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建設記録とレイアウト製作上のエピソードやテクニックなど Let's BGM(汽車)

Cブロック「山すそ」・Dブロック「中間駅」の製作
★★複々線の醍醐味と、山・中間駅の融合★★
  Cブロックは他のブロックに較べて半分の大きさですし、次のDブロックと一体感を持った構成ですので、併せて記述していくことにします。Cブロックのテーマは、市街地から郊外に出た線路に山が迫り、その裾を巻いて走る複々線が描く、きれいな平行線です。そしてDブロックは、新線に限ってみれば山すそにある中間駅がメインテーマで、どちらも実際のJR京都線のイメージでは、山崎付近となります。ただ、旧線がこのブロックの最奥の背景側で交錯するように走っており、それを隠さなければいけないため斜面の傾斜が急になってしまい、実物とは相当かけ離れ、当初想定していたよりもかなり高い?山となってしまいました。
 両ブロックに共通して、手前側に旧線と駅が広がっているのですが、話が混同しますと分かりづらくなりますので、ひとまず新線側から書き進めていきます。本線の線路配置で、内側線・外側線の乗り移り用の両渡り(ダブルクロス)がどこかに必要になりますが、本線上にそれが急に現れるのは、どう見ても不自然です。そこで中間駅の附近に設けて信号所に見立て、ホームの端に建物も配置しました。本当はDブロックに納めてしまいたかったのですが、スペースがなくCブロック側に設置しています。また、中間駅での折り返し運転を可能にするために、Dブロック側に片渡り線があります。
 先ほども述べましたが、Cブロックでは複々線がカーブを描き、ここでのすれ違いや追い抜きは、新線上の「見せ場」です。それを演出する仕掛けとして、カントを強めにとってあります。カントをつける方法は、ユニトラックの道床の外側に白ボール紙を挟んだだけです。実物の山崎付近はS字カーブもあり相当なカントがついていますが、「過ぎたるは及ばざるが如し」ですので、実際に車輌を置いてみて、実感的な角度になるよう調整しました。このブロックを地形的に見ると、奥側は急斜面が続いており、手前側は丘状に線路より高く起伏をとってあるため、新線建設時に緩い斜面を切り開いた感じになっています。ここで少し失敗したのは、あまりに山が線路に迫っているため、架線柱を立てるスペースがなくなったことです。苦肉の策としてコンクリートブロックの擁壁を作り、その途中から台をせり出させて台座にしています。実例でもこのような立て方があることを聞き、取り入れてみました。
 Dブロックの途中駅「長岡昨日」は、ホームが内外線間の2本で、本屋は線路上にある橋上駅舎タイプにしました。そして駅舎入口は、背後の山側に向いています。これもスペースの関係で駅前広場の表現ができないため、正面にある小さな丘を中心に回るようにタクシー・バス乗り場のあるロータリーを作り、駅前の商店・駐車場などの施設等は丘の向こうにあるという想定で逃げています。さらイメージを膨らませば、その先には大規模な住宅地開発が進められており、そこの住人たちの足として、新たに山裾を切り欠いて駅が設けられたといったところです。
 向かって左手の駅の先には、トンネルポータルが口を開けています。実物のJR京都線にはトンネルがありませんが、レイアウトを作るとなると、どうしても取り入れたくなるシーナリーで、無理やりここを山にしました。しかし、これによって次のブロックとのシーンの切り替えが不自然ではなくなります。最初の設計では、この上の山はもう少し小さくなるはずでしたが、次のブロックとの融合・旧線のシーナリーとの融合を考えると、どうしてもこの大きさにならざるをえませんでした。しかしそれでは、線路が隠れて樹木の緑ばかりのコーナーになってしまい、変化が乏しいので、山の中腹にペンションを建ててみました。そして私の嗜むスポーツでぜひ取り入れたかったテニスコートを併設し、山の中のちょっとしたリゾート施設か保養所の趣きにしてあります。設定では、元オーナーの別荘で、現在は直営ペンションとして営業していることになっています。鉄道以外の趣味をこういった形でシーンに盛り込むのも、一興です。


