MP5は当初、HK54のモデル名で呼ばれていたが、 旧西ドイツ国境警備隊でのトライアルで付けられたテスト名のMP5がそのまま正式な商品名となり、 1966年に製品化された。
MP5は一般的なサブマシンガンとは異なり、ボルトが閉鎖された状態から撃つため、 セミオートマチックでの高い命中精度を誇っている。 また、ローラーロッキングでボルトの後退が遅く緩やかな為、銃本体の振動が少なく、 フルオートマチックで連射時の銃口のコントロールが容易な利点を持っている。
最初に製品化されたモデルは、固定ストックのMP5とリトラクタブルストックのMP5A1で、1966年に登場した。 その後、1970年に改良型のMP5A2(固定ストック)とMP5A3(リトラクタブルストック)が登場し、 1970年代前半にはサイレンサー装備の特殊型のMP5SDが開発された。 1976年には、銃身を切り詰め、ストックを取り去って小型化されたMP5K、MP5KA1(簡易サイト)が登場した。 1977年には、MP5SDの改良型のMP5SD1(ストック無し)、MP5SD2(固定ストック)、MP5SD3(リトラクタブルストック)が登場した。 さらに1985年には、3発バーストメカを組み込んだ新型のMP5A4(固定ストック)とMP5A5(リトラクタブルストック)が登場した。MP5SD、MP5Kシリーズも同様に3発バーストメカを組み込んだMP5SD4(ストック無し)、 MP5SD5(固定ストック)、MP5SD6(リトラクタブルストック)、 MP5KA4、MP5KA5(簡易サイト)が製品化された(KA2、KA3は欠番)。
現在、MP5シリーズは120種類以上のバリエーションに細分化し、数ヶ国でライセンス生産されている。 また、その高性能と扱い易さを買われ、50ヶ国以上の軍および警察で採用されている。
口径 | 9mm×19 |
全長 | 533mm(ストックを縮めた状態) 692mm(ストックを伸ばした状態) |
銃身長 | 225mm |
重量 | 2935g |
マガジン容量 | 15発/30発 |
クリックすると拡大 | MP5A5左側面。30発容量のマガジンが装着されている。
因みに、米国で警察に装備品を納入している業者のカタログによると、 MP5A3に3発バーストトリガーグループを付けたモデルの警察署への納入価格は$1,800くらいだ。 |
クリックすると拡大 | MP5A5右側面。リトラクタブルストックを縮めた状態。
現在、MP5シリーズは数ヶ国でライセンス生産されているが、写真のモデルには製造所を示す刻印が無く、 生産国は不明である。セレクターの表示は、綺麗で鮮明なドイツ製と異なり、不鮮明でかすれ気味だ。 また、銃口付近が塗装されている、トリガーグループ表面の梨子地模様が綺麗に出ていない、表面仕上げが異なる等、 ドイツ製との相違点が見て取れる。 |
クリックすると拡大 | MP5A5左側面。リトラクタブルストックを伸ばした状態。 |
クリックすると拡大 | リトラクタブルストックのクローズアップ。固定ストックに交換可能。
本来なら、レシーバーとストックを結合しているピンを手で押し出すだけで、 簡単にストックの着脱が出来るはずなのだが、 何故かピンが異様にタイトで手で押し出すことなど出来ない。 過去に一度、工具を使ってなんとかピンを抜いてみたことがあるが、 反対にピンを挿入するのもかなり大変で、二度とやりたくないと感じた。 この辺りの工作精度の悪さからしても、ドイツ製のオリジナルではなさそうだ(見出しでH&Kと書かなかったのはこの為だ)。 |
クリックすると拡大 | フロントサイトのアップ。サイトの周りをリング状のガードが取り囲んでいる。 写真を見ればわかるが、フロントサイトベースとコッキングレバーのガイドとの間には隙間がある(理由は後述)。 |
クリックすると拡大 | リアサイトのアップ。 リアサイトは回転式で、25m、50m、75m、100mの4段階で調節可能。 中のねじはゼロイン調節用で、これを回すには特殊な工具が必要だ。 |
クリックすると拡大 | レシーバー左側面。3発バースト・トリガーグループが使われており、 セレクターはセーフ、セミ、3発バースト、フルの4ポジション。 口径表示は、「Cal.9mm×19」と英語表示になっている。 |
クリックすると拡大 | レシーバー右側面。左側面と同様にセレクターとモードを示す記号表示が付いており、
右利き、左利きのどちらでも同様に操作できる。
トリガーグループは現在8種類が存在し、自在に取り替えることが可能である。 |
クリックすると拡大 | 前方の左側。 米レーザー・プロダクツ社製のタクティカルライト(SureFire model 628)が取り付けられている。 |
クリックすると拡大 | 前方の右側。 フォアアームに付いているバーの部分が、タクティカルライトのスイッチになっている。 このタクティカルライトはスイッチが1個のみの物だ。 |
クリックすると拡大 | フォアアームを取り外した状態。
1本のピンを手で押し出すだけで、フォアアームの着脱が可能。
MP5はディレード・ブローバック方式なので、銃身の上の管はガスシリンダーではなく、 コッキングレバーのガイドだ。MP5、MP5A1では、銃身はフロントサイトベースと、 レシーバーの前の部分の2箇所で固定されていたが、MP5A2、MP5A3以降のモデルでは、 レシーバーの前の部分の1箇所だけで固定されており、フロントサイトベースと コッキングレバーのガイドは密着していない。 |
クリックすると拡大 | MP5A5に初めから付属するワイドフォアアームを取り付けた状態。
旧タイプのチェッカリングの入った細いフォアアームに交換することも可能。
フォアアーム、トリガーグループ、ストックを固定するためのピンは、 差し込む方向が決まっておらず、左右どちらから挿入しても構わない。 |
トリガーグループ | タイプ (新/旧) | セレクター 表示 | セミ | 2発 バースト | 3発 バースト | フル |
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SEF Trigger Group | 旧(*1) | S,E,F(独語) | ○ | × | × | ○ |
0-1-25 Trigger Group | 旧 | 0,1,25 | ○ | × | × | ○ |
0-1-2 Trigger Group | 新(*2) | 記号(*3) | ○ | ○ | × | × |
0-1-3 Trigger Group | 新 | 記号 | ○ | × | ○ | × |
2-rd Burst Trigger Group | 新 | 記号 | ○ | ○ | × | ○ |
3-rd Burst Trigger Group | 新 | 記号 | ○ | × | ○ | ○ |
Navy Trigger Group | 新 | 記号 | ○ | × | × | ○ |
Single Fire Trigger Group | 新 | 記号 | ○ | × | × | × |
(*1) グリップにフィンガーレストとトリガーグループ側面にリブのある旧タイプ。セレクターのレバーは左側面のみ。 (*2) 直線的なグリップとトリガーグループ側面が平坦な新タイプ。セレクターのレバーは両側面に付いている。 (*3) 弾の絵で視覚的に示したセレクター表示。言語に関係なく直感的に理解できる。 |