川尻池
泳いでいるのか
朦朧としたなかで
探し求める 足の裏に
触るものは 鉄鉱か
池の中でもがいている
ここは池だったといわれる
跡地に立ち尽くすわたしは
池の主に引っ張られ
河太郎(ガタロ・河童)に生き血を
尻の穴から抜き取られ
ふらふらと
弥生の水底にはまり込んでいる
水底の土のなかから
鉄分を探り当てようとしている
川しもが
この池で水を溜めながら
水田へと注がれていく
葦原と共に
稲穂が輝き 土中に鉄分を作る
田畑を手放した村人は
池も 水も 土も 河太郎も
埋めてしまった川尻池
埋め尽くされた田畑に移転してきた
製鉄の溶鉱炉が燃え滾っている
残る田畑は 弥生から繋いできた
からだで耕す土から
土に触れず
鉄の動力から
機械の上で腰掛けて
田植えをし 稲刈りをする
耕運機で土を上に下にとこねている
土の上と下を結びつける 幸は
土を遠ざけている
川尻池跡の主・河太郎は
わたしを引っ張り込み
朦朧とした土のなかに沈め
ありもしない鉄屑を拾い集める
河太郎(ガタロ)に
わたしを化かしている
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