女優
かんとくの目はいつもギラギラしていて
女優のアラ捜しをしている
彼は人の欠点や失敗を見つけ
指摘する
鬼の首をとったかのように
快感そうに怒る
内包するすべてのエナジーを動員して
これでもかこれでもか式で
彼女の存在を否定する
彼女は塩をふりかけられたナメクジのように
縮んで身動きできなくなる
黒髪はいつしか白髪が増え
肌のツヤもなくなり
前屈になって歩く
一歩一歩すり足で壁伝いに
時には四つん這いになって
前進する
せりふも忘れ
能面のように演じる
ある時
パカッと面が落ちて
ただれた顔があらわれ
すべてが終わった
かんとくは
短くて長かった二人のコンビを
冷ややかに語った
彼の話す偽善と
彼女の話す真実は
シンクロしない画像
半世紀以上
ヒトが彼の作品を肯定するのを信じている
庭に冬のあさがおが咲いている
次へ↓ ・ 前へ↑