わこうど
帰った
みんな年寄りになっていた
おじいちゃん、おばあちゃん、と
呼んでいた人ではなく
年寄り、という生き物になっていた
油絵の具をのせたような
あれほど濃厚な
祖父の声、祖母の指が
薄っぺらく、なっていた
おじいちゃんの家へ行ってくる
と言ったら嘆かれた
帰る、のではなく、行く、のかと
動詞の恐ろしさを教えた母は
行ってあげなさい
と今では平気で言う
私はいわゆる
若い人、という生き物になっていた
彼らが、年寄り、になったのではなく
私が違う生き物になってしまったのか
あの少し前の生き物は
どんなものだったのか
思い出せない
この町は こうやって
人の数が減っていくのだろう
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