ナショナル・トラスト運動とピーターラビット

ナショナル・トラスト

三省堂から出ている中学１年生用の英語の教科書、NEW CROWN 1 の Lesson 9 に、ナショナル・トラストのことが出ています。自然や古い文化遺産を守っていく民間団体とその運動のことです。会員数は数百万規模になっています。

イギリス、レジャーブームの到来

産業革命後、イギリスでは、鉄道建設・ロンドン万国博覧会・銀行休日法制定などで、レジャー・ブームの兆しが見え始めました。。湖畔や海岸・温泉地などは、レジャーには格好の場所です。開発業者などが、これに目をつけ土地を買います。より広い土地を手に入れるために、「囲い込み」という手法を使います。これは産業革命の前に、牧羊地を広げるために使われた手法です。

オープン・スペースが囲い込まれる

オープン・スペースとは、「空き地」というのが本来の意味です。ここでは、「自然のままの場所」「誰にでも立ち入りが自由な場所」という意味が加わります。そんな場所が、囲い込みによってオープン・スペースでなくなってきます。

湖水地方にも開発の波

イングランドの北西部に、美しい湖と森が広がる湖水地方があります。英語では Lake District とか The Lakes と呼ばれています。開発の波は、この地方にまで及び、1883年には、鉄道敷設法案が出来上がりました。この鉄道敷設の目的は、観光というよりも工業用の原料運び出しの目的でしたが、近くの景勝地を台無しにする恐れがありました。牧師のハードウィック・ローンズリーは、社会事業家のオクタヴィア・ヒル女史と弁護士ロバート・ハンターとともに、この計画を廃案に持ち込みます。また、それまで自由に出入りすることが許されていた私有地の散歩道が、突然立ち入り禁止になったりしました。もちろん土地の持ち主の自由なのですが、せっかくの景色を国民が楽しめないのはもったいないことだ。ローンズリーたちは、そう考えました。

ナショナル・トラスト誕生

1893年に、湖水地方のいくつかの土地が売りに出されました。ローンズリーは、これらの土地を買い取ってしまおうと考えました。しかし、牧師の彼にお金はありません。ヒルやハンターに相談をもちかけ、ウェストミンスター侯爵の援助も受けて、1894年、会社として「ナショナル・トラスト」は誕生しました。The National Trust for Histric Interest and Natural Beauty というのが英語名で、「歴史的名勝地および自然的景勝地のためのナショナル・トラスト」という日本語訳が当てられています。1907年には、「ナショナル・トラスト法」も制定されました。そして世界各国に、この運動が広まっていきました。

ピーターラビットもナショナル・トラストに貢献

べアトリックス・ポッターという女性が、1901年「ピーターラビットのおはなし」という絵本を自費出版します。The Tale of Peter Rabbit が英語の題名です。この本がロンドンの出版社に評価されます。その後、彼女は動物たちを主人公に24冊の絵本を出版します。その印税やキャラクター製品の売り上げで、湖水地方の土地を買い続けました。彼女は、ナショナルトラストの自然保護運動にも参加しました。彼女が亡くなったあと、彼女の所有地はナショナル・トラストに寄贈されました。

ピーターラビットで英語の勉強

『ピーターラビットのおはなし』の一文一文を意味のまとまりごとに区切り、「日本語・英語・日本語・英語・……」の順番で録音されたユニークな英語教材があります。ＣＤに英語だけ録音されているものは、たくさんありますが、勉強しづらく長続きしないものです。文字で確認するために教本もついていますが、教本なしで聞き流すことをおすすめします。日本語を先に発声してくれるので意味はしっかりつかめ、「その日本語の英語は？」と頭をすばやく回転させるための英作文の練習にもなります。2835円（CD１枚＋印刷教本＋ｅメール）と比較的手に入りやすい値段なので、だまされたと思って（本当に思ってはいけません）手に入れてみてください。英語の勉強が楽しくなりますよ。

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