北風と太陽
北風は旅人に微笑みかけた
歩き続けるその姿が勇ましく
尊敬に値したから
目的地を持って前を目指す姿が
憧れだったから
北風は眠りの神
自分の跡には夜の幕が降りる事を知っている
微笑みかけたら最後
旅人は眠りについてしまうだろう
凍えるような野に伏せて
目的を達成する間もなく横たわるだろう
身を凍えさせた旅人は
空の果ての太陽を仰いだ
目覚めの神は
旅人の傷を労ることなく
ゆっくりと目覚めを勧めた
何故、旅人の足を止めるのか
何故、旅人を癒そうとしないのか
北風と太陽は言い争う
己の本心を建前に隠し
旅人の行方を互いに阻む
それでも、ふたつとも
旅人から目をそらすことはない
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