、慢性呼吸器疾患、耳鳴り、冷え症、アトピー性皮膚炎、がんによる倦怠感などに効果があると報告されていました。これからも鍼治療の研鑽を積んで、いろいろな患者さんのお役に立てるように頑張りたいと思います。


2025年06月12日

No.68「この漢方薬があれば」

 暑さと寒さが混在する難しい時期となりました。暑くなると冷たいものが欲しくなりますが、表面の暑さには表面を冷やすのが鉄則です。冷たいものを体内に入れすぎるとお腹を冷やして体調を悪くします。もちろんぐったりして体温が上昇しているようなら重症の熱射病になる可能性があり危険ですので、全身を冷やして水分を補給する必要があります。命に関わるのですぐ救急車を呼んだ方がよいでしょう。しかし、軽い暑気あたりならまず暑くない場所に避難して頭を冷やしましょう。水分も冷蔵庫から取り出したばかりの冷え冷えより、常温のもので徐々に補う方がお腹にはやさしいです。真水よりも少し塩分があった方がいいのは言うまでもありません。暑さに慣れていないこの時期は熱中症になりやすいので気をつけましょう。

 漢方外来の曜日が変わったので、患者さんが減った気がします。国会では保険を使える薬から漢方薬を外そうという動きもあり心配しています。漢方薬が外されてしまうと、もちろん患者さんの自己負担も増加しますが、保険診療の決まりで同じ患者さんに西洋薬と一緒には処方できなくなります(混合診療禁止の原則)。漢方薬は薬局でも買うことはできます。しかし、もともと漢方薬は昔の漢方医が患者を診察し、その状態を分析して患者さんにあった薬を調合して飲ませていたものです。ただ症状からのみでは効果がないことや症状が悪化することがあります。腹痛に効く漢方薬はいろいろありますが、なんでも効く訳ではありません。以前腹痛のある女性を漢方で治療した時に言われたことが印象に残っています。「私の母も私と同じ症状でずっと苦しんでいました。その時にこの漢方薬があれば母は苦しまずにすんだのに。」
漢方は正しく使えば人を救います。


2025年04月28日

No.67「4月から漢方・鍼灸に専念します」

 4月から松田整形外科に常勤の小林先生が着任されることになり、整形外科の診療がさらに充実することとなりました。長らく整形外科をやりながら、漢方の診療を行ってきましたが、正直漢方診療に十分な時間をかけることができていませんでした。これを機に4月からは整形外科の診療は他の先生方にお任せして漢方・鍼灸の診療に専念したいと思います。
私の外来も木曜午後と金曜午前だったものが水曜午後と木曜午前になりますので、お間違えないようにお願いします。

 漢方をやっておられる先生はたくさんおられますが、私の場合は漢方薬を使う治療に加えて、養生を基本とした上で鍼灸を使った治療も行います。鍼灸院のように長い時間をかけて行うことはできませんが、特に痛みについて鍼灸の治療は有効です。私の教わった鍼灸師の先生は「医師はみんな鍼灸が使えれば患者のためになるのに。」というのが持論でした。だいぶ前の話ですが大学病院にいた頃に鍼灸院で痛みの治療を長く続けて癌の発見が遅れた患者さんを受け持ち苦労したことがありました。まずしっかり診断をつけて患者さんに最適な医療は何かを追求しながら、納得いただいた患者さんに漢方・鍼灸の治療を行っていきたいと考えています。鍼治療は怖いと言われる患者さんが多いのですが、私は長い鍼ではなくワッペンの先にごく小さい鍼のついた浅皮鍼を使います。ほとんど副作用がないので安全に使うことができます。鎮痛剤の効きが悪いと思われる患者さんは一度お試しください。


2025年03月17日
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