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古書肆京極堂内聞感想

読んだのは少し前なのだけど。
特にどうという印象もなく。いかにも同人誌的という感じ。
あえて石榴の目を通したという形にするならもうちょっと何か、いかにも猫っぽい人間とは違う視点とか思考回路があったほうが面白い気はするけど、じゃあどこがどうと言われたら分からないので同人誌と思えば可もなく不可もなく。
意外とこれに出てきた榎さんが一番榎さんっぽいかも、とは思った。

風蜘蛛の棘感想

最初のほうで共時性なんて出てきたので、げ、またかと思って思わずこのシリーズにおける作者の過去作品を確認してしまった。
桟敷わらしの人だったのね(^^;)
浮浪児を引き取って薬飲ませて、というのは前作と同じだけど、こちらのほうが話のまとまりはいいような感じがした。
タイトルはもちろん、車いすやラストシーンなども絡新婦のモチーフなんだけど、二重人格だ何だという辺りや、東京ローズがジョンにすがって「助けてください」と言う辺りは姑獲鳥オマージュなのかな。
構造が同じ二つの屋敷は狂骨を思いおこさせる。細かいとこ見ればもっとたくさんあるのかも。
木星号のくだりはちょっと無理やりだったかな。読み終わって結局どういうつながりだったんだっけ?ってなってるのでもう一度読み直してみないと。
八原院郁の、相手を操る話し方についてはもうちょっと詳述してほしかったかな。ページ数の関係もあったのかもしれないけど。
この長さにしては誰視点かが定まらなさすぎという感じもあったけど、今まで読んだ中では登場人物に対する違和感がほぼなく読めました。

ジュリエット・ゲェム感想

これは神社姫と打って変わってストレスフリーというか、その分軽いのだけれど。
タイトルに妖怪や化け物(この辺の使い方については京極先生の『妖怪の理妖怪の檻』の中で考察されているような厳密なものではありません)を付けてないのがいいですね。
敦ちゃんの少女時代にどろどろした事件を持ち込まなかったのは正解かと。
かといって『百鬼夜行』隠と陽みたいなのも難しいだろうし。
いわば普通の少女小説なので物足りないと感じる向きもあるかもしれないけど、私は神社姫を読んだ後だったから、口の中でほの甘くさらさらとほどける可愛らしい和三盆の干菓子みたいでほっとしました。
こっくりさんの件はもうちょっと深掘りしてほしかったような気もするけど。

登場人物のすべてがあの戦争を生き抜いたとするのはご都合主義かもしれないけど、せめて万里さんはあれだけ大騒ぎさせたのだから、若い頃の一時の熱にしないで、戦後その彼と結ばれてほしい。
ひさ実はなかなかいいキャラなので、雑誌記者になった敦ちゃんに情報提供して助けるポジションで、大人になったこの少女たちの話を読んでみたいな。

榎さんの登場はわずかながら違和感もなく、むしろその役割をしっかり果たしていたと思う。

神社姫の森感想

えー、かな~り辛口になるのでこの作者さんのファンの方は読まないでください。
ファンじゃないけどこの作品を読んで面白いと思った方、個人の感想ですので、こいつはセンスも読解力もないなあと思ってスルーしてください。

ゴジラ云々の辺りはすごく面白く読んでました。
戦後も少し進んだ時代背景と、借り物ではなく作者本人の妖怪論みたいなのも見えて、すごいなと。
この時点ではそこまでに読んだ薔薇十字叢書シリーズ中一番ハイレベルで面白いと思ってました。
が、後は目眩坂を転がり落ちるが如くです。

まず榎さんの口調と、そのしゃべる内容に違和感が募るばかり。
榎さんはべつに何でもかんでもいつでも四六時中「!」が文尾に付くしゃべり方をしてるわけじゃないですよ。
読んでるだけでうるさくなってくる。
それに、自分が見えているものを、京極堂がそう言うのだから「記憶なのだろう?」とか言っちゃうのがまるで別人。
あいつはいくら言っても理解しないんだと本編で京極堂は言ってたし、その体質を自覚的にいわば武器として探偵作法に用いているという様子もないのに。

それから共時性云々のくだり。
くだりというか、なんかもう半分以上そんなこと言ってた印象。
同じ語彙と内容の繰り返しが延々続いてたように感じられた。
言霊とか呪という言葉の使い方も何か違わない? 少なくとも京極先生とは違ってないかな?
どちらもただの言葉遊びにしか感じられなかったんだけど。
こじつけにしか思えないというか。

そのうち読むのが苦痛になってきました。
特に憑物落とし? の場面では、これ単に作者が自分の知識を全部披瀝したいだけじゃないの? と感じてしまって。
京極先生の本編のうんちくだって、本当にどこまで必要なのかどうか分からないし内容を全部理解できるかと言ったらできてないんだけど、それでも初めて姑獲鳥を読んだときからそうなんだけど、なぜか飽きずに読んじゃうんだよね。
その辺はもう力量の違いが歴然。
ただの知識の羅列に見えてしまったのよね。
共時性だのなんだのって、漫画の『鬼灯の冷徹』23巻「ぐるっと回ってホルスの目」で言ってることと同じな気がするんだけど。神様のニアミスってやつね。

榎さんに関してもう1点。これだけは受け入れられない。
あのね、榎さんに視えるのは視覚的記憶だけ。脳内妄想は見えない。
それを、妄想も実際に見た記憶かのように記憶してしまう「久保」の特殊能力なんて反則。
なぜ榎さんにそれが視えるのかという京極堂の説明には一応筋は通っているけど、こっちは説得力と根拠がない。
そんなルール違反の後出しジャンケン駄目。

とにかく詰め込みすぎ。
姑獲鳥から邪魅まで全部の要素を詰め込みたかったんだろうけど、無理だと思うの。
最後のほう、若干『書楼弔堂』風味も入ってたしね。
せめて実在の人物を登場させるのは谷崎か大水木かどちらかで良かった。

ところで今泉くんて誰がモデルなんだろ。戦国武将の女体化って、私その手の話は好きじゃないから分からないわ。
そこだけちょっと気にはなるかな。

桟敷童の誕

最初わりと面白そうと思ったんだけど
なんか謎解きがイマイチ薄いというか、すでに記憶が曖昧。
榎さんが何度もあちこち映画館を歩いて回ってた辺りの描写がちょっと中だるみだなと思ったのと、木場修が榎さんを「礼二郎」と呼ばないところに微妙に違和感があった。

でもあの母息子のキャラクターはなかなかいいね。
本編に出てきてもおかしくない気がする。

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