なんで又遍路なの   「空海の道」を知っていますか   変わった景色、変わらない景色   めくら蛇に怖じず
慈眼寺の穴禅定   車で行く遍路旅   横浪ロードを歩く   二度目の遍路で見えること

  
  慈眼寺の穴禅定

今回のお遍路のビッグイベントは慈眼寺の穴禅定でした。
慈眼寺は別格のお寺の3番札所です。
88ヶ所の鶴林寺の奥の方にある寺とでも言えばいいのでしょうか。

狭い壁や穴を、般若心経を唱えながら進むという話を聞いてこれは何が何でも行かなくてはと強く思っておりました。
事前にお寺に電話したとき、雨が強いと中止になると言うことは聞いていたので、雨が降ってくれなければいいがと思いつつ、念のため泊まりの「ふれあいの里 坂本」は初めから連泊で予定を入れました。

前日18番立江寺をスタートしたときはすでに雨。

途中で寄った星の岩屋も雨。
坂本の近くになると雨がかなり強くなりました。
それでも翌日の天気予報は晴れと出ていたので大丈夫だろうと期待をつなぎました。
その日はふれあいの里でとりあえず一泊。

翌日は予報通り晴れ。
宿の人に遍路道の地図を頂いて出発。
早ければ一時間でいけますということでしたが、まあ自分の足では一時間半くらいと見ておりました。
途中雲ゆきが怪しくなりとうとう雨になりました。

しかしなんと間がいいのでしょう。
丁度岩の庇が道の上に被さっていて、そこに荷を下ろししばらく雨宿りしました。
雨にも濡れず大変有難い庇でした。
こういう事ってまたまたお大師さんのさい配だなって思ってしまうんですよね。

そこからしばらく登るとお目当ての慈眼寺に到着。
結局二時間かかりました。
まあ、私のやることですからこんなものでしょう。

このころには雨もすっかり上がっておりました。
さっそく穴禅定の申込み。
順番待ちの人が数人おりました。

いま穴の中に入っている団体がいるのでその方達が出るのを待たなくてはなりませんとのこと。
そこで小一時間待たされました。
お寺には二本の金属棒が立っていて、この間をすり抜けられないと穴には入れられないという関所棒のようなものでした。
くぐれるかやってみると大丈夫、OKでした。
あれ、くぐれなかったらどうするんだろう、すごすご帰るんだろうかと思いましたが、あの棒の間隔を通れない体格の人は本当に無理なことは後でよーく分かりました。

「穴禅定のある本堂に行って下さい」というお寺の方の指示で受け取った上っ張りを着て本堂に向かいました。
穴禅定はかなり汚れると聞きました。
何しろ狭い穴を通るわけですから。

上に着くと案内のおばあさんの指示で身を清め順番に穴に入ります。
こんなおばあさんの案内で大丈夫なのかなと思いつつ進みます。
ロウソクを右手に持ち、おばあさんの指示通り体の向きを変えていきます。
「右肩を先にして少しかがんで」とか
「かがんで頭を先にして進む」とか
はては「腹這いになって」とかいうことになります。

事実、その通りにしないと体が前へ進みません。
どうやってこの狭い壁を抜けるのだろうかと思うこともしばしばでした。
頭が通らないのではないかと思うような場所もありました。

30分位してようやく奥の少し広い場所に出ました。
そこは弘法大師がまつられているところでした。
弘法大師が着ているものの着替えをしますということでお大師さんの衣替えが始まりました。
狭い場所でしかも明かりもロウソクの僅かな光だけ。
随分やりにくそうでした。
それでも衣替えが終わると納経です。

おばあさんは「先達は誰ですか」と聞くのですが、私は一人で来ているし他の方はご夫婦の二人ずれと家族で来ている3人ずれ。
てんでんばらばらで先達などというたいそうな人はいません。
「いませんが」というと、「誰かやってください」という。
周りの目が私のところに来る。

困ったなー。
大体先達って何するの。
お経を先にたって唱えるんだという。
まあ般若心経は何とかそらで言えるかも知れないけれど間違えたら困るしと言うと、頭だけ言えば後はみんなでやるから大丈夫と励まされ、んじゃと勇気を出してやっちゃいました。

「観自在菩薩・・・・・・」
後は皆さんが助けてくれました。
でもこんなに真剣に般若心経を唱えたのは初めてかも知れません。
自然に経文が口から出てくるようなそんな気がしました。

納経が終わるとおばあさんが、いまお大師さんに触れた手で皆さんの体の具合が悪いところをさすってあげますと仰る。
皆さんそれぞれにあちこちさすってもらいました。
私は普段具合の悪い左腰とかお腹を重点的にやってもらいましたが背中なんかもおまけでさすってもらいました。
そういうことをして頂けるんならもっとやってもらえば良かったと後から思いましたがそれこそ後の祭り。

それが終わると引っ返します。
同じように体をひねったり、しゃがんだり、這い蹲ったりして出口にようやくたどり着きました。
時計を見たら出てくるまで一時間以上かかっておりました。

穴から出たらなんだか体が軽くなった見たいです。
衣類はかなり汚れておりました。
そりゃそうです。
岩壁にこすられ、おまけに腹這いになったりしたのですから。

ともかく終わってほっとして、そして感動しました。
こんな経験は二度と出来ないかも知れません。

後で聞いたらあのおばあさんは80才を越えているそうです。
イヤー大したもんです。
若い人だってあの穴をくぐるのは大変なのに。
ああいうことをやっていて、お大師さんの御利益を頂いているからあのお年でやれるんでしょうね。

腰をさすって頂いたお陰で、今回はお遍路中 腰に痛みは一度も来ませんでした。



(2006.5)