★★C・Dブロックの地形作りとシーナリー★★
 C・Dブロックの奥の山の斜面は、中に旧線が走っていますので、まず、それに支障のないような地形をつくる必要があります。ここでは通常の製作手順とは逆に、背景板を先に取りつけました。そして、旧線の線路に屋根をつける感じで、発泡スチロールの庇を背景板にとりつけます。ここからはBブロックの項で述べた方法とほぼ同じですが、さらに詳述します。スチロールの庇は、取り置いてあった家電などの梱包用のスチロールから切り出して使用しました。次に、新線のベース際から庇へ、そして庇から山の稜線になる背景板の位置へと、傾斜を作っていきます。同じく発泡スチロールを切り出した三角形のブロックと、Bブロックの築堤の法面製作で紹介しました段ボール紙で作った断面図のような三角の板とを組み合わせ、さらに帯状の厚紙を格子状に張り渡し、斜面のラインを形成していきました。だいたいの骨組みができたところに、今度は水で溶いたプラスターに漬けた10p四方ぐらいのキッチンペーパーをその上から貼っていき、地面を作ります。昔から発表されている技法ですが、お手本どおりキッチンペーパーは半分ぐらい重ねて貼って、強度を確保します。この間、旧線の線路を保護するために、新聞紙やビニールなどでカバーをしておくのはもちろんのことです。プラスターが乾いたところで強度をチェックし、弱いと感じた箇所にプラスターを盛り付けるように塗っておきました。
 以前、レイアウト製作を漠然と考えていた時代に、山に茂る樹木の表現をどうしようかと悩んでいた時期がありました。樹木を1本ずつ作って植えていくのでは、気の遠くなるような作業になりますし、費用もかかります。毎日の通勤の際に山々を眺めていて気づいたのは、遠くから見ていると木々の1本1本はあまり目立たず、茂っている葉などの重なり・かたまりが、山として見えているということでした。鉄道模型趣味誌に発表されたレイアウトの作例でも、これと同様の感覚で製作されたものを見ていましたが、ようやく実感として理解できたのです。そしてその茂りの表現に気軽に使える材料として、フォーリッジクラスターを用いることにしました。プラスターで真っ白なベースの地面は、本来なら土の色などを塗装するべきですが、茂みの隙間から地面が見えるのに抵抗感があり、緑色の塗料をべったりと塗ってしまいました。フォーリッジを貼り詰めてしまえば分からない部分ですけれども、見る角度によっては隙間が見えますので、何らかの塗装は必要です。それが乾いてから、木工用接着剤を塗り拡げてはフォーリッジをちぎりながら置いていく作業の繰り返しです。ひとつひとつが同じ大きさなのは不自然ですので、大小いろいろな大きさにちぎり、またフォーリッジがひとつの色ばかりではこれも不自然ですので、基本となる色の他に2〜3種のグリーン系を用意し、適度に混じらせて貼り付けています。また、私の場合はやりませんでしたが、色違いのフォーリッジをある部分に固めて、人口の植林を表現するというのも可能です。時には他の材料を加えてみるのもいいでしょう。いずれにせよ、実際の山をよく観察することが、実感的なシーナリー作りに重要だと思います。
