なんで又遍路なの   「空海の道」を知っていますか   変わった景色、変わらない景色   めくら蛇に怖じず
 慈眼寺の穴禅定   車で行く遍路旅   横浪ロードを歩く   二度目の遍路で見えること

  
   二度目の遍路で見えること

前回は通し打ちになりましたが今回二度目は通しにこだわることもないので区切り打ちとしてスタートしました。

二巡目の第一回は一番から17番札所まで。
この間別格のお寺は大山寺(一番)と童学寺(二番)。
徳島から出発して徳島まで戻るコースです。

一年半ぶりの四国、気持ちの高ぶりはもちろんありました。
でもどっか懐かしいところへ帰ってきた感じがしました。
霊山寺での納経は手順を忘れていていささか戸惑いました。

一番を終えて二番、三番と先へ進んでいきました。
真新しい白衣や菅笠それにお杖を持った新米さんと分かる遍路にそこかしこで会いました。
自分もあんなだったなーと思いながらのお寺巡りでした。

前回の経験があるので、道はおおよそ見当がつくしお寺での手順も分かっています。
かなりゆとりがあります。
初回とは雲泥の差です。

そんな余裕で周りを見ると、初めてと分かるお遍路さんの多くは先へ先へと急いでいきます。
お寺に着く、納経を済ます、荷物を担いで次の寺へ。
なんだか脇目も振らず一目散に次のお寺を目指しているのです。

そんなに急がなくてもいいのに、と思うんです。
もう少しお寺でゆっくりしていけばお寺の景色が心の中に定着するのになーなんて思いました。

9番法輪寺でのことです。
お寺に着いたらお坊さんがしきりに声を掛けてくれました。
「少し話をしていきませんか」
私は先を急ぐわけでもなかったのでお坊さんの勧めに応じてベンチに腰を下ろしてお坊さんと世間話や遍路のことを話しました。
いろいろ面白い話が聞けたりしました。

そのうち「初めての遍路ですか」と聞かれ、2回目ですと答えると、「ちょっと数珠を見せてご覧」といわれたので数珠をお坊さんに手渡しました。
少し触って、「この数珠は固い。本当に二回目?」といわれてしまいした。
そして手で数珠を小さく丸めてしばらく手の中で暖めておりました。
「こうすると数珠玉をつなぐ糸のロウが柔らかくなって数珠全体が柔らかくなるんだよ」
そうして手渡された数珠を手で触ると確かに柔らかくなっていました。
「数珠をこすった時の音も違うでしょ」
確かに音が軽やかです。
さすがお坊さん。
すっかり感心してしまいました。

そうこうしている間もお坊さんはやって来たお遍路さんに「座っていきませんか」と声を掛けるのですが、誰もその呼びかけに応じません。
慌ただしく納経を済ませて次のお寺を目指して出発していきます。

私は小一時間もそんなことでお坊さんと話し込んでしまいました。
でも、あの時間は楽しかったですね。

歩き遍路は歩くのが仕事だし、今日中に目的地まで行かなければなりません。
先を急ぐ気持ちも分かります。
でも一寸だけ寄り道してもいいのではありませんか。
そこで思っても見ないような楽しい出会いがあるかも知れません。

私は道に迷うたびに、いろんな人との出会いやドラマを経験しました。
道に迷うことだってまんざら悪いことばかりではないのです。
そうなんです。
道に迷うもOK、そしてもう少し肩の力を抜いて歩いてみたらどうでしょうか。
前回私は歩き遍路の意義を見失い惰性で歩いていたときに、そうアドバイスを受けてから四国がそしてお遍路が次第に楽しくなりました。


(2004.10)