石の森 第 113 号
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冬の夜明け
大薮 直美
熱と引き換えに下りる結露が
外の世界の鑑として降る
知らずに拭えば掠れてしまう世界に
その一粒を手にとって触れる
肌色に沁みた濁った月が
何かへの遠さを物語る
冷えた世界に熱源である人間が
屯する時間
すれ違う人ごみの間にさえ
冷たさしか漂わない宇宙空間が存在する
ただ、
その一つ一つが恒星であるならば
昼の太陽と同じように
笑みのこぼれる温かさがあるのだけれど
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