 新線の内側には、旧線のトンネル入口がありますが、その上は背後の山からもともと続いていた斜面の一部という設定ですので、丘状になっています。ここは、見る側から近い位置になりますので、フォーリッジではなくライケンを使ってみました。発泡スチロールのベースに植毛マットを貼り、その上にフォーリッジも混ぜて植えて?あります。そして旧線との間の斜面は、段々畑と棚田にしました。GM製のシーナリーベースを適当に切り取って、地形に合わせて並べ替えてあります。畑やあぜ道の雑草はパウダーなどで表現しましたが、田のほうは、稲の表現について簡易で実感的な方法が見つからず、季節設定を春〜夏にしているのを幸いに、田植え前のしろかき状態でごまかしました。また、田んぼの縁に、野立て看板を設置したかったのですが、よくある線路と平行の設置では反対側が見えないので、線路と直角方向に置き、新線・旧線の両方から表裏どちらも見えるようにして、広告主に配慮?しました。斜面の裾には道路が走っていて、旧線と踏切で交差します。Dブロックの旧線の駅前を通る道なんですが、まっすぐな道路では実感に乏しいと思い、カーブさせてCブロックへもってきました。


★★山とトンネルとその脱線対策★★
  何度も言いますが、C・Dブロックでは旧線は舞台裏を走っています。その線路が表に出る部分は、西大爺駅を除けばわずかしかありません。つまり大部分がトンネルの中になるわけで、当然、脱線などの緊急時の対策が必要になります。まず、長岡昨日駅の奥(裏側)になるところは、勾配の直線がX状に走っていますので、背景板に四角い穴を何箇所かあけ、切り抜いた板が蓋になるようにして、蝶番をつけて開閉式にしました。この方法は、Aプロックの向日水駅下と同じです。Dブロックでは、ちょうどその部分がバルコニーへ出るためのガラス戸になっており、万一のときはそこへ出て、蓋を開けると線路に手が届きます。
 一方、旧線の西大爺駅に出てくるポータルは手前になりますので、線路はトンネル内でカーブになっています。ここに対する脱線対策としては、地形の一部を取りはずせるようにしました。まず、適当な大きさの発砲スチロールの板を用意し、丘の中央部にもってきます。そして取り外せる蓋の部分を切り抜きますが、その時に切り口が垂直になるように注意します。そして切り抜いた蓋とその周りの枠の下には、木や同じくスチロールのブロックで乗る台を作り、枠だけをベースに固定します(蓋は台に乗っているだけです)。蓋を乗せて周囲の斜面の傾斜や茂みを同時に製作。もちろん蓋とその枠との境目を茂みが跨いではいけませんが、フォーリッジをうまく盛って、なるべく境目が目立たないようにしました。そしてこの蓋を開ける際に便利なように、カギ型の金属製フックを、2ケ所に茂みに隠すように埋め込んであります。取り外す場合はそれを持って蓋を引き抜く感覚で開け、そこから手を入れると隠れている線路に届くわけです。
 反対側のもう一方の山は高さがありますので、まず先に蓋とその枠の乗る台を作ってから、先に蓋の上のシーナリーとストラクチャーを作りました。もうお分かりと思いますが、ペンションのある部分がそれです。ペンションの建物を持って上に引きあげると、その空いたところから新線・旧線ともに手が届きます。蓋となるベースの上にペンションとテニススコートや駐車場を作成しておいて、そのあとから周囲の地形や茂みをそれに合うように作っていきました。斜面や茂みの製作は前述した方法と同じですが、この山はすぐ次のEブロックに繋がっていますので、そちら側へのシーンのつながりを考える必要があります。繋がる部分は地形の断面のような形状になりますが、双方のブロックに稜線が同じものを作らないといけないので、2枚のベニヤ板を重ねて同時に稜線に沿って切っていきました。また、線路の通る部分も同時に開口しています。よってこの部分は三方を背景板で囲まれる形になりますので、当然背景板を先につけてからの作業です。
 ペンションのある山は、山崎のすぐ後ろにある天王山をもじって「転脳山」と名づけています。従って新線のトンネルが新転脳山トンネルです。そのトンネルポータルが長岡昨日駅を出てすぐにありますが、複線用のポータルで比較的新しいタイプは、グリーンマックス製しかなく、全く同じボータルが2つ並んでいるのも味気ないと思い、上下線で位置をずらしてあります。ただKATOの線路間隔では、ポータルの内周ぎりぎりになりますので、境目の処理には少してこずりました。また、ポータルより中の部分はポータルの形状と合わせた筒状の側壁を取り付けてあります。これは少し横から除いたときに中がまる見えにならないためです。舞台裏をあまり見せたくないのは、どの世界でも同じですね。


