後藤の部屋

No.67「4月から漢方・鍼灸に専念します」

 4月から松田整形外科に常勤の小林先生が着任されることになり、整形外科の診療がさらに充実することとなりました。長らく整形外科をやりながら、漢方の診療を行ってきましたが、正直漢方診療に十分な時間をかけることができていませんでした。これを機に4月からは整形外科の診療は他の先生方にお任せして漢方・鍼灸の診療に専念したいと思います。
私の外来も木曜午後と金曜午前だったものが水曜午後と木曜午前になりますので、お間違えないようにお願いします。

 漢方をやっておられる先生はたくさんおられますが、私の場合は漢方薬を使う治療に加えて、養生を基本とした上で鍼灸を使った治療も行います。鍼灸院のように長い時間をかけて行うことはできませんが、特に痛みについて鍼灸の治療は有効です。私の教わった鍼灸師の先生は「医師はみんな鍼灸が使えれば患者のためになるのに。」というのが持論でした。だいぶ前の話ですが大学病院にいた頃に鍼灸院で痛みの治療を長く続けて癌の発見が遅れた患者さんを受け持ち苦労したことがありました。まずしっかり診断をつけて患者さんに最適な医療は何かを追求しながら、納得いただいた患者さんに漢方・鍼灸の治療を行っていきたいと考えています。鍼治療は怖いと言われる患者さんが多いのですが、私は長い鍼ではなくワッペンの先にごく小さい鍼のついた浅皮鍼を使います。ほとんど副作用がないので安全に使うことができます。鎮痛剤の効きが悪いと思われる患者さんは一度お試しください。


2025年03月17日

No.66「足湯=フットバス」

 寒かった冬も終わりが近づきました。今年は冷えが強かったせいか、足湯や足へのお灸で症状が警戒する患者さんがたくさんおられました。現代人は足が冷たい人が増えているようで、足湯がさまざまな症状に効くようです。先だっての勉強会では「いよいよ花粉の時期が始まります。漢方薬と西洋薬で治療しても症状が軽快しない人は、まず甘いもの、食べ過ぎを控える養生、適度な運動、そして足湯をしましょう。」という話がありました。足湯が花粉症に効く?不思議な話ですが、ストレスなどがあると気の巡りが悪くなります。頭で考えすぎると上半身に熱が集まるので 鼻詰まりや顔面紅潮などの症状を起こすほか熱の分布が不均衡になり下半身が冷えます。全身の熱循環をよくしなければなりません。熱は本来下から上に上がるものなので、足湯で下半身を温めると熱の循環が改善され上半身に集まりすぎた熱が全身に回って症状が軽快します。このほか婦人科疾患や腰痛、老人のうつなど足が冷えている患者さんに足湯の効果があります。

 これまではお風呂の追い焚きで、汗をかくくらいまで足湯することをお勧めしていましたが、寒い中でお風呂まで行ってやるのは面倒だと思います。最近の経験でフットバスで十分効果があることがわかりました。1万円くらいでネットで購入できますので足が冷えて体調が悪い方は、お風呂で試して効果がありそうなら寒い時期はフットバスで足湯されてはいかがでしょうか。こたつでいいじゃんという方もおられますが、空気とお湯では熱の伝わり方が段違いですので足湯をお勧めしています。湯冷めしないように上がった後で冷たい水をかけるのがよいでしょう。



2025年02月19日

No.65「一挙手一投足」

 まだ20代の頃地方の病院の整形外科医として勤務していた時に、高齢の先生と一緒に外来を担当していました。その先生は仕事がマイペースだったので少しムッとすることもあったのですが、ある時「若い医師と高齢の医師では守備範囲が違う。若い医師は新しい知識はあるだろうが、経験が足りない。何より人間が歳をとるとどうなるのかがわかっていない。だから高齢者を診るのは高齢の医師の方がよい。若者は若者らしく働けばよい」というようなことを言われました。その時はそんなものかなと思ったのですが・・・。

 時が流れて最近よく老いを感じるようになりました。カルテの入力で入力ミスが多くなりキーボードから目が離せませんし、患者さんの話を聞いていても聞き違えて「先生、違いますよ。」と言われることが多くなりました。歳をとると困り事が増えるようです。

 しかし、老いることは悪いことばかりではないはずで、例えば禅のことを外国に紹介した鈴木大拙が九十歳を過ぎて「歳を取らなければわからないことがある」と言っています。それは何だろう、高齢の患者さんの中にそのヒントを探していました。ふと一挙手一投足という言葉が浮かびました。一挙手一投足といのは、手を挙げて足を踏み出すということで細かな一つ一つの動作の意味です。歳をとると誰でも動作が緩慢になります。早く動かす筋肉が衰えるからと言われていますが、急な動作をすると痛みを感じることが多くなるので、自然と慎重にゆっくり動いていることもあると思います。

 患者さんの中に90歳すぎても筋力がしっかりして痛みを訴えない人がいましたが、その動きはゆっくりではあるが洗練されているなと感じました。椅子にどすんと座る患者さんはいかにも痛みが出そうです。そこで考えたのは、歳をとると一挙手一投足を大事にしなければならないのではないか、そうすることで元気で長生きできるのではないかと。一挙手一投足、つまり細かい日常のことが実は大事なのだということを老いた身体が教えてくれるのではないかと思いました。自らを顧みて、若い時は細かいことは気にせずに突っ走っていました。これからは一挙手一投足を大事にしていきたいと思います。


2025年01月06日
» 続きを読む