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白い古書、ぞっき本も、時を経て読むと面白いものです。

今月の一冊は、これ!


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薩摩の日本人手品師たちがニューヨークにやってくることを予告するポスター。「SATUMA'S ROYAL TWENTY STAR ARTISTS」とあるのは「異国遍路旅藝人始末書」に見える「薩摩一座」のことか

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「JAPANESE TROUPE]興行のプログラム。「女性手品師ズミダンガワ・コモンはニューヨークで公演した日本人一座の花形であった」とのキャプションがある。


世界の魔術

ミルバーン・クリストファー著
       梅田 晴夫 訳
  東京書房社(1975年8月15日発行)

 私が幼少の頃は、奇術・手品は生で観るもの。それも、サーカスやどさ回りの芝居の幕間の余興程度のものでしたが、ドキドキしながら摩訶不思議に見入っておりました。世界有数のマジシャンによる大掛かりなマジックショーがテレビで観られる現在とは大違いの時代でしたが、今も懐かしく思い出されます。その懐かしさが買わしめた一冊でしょうか。

 「300点の厖大な図版資料を収録して、古典から現代にいたる名奇術師の演技と興行の跡をたどりながら詳しい解説をくわえた本書こそは、まさに天下の奇書である。奇術愛好家の渇望する名著の本邦初訳成る!」
 宣伝用パンフの惹句です。奇術・手品の部類にさほど興味はなくとも、本好きならこの宣伝文句を読んだら買ってしまうでしょう。四人の方の推薦文をご覧下さい。お読みいただけば内容の概略が分かると思います。

  「天下の奇書!」  東大名誉教授・上野景福
 大量の奇術のナマの資料――宣伝文、ポスター、プロ、新聞記事などを、そのまま写真版などで載せて、古代から現代に至る著名な奇術師の演技と興行の跡を辿ったまったく類のない奇術書である。読むうちに各奇術師の実演の場に居あわす感をあたえるから不思議である。要するに読んで奇術の知識を新たにし、見て奇術の楽しさを倍増する、まさに天下の奇書である。
  「貴重な文献」 東京アマチュア・マジシャンズクラブ・坂本種芳
 世界的に著名な魔術師たちが、新しい技巧や仕掛けを考案開発して、己れの個性を如何にして示そうとして来たかが本書を読むと良くわかる。彼等はもとより自身の技術の宣伝広告とPRにむけられたが、本書にふくまれている厖大な量のポスターやビラその他の資料は逞しく生きた魔術師たちの痕跡であり、その意味からしても真に貴重な文献である。奇術に関心をもち自ら奇術の世界に生きようとする人々には極めて必携の書である。
  「奇術の古典に接する」 東京奇術研究会会長・柳沢よしたね
 「世界の魔術」の出版は、奇術愛好家にとっての朗報と思われる。奇術書で世界最古の文献は、イギリスのレジナルド・スコット著「妖術の開示」(1584)が現存しているが、これは大英博物館でなければ見ることができない。本書「世界の魔術」は梅田晴夫氏の名訳による解説であり、素晴しい290点の図版を追いながら世界的マジックの古典に接することができることは楽しいかぎりであり、同好の士におすすめしたい。
  「訳者のことぱ」 梅田晴夫
 魔術という言葉は私たちの心をときめかせるなにかをもっている。子供は子供なりに、そして大人は大人なりに心がときめくのである。私は本書をはじめて手にしたとき、はたして魔術の歴史などというものが書きうるものかと疑った。そして頁をひるがえして、そこにある文章と夥しいポスターや資料を見くらべているうちに、これこそとらえどころのない魔術の歴史というものをみごとにつかまえる唯一の方法だと分かったのである。魔術に関心をもつすべての人々にはなつかしい書物だといえる。

 併せて「異国遍路旅藝人始末書」(宮岡謙二・著、修道社)、「大江戸奇術考」(泡坂妻夫・著、平凡社)を手元に読むと面白し。

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