★★新線・旧線の中間駅の製作★★
 新線の「長岡昨日駅」は、2本の島式ホームがあるものの、その有効長が4輌分しかない小さな駅です。ホームはKATO製で、少しでも有効長を稼ごうとトンネル側は片側がカーブしているものを使用しましたが、どうも私鉄臭がして気に入ってはいません。なお、屋根はTOMIX製の断面がW字型のものに変えてあります。これは向日水駅との変化をつけるためと、橋上駅舎に中古の鉄道模型ショップで見つけて買ってきたTOMIXの製品を使ったため、階段部分の欠き取りを合わせるのが楽なためです。駅舎はジャンク品に近かったので、若干の加工と塗装を加えてあります。また、線路間隔が違っているのと、階段の高さが駅前広場のレベルと合わないので、適度に通路階段を延長したりして合わせました。
 一方、旧線の駅は「西大爺」といい、実在の京都線の駅「西大路」のもじりで名づけました。この駅は、昔からあった小さな駅に、ローカル線保存用に機関庫や給水塔をよそから持ってきて無理やり拡げて並べた、という想定になっています。乗降用ホーム3面と留置線1本、そして貨物用ホームに機関庫への引込線と、盛りだくさんに詰め込まれているのはそのためです。写真をよくご覧になられた方はお気づきのことと思いますが、駅本屋の向きが少し変わっています。本来はこのタイプの本屋はホームと平行に建っているものですが、ここでは直角方向に建っています。このストラクチャーはGM製キットの組立品で、レイアウト着工のかなり以前に、ストラクチャーキットの組立て練習として組んであったものなのですが、形態がとても好ましいアイテムでした。普通に置くと正面入口が奥の築堤に向いてしまいます。正面側・改札ホーム側ともに見えるようにしたかったために、不自然を承知でこの配置にしたのです。なお駅前は、道路から少し奥まっていて、ロータリーのような形状にしてみました。古くからある国鉄のローカル線の駅は、たいてい道路から引っ込んだところに駅舎があり、駅前がロータリーやちょっとした広場になっているところが多いので、そのムードを狙っています。タクシーの待機スペースやバス停も配してみましたが、いかがでしょうか?
 ホームは、短い島式のほうがTOMIX製で屋根と待合室はGM製、長い片面のほうはGM製のホームにストラクチャーキットの余りモノから自作した待合所上屋、貨物ホームとその上屋はKATO製を使用しています。その他のストラクチャーでは、詰所・倉庫と便所にGM製を使っただけで、機関庫・給水塔・石炭置き場はすべて自作しています。木造の機関庫は津川洋行製のキットを使いたかったのですが、当時どこにも在庫がなく、キットの余剰パーツとペーパーを組み合わせての自作。給水塔も同じです。さらに駅の両端には、すでに使われていはいない転轍手小屋も同様の方法で作って置きました。
 このローカル駅を作るにあたって最も悩んだ点は、駅の入口になる分岐ポイントからトンネルの入口までの間が、あまりにも近いということでした。実際の鉄道ではこんなに余裕のない線路配置はないだろうと思っていて、実感的ではないと気になりつつ、スペースの都合であきらめていました。しかし、撮り鉄に復帰して、餘部などの山陰本線界隈の駅を訪れたときに、その感覚はすべて吹っ飛んでしまいました。険しい地形の関係上からか、実際の駅がトンネルを出たすぐのところにあるものが多く、まさにレイアウトそのものだったのです。
 さてこれで、C・Dブロックについては終わりです。次回からはEブロックに移ります。

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