後藤の部屋

No.58 夏の養生

 先だって久々に「先生のブログを読みました。」という患者さんがいました。刺激を受けるとまた書こうかという気分になります。何を書こうかと思いましたが、最近暑い日が続いており、夏も近づいているので「夏の養生」にしました。普段外来で麦茶は体を冷やすのでほうじ茶にしましょうと提案していますが、暑くなる夏だけは別で外で仕事をしたりして喉が渇いた時は麦茶や緑茶を飲むとさっぱりして良いものです。私も今だけほうじ茶ではなく緑茶を飲んでいます。もちろん温めてですが。

 漢方では夏暑いのは自然なことで、逆らわずに夏の陽気を巡らせて秋冬に健康でいられる体づくりをすると考えます。中国の先生から聞いたのですが、夏になると熱いお灸をする人で混雑するとのことでした。熱中症にならないように気をつけるのは当然ですが、暑ければ冷やせば良いとは考えていません。特に冷たいものをたくさん摂るのは、良くないと考えます。大事なのはお腹です。冷房を使ってもお腹を冷やさないように注意します。睡眠時間は短くなりますので、お昼に午睡を30分くらい取ってリフレッシュします。食事は冷たいものを避けて夏野菜、スイカ、トマトなどを積極的に摂ります。もちろん食べ過ぎはいけませんが。アイスとか氷水は良くありません。汗はかいた方がいいのですが、たくさんかきすぎると疲れるので適度に汗が出る程度の運動をします。冷房を効かせすぎて汗をかかないのは良くありません。どっとではなくじわっと汗をかくようにしましょう。

 6月末まで日本東洋医学会の市民公開講座で「心身ともに健康になれる養生について」という講演が今だけ無料で見ることができますので、関心のある方は検索してご覧ください。

 コロナは次第に落ち着いているようです。いずれ必ず収まるものでしょうが、ワクチンを打った人も増えており、すでに感染した人も多くなって集団免疫もついてきて、終わりが見えてきた感があります。次なる感染症に向けての態勢整備に期待します。日本ではそうですが、隣国の中国、北朝鮮ではまだ感染爆発の可能性があるので油断はできません。

 ウクライナの戦争は東部で激戦が続いています。これだけ被害が増えるとどちらも負けられない戦いです。これからも一進一退の戦いが続き死者や負傷者が増え続け、食料、エネルギーなど経済に悪影響が避けられません。この戦争で世界中が不安となり軍拡競争が激しくなりそうです。国民や軍人の命を軽視する国が国際的な紛争を解決できると考える武力を持つことは危険この上ない。ロシアがこの戦争を始めたのはそう考えた指導者がいたからでしょう。日本は大丈夫か。新たな戦争が日本の近くでも起こる可能性を考えて準備せねばウクライナの二の舞ですが、強すぎる軍隊は相手の脅威となるので軍備を増やせば良いというものではありません。今までになかった難しい時代に政治家の力量が問われます。


2022年06月23日

漢方編その2 仁とは

 漢方診察時、患者さんの下腹の中央に力が抜けている状態を小腹不仁といいます。腎の力が落ちている、つまり腎が虚している所見として八味地黄丸などを処方します。今回は医は仁術などの表現でも使われる「仁(じん)」の話です。私が漢方の勉強で習ったのは「仁は痛みがわかること」でしたが一般には仁は人の気持ちがわかることとされています。

 西にウクライナの戦争、東にコロナの疫病と大変な時代です。ウクライナではまさに仁義なき戦いが繰り広げられています。激しい攻撃を受けていたマリウポリの製鉄所要塞がウクライナの戦闘任務完了ということで多くの兵士が投降しました。昔のように敵を引きつけるために最後の一兵まで戦えという悲惨な事態にならなくて良かった。ブチャなどの戦争犯罪で野蛮国の烙印を押されたロシアですが、マリウポリでは投降兵士を丁重に扱って文明国であることを証明して欲しいものです。

 ウクライナの市民の中にはまだ戦えるのになぜ投降するのだという人もいたようですが、ゼレンスキー大統領は「英雄たちが生きることはウクライナにとってなにより大事だ」と降伏を認めました。雨あられのように白リン弾の降り落ちる製鉄所で頑張れば時間稼ぎにはなるでしょうが、全滅は時間の問題です。国のために命を投げ打つのが兵士ですが、その死には本人や家族の痛みがあります。戦争の勝利も大事ですが、何をやっても勝てば良いということにはなりませんし、そもそも勝てません。それを考えるとまことに仁にかなった判断だと思います。一方のプーチン大統領はロシア軍の兵士が欧米の最新兵器の餌食となってバタバタと倒れていくのに軍事作戦をやめる気配はなく、まして相手の国の市民が何人死のうが悲しもうがお構いなしで不仁の人だなあと思います。人の痛みを考えているようでは指導者にはなれない国なのかもしれません。そんな人が選挙で大統領に選ばれて今いるわけです。思えばヒトラーも民主的な選挙の手続きで選ばれた人です。他山の石とせねばなりません。

 先回中国のゼロコロナは無理だと書きましたが、まだ頑張っています。中国シンパといわれたWHOの事務局長も忠告していましたが改める気配がありません。不思議に思っていましたが中国ではコロナが蔓延すると死者が百万を超えると予測されているとのことでした。人口十億の国ですから毎年一千万以上死んでいるのでしょう。しかし、疫病は国の責任が大きいのでゼロコロナはやめられないのかもしれません。それでも数千万の人々を自宅に閉じ込め続けるのは無理がありますし、果たしてそのやり方でゼロまで下がるのかという疑問もあります。そんなことを考えていたら、北朝鮮でコロナ患者が急増しているとのこと。瞬く間もなく発熱患者が100万を超えました。医療が遅れているようですので、死者がどれほど出るか心配です。核実験やミサイル発射は止めてその金で医療を充実した方がよほど人民のために良いと思うのですが・・・。

2022年05月19日

漢方編その1 過ぎてはいけない

 先だって「先生、仕事が忙しくて疲れるので補中益気湯を下さい。」という患者さんが来られました。診察しましたが、補中益気湯を使うような兆候はありません。補中益気湯は、中国の名医であった李東垣(リトウエン)が作ったとされる漢方薬で、元気をつける薬ですが、全身に倦怠感が強い病人に使うもので、仕事をやりすぎる人が飲む、スタミナドリンクではありません。「あなたには必要ありませんね。」と断りましたが、「一度試したいんです。お願いします。」と懇願されて、他医で長期に処方されてもいけないので「では数日飲んでみてください。具合悪くなったらやめなさいね。」と処方しました。同じような人が何人か来ましたが、また下さいという人は1人もいませんでした。実は私も試したことがありますが、健康な時は効果はありませんでした。

 漢方薬には足りないものを補う薬と、余計なものを除く薬があります。
補中益気湯は「気」の不足を補う薬ですから、不足していない人が飲むと気が強くなり過ぎて体調を壊します。過ぎたるは及ばざるとは違う問題を起こすわけです。今の世の中サプリメントが大流行りです。しかし何でも補えば良いわけではなく、特に昔から患者の治療に使われた漢方薬は効くだけに飲み過ぎてはいけません。よく効く薬は、強い効果があるからです。病気の時だけ使うのが正しい。ちなみに江戸時代にも同様の問題があったからでしょうか、津田玄仙という漢方医が補中益気湯を使っても良い症状として①手足の倦怠感②言語軽微③眼精無力④口中生白沫⑤失食味⑥好熱物⑦臍の上の動悸⑧脈散大無力を上げています。このうち2、3の兆候があれば使ってよいと伝えれています。補中益気湯はコロナ感染後遺症の倦怠感にも有効な薬です。もちろん症状が合えばですが。
 最後に老婆心ながらスタミナドリンクの飲み過ぎにも気をつけましょう。食べ過ぎ、飲み過ぎ、働き過ぎ、遊び過ぎ、他何でも過ぎたものは健康によくありません。

 ウクライナでロシア軍が一部退却してその後に虐殺された死体があったとのことです。国際的な法医学の調査が行われれば事実は現れるでしょうが、多くの証言もあり犯罪行為があったことは事実のようです。武器を持った軍人が何も持たない市民を殺すことは犯罪です。ロシアが危ないのは「我々は違法なことはしていない。」と正当化していることです。法律は国が決めることでいつも正しいわけではありません。イラク戦争に従軍した米軍の士官が「法的に正しいことと倫理的に正しいことで迷ったら倫理的に正しいことを選べ。」と言っていたことを思い出します。軍人は人を殺す職業であってはいけません。人を死に至らせる武器を与えられるのですから高い倫理観が求められます。虐殺した遺体を放置したのはウクライナへの見せしめかもしれませんが、完全に逆効果でロシアの敗北が決定的になったと思います。今回のことを教訓に戦争は最後にして欲しいものです。

 コロナ感染者がまた増え始めました。まことにしぶとい。中国はゼロコロナで頑張っていますが、人口2000万の都市をロックダウンし続けるのは無理があります。賢い中国人のことですから上手い解決策を見つけるでしょうが、ウイズコロナになったとして中国製のワクチンの効果が十分か注目しています。


2022年04月05日
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